世界遺産NEWS 16/12/01:山・鉾・屋台行事、無形文化遺産リスト記載が決定
現在エチオピアのアディスアベバにおいて、11月28日~12月2日の日程で第11回無形文化遺産委員会(政府間委員会)が開催されています。
今年もここで新たな無形文化遺産が誕生するわけですが、11月30日、日本が推薦していた「山・鉾・屋台行事(やま・ほこ・やたいぎょうじ)」のリスト登録が決まりました。
ただ、日本の無形文化遺産はこれまで22件が登録されていましたが、1件減って21件になっています。
どうしてでしょう?
今回はこのニュースについてお伝えします。
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「山・鉾・屋台行事」の紹介動画
無形文化遺産委員会は毎年11~12月に開催されており、推薦物件の登録可否が審議されています。
今年は代表リスト37件、緊急保護リスト6件、ベストプラクティス7件、計50件のノミネートがあり、これを書いている時点で代表リスト16件、緊急保護リスト4件の登録が決まっています(いずれも拡大を含む)。
そして日本からは「山・鉾・屋台行事」が推薦されていましたが、無事代表リストへの記載が決定しました。
関係者のみなさま、おめでとうございます!
さて、解説です。
まずリストについてですが、無形文化遺産には「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表 "The Representative List"」と「緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表 ”The Urgent Safeguarding List”」という2種類のリストがあって、前者を代表リスト、後者を緊急保護リストと呼んでいます(報道機関によって多少日本語訳は異なります)。
世界遺産の場合は「世界遺産リスト」の中で緊急に保護が必要な物件が「危機遺産リスト」に登載されるのですが、無形文化遺産はこれと異なり、どちらか一方のリストにのみ載せる形をとっています。
ベスト・プラクティスは条約の精神に則った無形文化遺産保護の最良の実例で、無形文化遺産保護条約に記載はありませんが、UNECO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)の無形文化遺産公式サイトでは代表リスト・緊急保護リストとともにそのリストを公表しています。
ちなみに、日本の無形文化遺産はすべて代表リストへの記載となっています。
今回日本が推薦していた「山・鉾・屋台行事」ですが、すでに代表リストに記載されている「京都祇園祭の山鉾行事」と「日立風流物」を拡大しようという物件です。
山・鉾・屋台の巡航を行うお祭りは日本中にありますから、「京都祇園祭の山鉾行事」と「日立風流物」に新たに31の祭礼を合わせて「山・鉾・屋台行事」として推薦しなおしたわけです。
今回これが認められたため、日本の無形文化遺産は2減1増で22件から21件に減っています。
その概要です。
文化庁の報道資料から抜粋しましょう。
■内容
地域社会の安泰や災厄防除を願い、地域の人々が一体となり執り行う「山・鉾・屋台」の巡行を中心とした祭礼行事
■要旨
- 「山・鉾・屋台行事」は、地域社会の安泰や災厄防除を願い、地域の人々が一体となり執り行う、各地域の文化の粋をこらした華やかな飾り付けを特徴とする「山・鉾・屋台」の巡行を中心とした祭礼行事である
- 祭に迎える神霊の依り代であり、迎えた神をにぎやかし慰撫する造形物である「山・鉾・屋台」は、木工・金工・漆・染織といった伝統的な工芸技術により何世紀にもわたり維持され、地域の自然環境を損なわない材料の利用等の工夫や努力によって持続可能な方法で幾世にもわたり継承されてきた
- 「山・鉾・屋台」の巡行のほか、祭礼に当たり披露される芸能や口承に向けて、地域の人々は年間を通じて準備や練習に取り組んでおり、「山・鉾・屋台行事」は、各地域において世代を超えた多くの人々の間の対話と交流を促進し、コミュニティを結びつける重要な役割を果たしている
- 「山・鉾・屋台行事」のユネスコ無形文化遺産代表一覧表への記載は、コミュニティが参画した持続可能な方法での無形文化遺産の保護・継承の事例として、国際社会における無形文化遺産の保護の取組に大きく貢献するものである
■構成資産
- 八戸三社大祭の山車行事(青森県八戸市)
- 角館祭りのやま行事(秋田県仙北市)
- 土崎神明社祭の曳山行事(秋田県秋田市)
- 花輪祭の屋台行事(秋田県鹿角市)
- 新庄まつりの山車行事(山形県新庄市)
- 日立風流物(茨城県日立市)
- 烏山の山あげ行事(栃木県那須烏山市)
- 鹿沼今宮神社祭の屋台行事(栃木県鹿沼市)
- 秩父祭の屋台行事と神楽(埼玉県秩父市)
- 川越氷川祭の山車行事(埼玉県川越市)
- 佐原の山車行事(千葉県香取市)
- 高岡御車山祭の御車山行事(富山県高岡市)
- 魚津のタテモン行事(富山県魚津市)
- 城端神明宮祭の曳山行事(富山県南砺市)
- 青柏祭の曳山行事(石川県七尾市)
- 高山祭の屋台行事(岐阜県高山市)
- 古川祭の起し太鼓・屋台行事(岐阜県飛騨市)
- 大垣祭のやま行事(岐阜県大垣市)
- 尾張津島天王祭の車楽舟行事(愛知県津島市・愛西市)
- 知立の山車文楽とからくり(愛知県知立市)
- 犬山祭の車山行事(愛知県犬山市)
- 亀崎潮干祭の山車行事(愛知県半田市)
- 須成祭の車楽舟行事と神葭流し(愛知県蟹江町)
- 鳥出神社の鯨船行事(三重県四日市市)
- 上野天神祭のダンジリ行事(三重県伊賀市)
- 桑名石取祭の祭車行事(三重県桑名市)
- 長浜曳山祭の曳山行事(滋賀県長浜市)
- 京都祇園祭の山鉾行事(京都府京都市)
- 博多祇園山笠行事(福岡県福岡市)
- 戸畑祇園大山笠行事(福岡県北九州市)
- 唐津くんちの曳山行事(佐賀県唐津市)
- 八代妙見祭の神幸行事(熊本県八代市)
- 日田祇園の曳山行事(大分県日田市)
33の祭礼行事は18府県にまたがっていますから、みなさんの地元のお祭りも含まれているかもしれませんね。
さて、今年の無形文化遺産委員会ですが、これ以外にも私の大好きなキューバのダンス・ルンバやベルギー・ビールの文化、世界的に有名なバレンシアの火祭りなども登録されています。
すべて出そろったところで記事にしてアップしますのでお楽しみに!
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