世界遺産NEWS 19/02/03:王家の谷・ツタンカーメンの墓が9年にわたる修復を完了
1月31日、エジプトの世界遺産「古代都市テーベとその墓地遺跡」、王家の谷に眠るツタンカーメンの墓で行われていた9年にわたる修復が完了し、観光客に開放されました。
■Tutankhamun's tomb restored to prevent damage by visitors(BBC。英語)
今回はこのニュースをお伝えします。
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ツタンカーメンの墓は古代都市テーベ(現在のルクソール)の死者の町・ネクロポリスに広がる王家の谷の地下に位置します。
1922年にイギリス人考古学者ハワード・カーターが発見し、黄金のマスクをはじめとする豪華な副葬品とともにツタンカーメンのミイラが見つかると「20世紀最大の発見」と大きなニュースになりました。
紀元前1600~前1000年頃の新王国時代の墓に未盗掘のものはほとんどありませんでしたから、本当に大きな発見でした。
しかしながら発掘に参加したカーナヴォン卿が2か月後に亡くなると、「ファラオの呪い」の噂がいっそうセンセーショナルに報道されました。
呪いの噂は幾度となく立ち上がりましたが、これらは新聞社や雑誌社の部数競争による煽りであることが明らかになっています。
その後、黄金のマスクをはじめとする副葬品の多くは調査を経てエジプト考古学博物館に収蔵され、ツタンカーメンの墓も王家の谷のハイライトのひとつとして観光客に公開されました。
しかしながら墓は地下深くで閉じられた空間です。
ここを毎日数百人が訪れたことから内部の環境は大きく変質し、埃や湿気・二酸化炭素などによって壁画やレリーフの状態は悪化していきました。
これに対してエジプト考古学博物館とアメリカのゲティ保存研究所が共同で約5年間にわたって調査を行い、現状の把握と修復・保存方法の開発に努めました。
ここで問われたのは、どの時点の状態に戻すのかという問題でした。
公開後に広がった染みを除去するのはもちろんですが、壁画を覆うように付着している茶色い染みを分析すると、墓が建設された直後に付いたものであることが明らかになりました。
結局修復チームは1922年の発見当時の状態に戻すことに決め、着色等は行わず、発見以前に付いた染みもそのまま残すことになりました。
そして9年に及ぶ修復がこの1月に完了し、31日に再公開を迎えました。
以前のように目の前まで近づくことはできなくなりましたが、見やすくドラマティックにライトアップされており、持続可能な見学を実現する最新の換気装置が取り付けられています。
ただ、ツタンカーメンのミイラは状態がよくないため、アクリル樹脂のケースで完全に密閉されています。
1922年にハワード・カーターがツタンカーメンの棺を発見したとき、矢車草の花束が寄り添うように置かれていたといいます。
カーターは、20歳前にこの世を去った夫ツタンカーメンを思って王妃アンケセナーメンが捧げたものと考えて、著書の中でこう書いています。
「わたしたちは、この花束を、夫に先立たれた少女の妃が、『二つの王国』を代表した若々しい夫にささげた最後の贈り物と考えたいのである。いたるところ黄金の色きらめく、帝王の豪華、王者の華麗のなかにあって、まだほのかに色をとどめたささやかなあせた花ほど美しいものはなかった。それは、三千三百年といってもごくわずかの時間であって、昨日と今日の境にすぎないことを物語っていた」
(ハワード・カーター『ツタンカーメン発掘記』筑摩書房より)
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そう言えば、以前こんな記事を上げたことがありました。
■世界遺産NEWS 15/11/15:ピラミッド&王家の谷で未知の空間発見!?
この記事には追記を入れていますが、その後の報告をしておきましょう。
この記事は、ツタンカーメンの墓の壁を赤外線サーモグラフィーで測定した結果、北側の壁に温度が低い部分が発見され、空間が存在する可能性が確認されたというものでした。
その後、地中探査レーダー(GPR)でも同様の結果が出たことから、伝説の美女・ネフェルティティの墓があるのではないかという報道が駆け巡りました。
エジプト考古省は2018年3月、イタリアのトリノ工科大学のチームとともにGPRによるより詳細な調査を行いました。
そして同年5月にその結果として、少なくとも壁から4m奥までの範囲について、空間が存在する証拠は確認できないという結論を発表しました。
どうやらネフェルティティの墓の発見はまた幻に終わったようですが、ツタンカーメンの墓はぜひ訪れてみたいですね。
ぼくは以前、王家の谷を訪れていますが、時間の関係でツタンカーメンの墓には入ることができませんでした。
次回はぜひ、訪ねたいと思います。
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※各記事に、さらに以前の記事にリンクあり