世界遺産NEWS 18/10/16:百舌鳥古墳群の仁徳天皇陵、初の外部調査へ
10月15日、宮内庁と堺市は世界三大墳墓のひとつとされる仁徳天皇陵(大仙古墳)の共同発掘調査を行うことを発表しました。
宮内庁が外部機関に陵墓の発掘調査への参加を認めるのははじめてとなります。
■宮内庁 仁徳天皇陵を発掘へ 今月下旬から堺市と共同で(毎日新聞 デジタル毎日)
仁徳天皇陵はまだ世界遺産ではありませんが、2019年夏に開催される第43回世界遺産委員会で登録の可否が審議される「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」の構成資産のひとつに含まれています。
今回はこのニュースをお伝えします。
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日本にはたくさんの有形無形・動産不動産の文化財がありますが、国定の文化財を管理しているのは文化庁で、文化財保護法を根拠としています。
しかし、天皇家の財産を管理しているのは宮内庁で、原則、文化財保護法の指定は受けていません。
これが問題になったのが1998年に世界遺産登録された「古都奈良の文化財」の正倉院です。
正倉院は皇室財産なので宮内庁が管理していましたが、世界遺産の構成資産は各国の法律で保護されている必要があるため、前年に文化財保護法の国宝指定を受けました。
正倉院と同様に、宮内庁の管理物件となっているのが皇室の陵墓です。
陵墓は御陵(天皇と三后=皇后・皇太后・太皇太后の墓)と御墓(その他の皇族の墓)からなり、現在、宮内庁は全国896の陵墓を管理しています。
宮内庁は静安と尊厳の保持を理由にこうした陵墓への立ち入りを厳しく制限しており、調査や保護のための補修も原則、宮内庁内部で行っています。
では、「百舌鳥・古市古墳群」の世界遺産登録に求められる法的保護はどうするのでしょうか?
こちらは世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の長崎造船所、三池港、旧官営八幡製鐵所といった稼働中の工場で採られた方法が踏襲されています。
こうした工場は稼働中であるため文化財としての指定ができません。
そのため内閣官房が主導して景観法、港湾法、公有水面埋立法といった法律・条例を組み合わせてこれをクリアしました。
「百舌鳥・古市古墳群」についても都市計画法、景観法などの組み合わせで対応しています。
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復元された群馬県高崎市の保渡田古墳群・八幡塚古墳
古墳の当時の姿が再現されています(「百舌鳥・古市古墳群」と直接の関係はありません)
さて、今回のニュースです。
10月15日、宮内庁と堺市は10月下旬~12月上旬にかけて共同で発掘調査を行うことを発表しました。
調査目的は今後の保全整備計画を策定するための情報収集で、三重の濠の内側にある第一堤の南側・2×30mほどの調査区3か所を発掘します。
陵墓の発掘調査はこれまで庁内に陵墓管理委員会を設け、専門家を招いて行ってきました。
今回、堺市の学芸員がひとり参加する予定ですが、このように外部機関をそのまま受け入れるのははじめてとなります。
■発掘場所(毎日新聞 デジタル毎日)
上にリンクした記事によると、宮内庁は「周辺遺跡の知見を持つ堺市との連携は適切な保存につながる。天皇陵の保全管理に地元の協力は不可欠」と述べているそうです。
また、この発掘調査の後も発掘場所を変えて調査を継続する予定であるとしています。
近年宮内庁はこのような調査に道を開きはじめており、宮内庁の補修工事を学者に公開する例も出ています。
実は仁徳天皇陵と並んで有名な応神天皇陵(誉田御廟山古墳)についても2011年に学術研究のための立入調査を認めています。
もっとも入れたのは内堀までで、発掘や採取はNG、周囲を徒歩で観察するのみでした。
他の陵墓における補修工事の公開も墳丘の最下段までで、聖域とされる上部への立ち入りは相変わらず厳禁とされています。
なお、「仁徳天皇陵」という名称について、古墳の建築年代と仁徳天皇の没年との差などから仁徳天皇の墓ではないとする研究もあり、天皇名は明記せず「大仙古墳」「大仙陵古墳」等と表記するマスコミもあったりします。
このような陵墓は他にもありますが、宮内庁は明確な証拠が発見されるまで指定を変える予定はないとしています。
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来夏の世界遺産登録を目指している「百舌鳥・古市古墳群」ですが、9月11~17日にかけて、文化遺産の調査や評価を行っているICOMOS(イコモス=国際記念物遺跡会議)のフィリピン人調査員が現地調査を行いました。
この調査をもとに評価報告書が書かれるわけですが、イコモス調査員がどのような印象を抱いたのかとても気になるところです。
勧告結果は4月下旬~5月上旬に出る予定なので、出たら報告したいと思います。
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