世界遺産NEWS 21/01/10:鹿苑寺金閣、中尊寺金色堂、薬師寺東塔、清水寺がリニューアル
昨年12月から日本各地の世界遺産で修復・改修の完了が報告されています。
一例が金閣です。
コロナ禍で観光客が激減したことを受け、昨年9月に屋根の葺き替えを急遽前倒ししたもので、12月29日に18年ぶりに一新されました。
■金色の輝きさらに 金閣寺の屋根工事完了、10万枚取り替えた美(京都新聞)
今回は鹿苑寺の金閣、中尊寺の金色堂、薬師寺の東塔、清水寺の本堂のリニューアルのニュースをお伝えします。
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金閣は世界遺産「古都京都の文化財[京都市、宇治市、大津市]」の構成資産である鹿苑寺の境内にたたずむ舎利殿です。
1950年に焼失して1955年に再建されているため建物自体が世界遺産の資産を構成しているわけではありませんが、境内の美しい景観に大きく貢献しています。
京都を訪れる外国人観光客に人気が高く、京都観光の目玉となっていましたが、このコロナ禍で観光客は激減してしまいました。
そこで昨年、2002年以来の葺き替えが急遽実施されることになりました。
金閣は3層からなる楼閣建築です。
屋根は上から見ると正方形で、中心から4つの角に隅棟が走る宝形造(ほうぎょうづくり)です。
屋根に葺かれているのはサワラという植物で作られた薄い板(杮板)で、柿葺き(こけらぶき)となっています。
今回の葺き替えでは頂部と2~3層目にかかる両面の屋根の葺き替えが行われ、約10万枚の杮板が新たに葺かれました。
9月からはじまった葺き替えは4か月を要し、12月に竣工して29日に報道陣に公開されました。
上の動画を見るとずいぶん印象が変わって見えますね。
美しいたたずまいです。
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黄金といえば世界遺産「平泉‐仏国土[浄土]を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」の中尊寺金色堂が思い浮かびます。
上は2012年の映像ですが、金色堂はこのようにガラスケースの中に隔離・保存されています。
そして金色堂自体は覆堂の中に安置されています。
金色堂では6月から行われていた保存・修復工事が終了し、12月15日に竣工式が行われました。
修復作業では外壁の亀裂や漆・金箔の剥落などが修復され、往時の輝きを取り戻したということです。
1124年に建立された中尊寺は2024年に建立900周年を迎えます。
大掛かりな作業は行わないようですが、今後も節目に向けてまた戦略的に保存・修復作業を行っていくということです。
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しばしば日本でもっとも美しい層塔のひとつに数えられる薬師寺東塔(世界遺産「古都奈良の文化財」構成資産)。
高さ約34mの三重塔ですが、各層に裳階(もこし)があるため外見は六重塔に見えます。
裳階は内部構造に影響を与えない庇状の構造物で、各階を分けて内部構造とつながっている屋根とは異なるものとなっています。
屋根と裳階が刻むリズムと、逓減(最下層と最上層の幅の差)の大きな「ハ」字形の造形が独特の雰囲気を醸し出しています。
東塔は2009年に2020年までの予定で解体修理がはじまりました。
基礎にはコンクリートが使用されていますが、基本的に建設された奈良時代当時の素材やデザインを踏襲して工事が進められました。
上の動画のように心柱の移動も含めていったんすべて解体されています。
そしてこの解体修理は昨年12月に完了しました。
薬師寺では工事用の柵なども撤去され、久しぶりに東塔がその美しい姿を現しました。
落慶(建設・修復工事が完了すること)の法要は延期されていますが、それに先だって3月1日に特別開扉がはじまる予定です。
2022年1月16日までの期間限定で内部の心柱を見ることができるそうです。
話題の「鬼滅の刃」 で「柱」が重要な役割を果たしていますが、心柱は日本の聖柱信仰・御柱崇拝の表れともいわれます。
ぜひ見てみたいですね。
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世界遺産「古都京都の文化財[京都市、宇治市、大津市]」の構成資産のひとつ、清水寺では2008年から平成の大改修が進められています。
これまで三重塔や阿弥陀堂、奥の院、釈迦堂などの工事が終了し、2017年から清水寺本堂の改修が進められていました。
具体的には、檜の樹皮を葺いた檜皮葺(ひわだぶき)の屋根の葺き替えや、舞台の檜板の張り替え、舞台の下の束柱の損傷部分の根継ぎ(根元の腐食部分を切除して同じサイズ・形の部材をはめ込む作業)などが行われました。
12月までにこれらの作業は竣工を迎え、12月上旬に足場のない清水寺本堂の姿が眺められるようになりました。
全体の落慶法要は今年の秋に実施される予定です。
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修復直後の木造建築はピカピカで、とても凜々しい姿を楽しむことができます。
そこから経年変化していく様子を眺めるのはとても贅沢な楽しみ方だと思います。
[関連サイト]
世界遺産NEWS 17/01/13:東大寺東塔の調査と薬師寺東塔の修理