世界遺産NEWS 17/05/06:宗像・沖ノ島に条件付き登録勧告
5日夜、文化庁は世界遺産リストに推薦している「『神宿る島』宗像(むなかた)・沖ノ島(おきのしま)と関連遺産群」に対し、文化遺産の調査・評価を行っているICOMOS(イコモス=国際記念物遺跡会議)から登録の勧告を受けたことを発表しました。
ただし、構成資産8件中4件を除外するという条件付きだということです。
今回はこのニュースをお伝えします。
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昨年はじめ、UNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)世界遺産センターに登録推薦書を送っていた「宗像・沖ノ島と関連遺産群」ですが、構成資産は以下となっています。
■資産概要
名称:「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群
登録基準:(ii)(iii)(vi)
所在地:福岡県宗像市ならびに福津市
構成資産:8件
- 沖ノ島(宗像大社沖津宮)
- 沖津宮(おきつぐう)遙拝所
- 宗像大社中津宮(なかつぐう)
- 宗像大社辺津宮(へつぐう)
- 新原(しんばる)・奴山(ぬやま)古墳群
- 小屋島(こやじま)
- 御門柱(みかどばしら)
- 天狗岩(てんぐいわ)
※内容の詳細については下の「関連記事」のリンクを参照してください
文化庁によると、この「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」に対してICOMOSが「登録」勧告を行ったということです。
ICOMOSは世界遺産委員会の諮問機関で、文化遺産の調査・評価や遺産のモニタリング、援助要請の審査などを担う文化財のプロ集団です。
世界遺産リストに推薦された文化遺産候補地に対して現地調査を含む専門調査を行っているのですが、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」に関しても昨年9月に現地調査を行っており、今年7月に開催される世界遺産委員会で重要な資料となる評価報告書の中で勧告が言い渡されています。
勧告には以下のような4段階があります。
■勧告の種類
- 登録:世界遺産にふさわしい
- 情報照会:追加情報を求める勧告で、3年以内に提出すれば再審査が可能
- 登録延期:登録推薦書の本質的改訂が必要で、推薦書の提出から登録プロセスをやり直し
- 不登録:世界遺産にふさわしくない。決定した場合、再推薦も不可
夏の世界遺産委員会で登録の可否が決まるのですが、委員会でも4段階のいずれかの決議が言い渡されます。
「登録」の決定で世界遺産リストへの登載となるわけですが、過去の世界遺産委員会を振り返るに、登録勧告を受けて登録に失敗することはほとんどありません。
近年でいえばイスラエルの「ダンの三連アーチ門」が登録勧告から失敗していますが、これは領有権問題が絡んでのもの。
昨年の「ピマチオウィン・アキ」は文化遺産としても自然遺産としても登録勧告を受けていましたが、先住民の一部族が直前になって世界遺産支援からの撤退を表明したため情報照会決議となりました(詳細はリンクの関連記事を参照)。
こうした特殊な事情がない限り登録が固いということで、登録勧告は事実上の内定と考えることができるでしょう。
関係者の方々、おめでとうございます。
といっても、今回は条件が付いたようで、8件の構成資産のうち、沖ノ島と周辺の岩礁以外の4件を除外するよう勧告しているようです。
まとめるとこうなります。
■登録勧告
- 沖ノ島
- 小屋島
- 御門柱
- 天狗岩
■除外勧告
- 沖津宮遙拝所
- 宗像大社中津宮
- 宗像大社辺津宮
- 新原・奴山古墳群
これ、容認しがたいと感じる関係者もいるのではないでしょうか?
実は、こうしたことは珍しいことではなかったりします。
「平泉」の場合、2007年に登録推薦書が提出されましたが、価値の証明が不十分であるとして登録延期勧告を受け、世界遺産委員会でも同様の決定がなされました。
当初は文化的景観での登録を目指していましたが、これを断念し、仏国土(浄土)と関連の建築・庭園・遺跡に絞って推薦書を作り直した結果、当初の構成資産10件のうち5件を除外しての登録となりました。
外された5件は現在拡大での登録を目指しており、世界遺産暫定リストに掲載されています。
「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」は登録勧告を受けましたが、三保松原(みほのまつばら)の除外が言及されていました。
このときは日本のアピールが奏功し、2013年に三保松原を含んでの登録に成功しています。
今回の勧告は、観光客が訪れる九州本島と大島の物件をすべて外せというものです。
沖ノ島は立入禁止の神域で、一般の方は5月27日の大祭にのみ、200人ほどが入島を認められます。
ですから世界遺産に登録されても、女性にとっては訪れることができない幻の世界遺産ということになります。
もっとも、ギリシアの世界遺産「アトス山」のように、女人禁制が厳しく守られている聖域は他にも例がないわけでもありません。
今後ですが、7月2~12日にかけてポーランドのクラクフで開催される第41回世界遺産委員会で登録の可否が決定します。
日本は無難に沖ノ島と周辺の岩礁だけで登録を進めるか、あくまで8件すべての登録を目指してロビー活動を行うか、選択することになりそうです。
※2017/07/11追記
第41回世界遺産委員会で8件全件を含めた形で世界遺産リストへの登録が決まりました。
詳細はAll Aboutの記事でご確認ください。
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