世界遺産NEWS 20/05/01:フォンニャ=ケバン国立公園で新たに12洞窟を発見
数百を誇る洞窟群から「洞窟王国」の異名を持つベトナムの世界遺産「フォンニャ=ケバン国立公園」。
4月上旬、イギリス洞窟研究協会は同地で新たに12の洞窟を発見したことを発表しました。
これで一帯の洞窟の総数は417になったということです。
■Vietnam’s Kingdom of Caves produces 12 hitherto unexplored ones(VnExpress International)
今回はこのニュースをお伝えします。
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ベトナムは全長約1,700kmを誇る細長い国ですが、北のハノイと南のホーチミンを中心に数多くの観光地が知られています。
近年、日本からダナンへ直行便が就航して以来、ベトナム中部も人気を集めるようになりました。
ダナン周辺には4件の世界遺産があり、近郊の「古都ホイアン」「ミーソン聖域」、中部の中心都市であるフエの「フエの建造物群」、そして少し北上すると「フォンニャ=ケバン国立公園」が横たわっています。
「フォンニャ=ケバン国立公園」の詳細はリンクの記事を参照していただきたいのですが、見所はカルスト地形、特に数多くの洞窟群です。
地質が水に溶けやすい石灰岩であるため雨や川による浸食を受けてタワー・カルスト(塔状の奇岩)やドリーネ(陥没後の窪地)、地下河川をはじめとするカルスト地形が展開しています。
際立っているのが洞窟で、今回の記事には既知の洞窟が417、そのうち観光客に公開されている洞窟が約30と記されています。
ぼくが最初に訪れた2010年頃、ふたつの洞窟しか公開されていませんでした。
All Aboutの記事を書いた2016年時点で洞窟数が300数十、公開されている洞窟が10前後になっていました。
この10年で発見された洞窟も公開された洞窟も急速に増えたことがわかります。
そしてまだまだ数多くの未発見洞窟が眠っているといわれています。
たとえば「天国の洞窟」といわれるティエンドゥオン洞窟(パラダイス・ケイヴ)はわずか1~2mほどの穴から全長31.4km・最大高150m・最大幅100mを超える大洞窟に入るのですが、ジャングルに覆われた山地でそのような小さな穴を発見するのは容易ではありません。
しかも内部の探索もまた困難で、たとえば世界最大の洞窟通路であるソンドン洞窟は全長約9km・最大高240m・最大幅200mという巨大さを誇りますが、細い横穴や地下河川・地底湖が広がっていて本当の全長も水深もわかっていません。
地底湖については2019年の調査で水深77mまで潜ったものの底に到達せず、水路は120m~1km以上ある可能性も指摘されています。
ですから毎年新発見の洞窟は増えつづけ、既知の洞窟のサイズも大きくなっています。
そして今回のニュースです。
「フォンニャ=ケバン国立公園」ではイギリス洞窟研究協会が長らく探索を続けていますが、3月3日から11人の専門家が20日間の遠征を行い、帰還後に新たな発見の発表を行いました。
それによると人跡未踏の14の洞窟を発見し、総延長は10kmを超えるということです(一部は世界遺産資産外に位置するようです)。
たった20日間の探索としてはこれまでにない成果であるとしています。
発見された洞窟は以下です。
- Nuoc Ngam:3,872m
- Phu Nhieu 4:2,012m
- Nuoc Lan 3:1,919m
- Doc Co:554.6m
- Ma Lon:463m
- Hung Thoai:460m
- Dry Vom:413m
- Cha Ra:314m
- Three Horned Viper:194.8m
- Thoang Lip:137m
- Coincidental:100m
- End:51.5m
実は「フォンニャ=ケバン国立公園」はラオス国境に接しているのですが、ラオス側にも同様の地形が広がっており、ヒン・ナム・ノ国立保護区として保護されています。
ラオス初の自然遺産としての登録を目指しており、世界遺産暫定リストにも記載されています。
2015年頃から「フォンニャ=ケバン国立公園」をラオス側に拡大する形での登録を模索しており、国境付近に関してはベトナムとの共同管理もはじまっています。
ラオス政府は2020年1月に国立公園設立に関する法令に署名し、保護体制の強化や予算拡大が図られています。
といってもラオスのベトナム国境付近はほとんど秘境で「フォンニャ=ケバン国立公園」以上に謎に包まれているといわれます。
こちらでも未知の数多くの洞窟が眠っており、未発見の固有種も少なくないと考えられています。
なんだかワクワクしますね。
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新型コロナウイルスで海外旅行どころではない状況です。
4月に予定されていたイギリス洞窟研究協会の調査も中止され、現地ではほとんどの洞窟が閉鎖されているようです。
このウイルス禍、早く収まってくれることを願います。
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