世界遺産NEWS 19/01/25:奄美・沖縄2020年、縄文遺跡群2021年の登録を目指し推薦へ
政府は1月22日、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(鹿児島・沖縄)」を2020年の世界遺産委員会に推薦することを閣議了解しました。
また、文化庁の文化審議会は23日、2019年度の世界文化遺産推薦候補の選定について「北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道・青森・秋田・岩手)」のみを審議対象とする方針を固めました。
今回はこのニュースをお伝えします。
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日本における世界遺産の推薦プロセスは以下のようになっています。
○世界遺産の推薦スケジュール
7月:文化庁の文化審議会の世界文化遺産部会が立候補地の中から文化遺産候補地を決定
9月:世界遺産条約関係省庁連絡会議が推薦物件を決定
9月末まで:必要に応じUNESCO世界遺産センターに暫定推薦書を提出
翌年1月:内閣が推薦物件を閣議決定
翌年2月1日まで:UNESCO世界遺産センターに登録推薦書を提出
翌年夏~:諮問機関が現地調査
翌々年春:諮問機関が評価報告書・勧告を発表
翌々年夏:世界遺産委員会が登録の可否を決定
今年2019年夏に開催される第43回世界遺産委員会にはすでに「百舌鳥・古市古墳群(大阪)」の登録推薦書が提出されています。
来年2020年の第44回世界遺産委員会で登録を目指す物件については登録推薦書の提出期限が迫っており、2月1日までに提出しなければなりません。
しかしながら昨年11月に政府は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の推薦を発表しており、1月22日の閣議了解によって正式に承認され、2月1日までに登録推薦書を提出することになりました。
推薦物件の概要を報道資料から抜粋しましょう。
<「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」概要>
■資産名
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島
■所在地
鹿児島県、沖縄県。
日本列島の南端部に、約1,200kmにわたって弧状に点在する琉球列島の一部であり、鹿児島県の奄美大島と徳之島、沖縄県の沖縄島北部と西表島の4つの地域から構成される。
■資産の面積と関係する市町村
奄美大島:資産11,640ha、BZ14,505ha(奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町、龍郷町)
徳之島:資産2,515ha、BZ2,812ha(徳之島町、天城町、伊仙町)
沖縄島北部:資産7,721ha、BZ3,398ha(国頭村、大宜味村、東村)
西表島:資産20,822ha、BZ3,594ha(竹富町)
※BZはバッファー・ゾーン(緩衝地帯)
■世界遺産としての顕著な普遍的価値
評価基準:(x) 生物多様性
島の成り立ちを反映した独自の生物進化を背景とした、国際的にも希少な固有種に代表される生物多様性保全上重要な地域である。
推薦地は、イリオモテヤマネコ(CR)、アマミノクロウサギ(EN)、ヤンバルクイナ(EN)など、IUCN のレッドリストの絶滅危惧種95 種(そのうち75 種は固有種)を含む陸生動植物の生息・生育地である。また、その地史を反映し遺存固有種と新固有種の多様な事例がみられ、世界的にみても生物多様性の生息域内保全にとって極めて重要な自然の生息・生育地を包含した地域となっている。
※CR=絶滅寸前種、EN=絶滅危惧種
日本はこの物件を2017年に推薦していますが、世界自然遺産の調査・評価を行っているIUCN(国際自然保護連合)から「登録延期」という厳しい勧告を受けて2018年6月に取り下げています。
前回は10ある登録基準の(ix)生態系と(x)生物多様性を満たすものとして推薦していましたが、今回は(ix)生態系については断念し、(x)生物多様性への一本化が図られています。
また、指摘された飛び地の問題について、沖縄島北部訓練場返還地をやんばる国立公園に編入して構成資産に吸収するなど資産を拡張して対応しています。
ノネコをはじめとする外来種対策や観光客対策についてもその取り組みを強調する予定です。
今後ですが、2月1日までに登録推薦書をUNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)の世界遺産センターに提出し、2020年夏の第44回世界遺産委員会で登録の可否が決まる予定です。
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文化庁の文化審議会は1月23日に世界文化遺産部会を開催し、2019年に選定する世界文化遺産推薦候補地について「北海道・北東北の縄文遺跡群」のみを審議対象とする方針を固めました。
この物件は2018年7月の同部会で2020年の世界遺産委員会に推薦する文化遺産候補地に決定していましたが、同年の世界遺産委員会から各国の推薦上限が年1件に絞られるため、自然遺産候補地の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」とバッティングしていました。
その結果、政府が同年11月に奄美・沖縄を優先する決定を下し、推薦が見送られることになりました。
世界文化遺産候補地は毎年7月に開催されている世界文化遺産部会で選出されていましたが、今年は「北海道・北東北の縄文遺跡群」のみを対象として進捗状況等の確認を行い、推薦の可否を決定するということです。
昨年1月に立候補の表明があった「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群(新潟)」については縄文遺跡群に次ぐ有力な候補になりうるものとして、来年以降の審議に回すことになりそうです。
縄文遺跡群は一度推薦が決まった物件ですし、自然遺産の有力候補地は奄美・沖縄以外になく、諮問機関による評価・勧告が出るのも2020年4~5月なので再々推薦の場合の影響もなさそうで、来年2月の推薦は堅いと見られます。
縄文遺跡群は6年連続で立候補して推薦が見送られていますが、大きな一歩と言えそうです。
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※いずれもさらに関連過去記事へのリンクあり
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