世界遺産NEWS 18/11/27:ハワイとパラオ、サンゴ礁保護で日焼け止め規制へ
2018年7月、アメリカ・ハワイ州知事は日焼け止めの2種類の成分を指定し、これらを含む日焼け止めの販売を禁止する法案に署名をしました。
10月には太平洋・ミクロネシアの共和国・パラオの大統領が10種類の成分のいずれかを含む日焼け止めの販売・持ち込みを禁止する法案に署名しています。
■Coral: Palau to ban sunscreen products to protect reefs(BBC。英語)
世界遺産について、ハワイには「ハワイ火山国立公園」と「パパハナウモクアケア」があり、パラオには「南ラグーンのロックアイランド群」があります。
これらの観光にも一定の影響が及ぶものと思われます。
今回はこのニュースをお伝えします。
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世界中のサンゴ礁は現在、消滅の危機に瀕しています。
UNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)の世界遺産センターが昨年発表した "Impacts of Climate Change on World Heritage Coral Reefs"(世界遺産のサンゴ礁における気候変動の影響)という報告書によると、なんらかの対策が採られない場合、2100年までにサンゴ礁の大部分が消滅する恐れが高いとしています。
2013年に発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書でも同様の発表が行われています。
詳細は下にリンクした過去記事「世界遺産NEWS 17/06/26:世界遺産のサンゴ礁、今世紀中に全滅の危機」を参照してください。
こうした危機の最大の原因は気候変動による海水温の上昇と海の酸性化ですが、これらとともに大きな影響を与えていると考えられているのが化学物質です。
特に日焼け止めに使われるオキシベンゾンやオクチノキサートといった物質はサンゴが体内に共生させている褐虫藻を死滅させたり追い払うことが知られており、これによりサンゴの白化が促されているようです。
2018年7月、アメリカ・ハワイ州のデービッド・イゲ知事はこれら2種のいずれかの成分を含む日焼け止めの販売・流通を禁止する州法に署名しました。
世界初となる法律で、2021年1月1日に発効する予定です。
ただ、持ち込みは禁止されておらず、医師の処方箋があれば購入することも可能ということです。
この法案には反対も少なくありません。
業界団体は根拠となったのはたったひとつの研究にすぎないとし、人が塗る程度の分量が海に希釈された状態でサンゴ礁に与える影響は大きくないとの見方を示しています。
また、一部の医師らは日焼け止めが皮膚癌を防ぐという多くの研究結果があるのに対し、白化を促すことを示す研究結果は少ないと主張しています。
逆に、環境保護団体は多くが法案に賛成していますが、"Reef-Safe"(サンゴ礁に無害)をうたう日焼け止めにも有害なものがあり、2種の成分の規制だけでは足りないとする団体もあったりします。
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上はパラオの世界遺産「南ラグーンのロックアイランド群」に含まれる52のマリン・レイク(海とつながりのある汽水湖)のひとつ、ジェリーフィッシュ・レイクの動画です。
ジェリーフィッシュはクラゲで、この湖にはゴールデンジェリーフィッシュをはじめとするクラゲが大量に繁殖しており、クラゲと一緒にスノーケリングやダイビングができるということでパラオ随一のアトラクションとなっています。
しかしながら近年、クラゲの個体数が減少しており、2017年にはクラゲを保護するために長期にわたって立ち入りが禁止されていました。
湖全域の水や砂、クラゲから日焼け止め成分が検出されており、その影響が指摘されています。
サンゴをはじめ生態系に与える影響を懸念したトミー・レメンゲサウ・ジュニア大統領は11月上旬、オキシベンゾンをはじめとする10種の成分を指定し、いずれかを含む日焼け止めを禁止する法案に署名を行いました。
この法案は日焼け止めの販売のみならず持ち込みをも禁止するもので、さらに使い捨てのプラスチック製あるいはポリスチレン製の容器や袋・ストローを用いず、代替品を使用することも記されています。
発効は2020年1月1日で、違反した場合は1,000$(約11万円)以下の罰金が科せられるということです。
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環境保護だけでなく、皮膚にやさしいという意味においても、近年日傘や帽子・長袖で紫外線を防いだり、オーガニック植物オイルを使用した日焼け止めが流行しています。
ぼくが滞在している東南アジアでも日傘を見るようになりましたし、ミャンマーのタナカのような伝統的な日焼け止めが見直されているようです。
この流れは世界的に広がっていくと思われますが、禁止という政策によらずとも、すぐにでも自然と減っていくのがベターなのかもしれません。
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