世界遺産NEWS 19/10/10:奄美大島でマングースの根絶確認へ
2020年夏の世界遺産登録を目指している「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」。
構成資産のひとつである奄美大島では外来種として問題になっていたマングースについて根絶の可能性を示唆し、目標である根絶宣言に向けて確認作業に入る方針を示しました。
■マングース根絶確認へ─奄美大島(南海日日新聞)
一方、ノネコについても捕獲作戦が進んでいますが、9月下旬、日本の固有種で絶滅危惧種でもあるアマミトゲネズミがノネコに捕食されている様子が確認されています。
■猫が固有のトゲネズミ捕食 奄美大島(南海日日新聞)
今回はこれらのニュースをお伝えします。
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1979年、奄美大島にフイリマングース30匹が放たれました。
フイリマングースは東南アジアや南アジア、中央アジアなどに生息するマングースの一種で、体長は25~40cm程度、体重は0.5~1kg程度。
現地ではコブラの天敵として扱われていることから、奄美大島でもハブの被害を減らすことが期待されました。
しかし、マングースは2000年に1万匹まで増えたものの、被害が減ることはほとんどありませんでした。
マングースが昼行性でハブが夜行性であったこと、他により簡単に捕獲できる動物がいたこと、ハブはコブラよりも素早いためマングースが避けていたことなどが理由に挙げられています。
その後の調査の結果、マングースはハブをほとんど補食しておらず、アマミノクロウサギやアマミトゲネズミ、アカヒゲ、キノボリトカゲ、ワタセジネズミ、オキナワアオガエル、イボイモリといった多彩な固有種や絶滅危惧種を捕食している事実が明らかになりました。
生態系への影響を懸念して、アメリカやニュージーランドなどではマングースに対して輸入禁止措置を実施したほどです。
2000年前後からマングースの捕獲がはじまり、2005年に外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)が施行されるとフイリマングース、ジャワマングース、シママングースといったマングースが特定外来生物に指定され、環境省はマングース・バスターズを結成して本格的な駆除を開始しました。
2005年に2,600匹に達した捕獲数は次第に減少し、2014年度に100匹を切り、2017年度には10匹、2018年度は4月に捕穫された1匹と大きな成果を上げました。
現在、13匹の探索犬と3万か所の罠で対応していますが、2019年度はこれまで1匹も捕穫されておらず、1年半にわたって捕獲数0を記録しています。
生息数は50匹以下と見られますが、当初30匹から1万匹に増えたように再増殖の可能性があるため捕獲作戦はこれまで同様、継続されています。
また、沖縄島などからの侵入を防ぐため、港湾や空港での検疫体制も強化する予定です。
環境省は2022年の根絶を目標に掲げており、根絶間近との認識を示していますが、今後は根絶達成率を算出し、データを掲げて根絶宣言につなげる方針です。
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9月26日、鹿児島県自然保護推進員のパトロール員が奄美大島の山腹でアマミトゲネズミを捕食する母ネコと子ネコ3匹を発見しました。
アマミトゲネズミは日本の固有種でIUCN(国際自然保護連合)レッドリストの絶滅危惧種で天然記念物でもあります。
上の動画にあるように体長は尾を除いて9~16cm程度、尾の長さ6~13cm、黄~黒褐色をしたネズミです。
一方、ノネコは野生化したネコのことで、飼いネコであるイエネコや人に依存して生活しているノラネコと区別されています。
現在、奄美大島にはノネコ600~1,200匹が生息していると考えられていますが、さまざまな動物を襲うネコ対策としてイエネコの登録やマイクロチップの埋め込み、ノラネコの不妊・去勢手術、ノネコの捕獲などを進めています。
特にノネコについては2018年に環境省と島内の5市町村が10年間にわたるノネコ管理計画をスタートさせており、年間300~360匹を目標にノネコを捕獲し、引き取り手が見つからなければ1週間収容したのち安楽死させるとしています。
今回改めてノネコによる被害が確認されたわけですが、多数のネコの殺処分に対しては反対する声も少なくありません。
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その「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」ですが、10月5~12日の日程でIUCNの担当官が現地調査に訪れており、4島すべてを訪問する予定です。
世界遺産に推薦された物件に対し、文化遺産はICOMOS(国際記念物遺跡会議)、自然遺産はIUCNが専門調査を行うもので、その一環となります。
2017年にも別の担当官が調査に訪れていますが、このときの評価は低く登録延期勧告を出されており、2018年6月に日本政府は推薦の取り下げを決定しています(詳細はリンクを参照)。
今回はそのリベンジとなります。
外来種の問題について、前回IUCNはノネコ管理計画やIAS(侵略的外来種)に対する取り組みを評価したものの、外来種対策をより広範に行うよう勧告していました。
この辺りの進展具合も調査されるものと思われます。
1年以上にわたって行われてきた成果の見せ所です。
高い評価を受けるといいですね。
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