私的旅行術 準備編9:海外旅行保険
海外での病気やケガ・物品の破損や盗難等のトラブルに備えて保険に入っておきたいところです。
今回は海外旅行保険について解説します。
なお、クレジットカード付帯の海外旅行保険については次回のテーマとします。
○本記事の章立て
- 海外旅行で国民健康保険や生命保険、自動車保険は使えるか?
- 海外旅行保険の種類
- 出発前にしておくこと
* * *
■海外旅行で国民健康保険や生命保険、自動車保険は使えるか?
海外旅行保険の話に入る前に、国民健康保険や生命保険、自動車保険等の補償は海外旅行には適用されないのでしょうか?
国民健康保険の場合、住民票が日本にあって加入している限り、後日の請求で医療費の給付を受けることができます。
金額は国内と同様、自己負担分の1~3割を除いた額ですが、医療費は実際の出費ではなく、国内の基準に沿って算出されます。
カバーされる病気も日本と同様で、死亡・後遺症等に対しては給付を受けることができません。
一方で、一般的な海外旅行保険ではカバーされない出産や慢性疾患・歯科医療等に対しても有効です。
領収書や診断書等が必要になるので、必要そうであれば事前に調べておくとよいでしょう。
生命保険も基本的に補償を受けることができます。
ただし、事前に届け出が必要だったり、海外にいる間も支払いを継続する必要があったり、日本と同レベルの医療施設に限ったり、渡航期間や地域を限定したりと、種々の条件があったりします。
こうした条件は保険会社や契約内容によって異なるので、こちらも事前に相談しておくべきでしょう。
海外で交通手段として自動車を運転した際の事故について、日本で契約している自動車保険は適用されません。
それどころか通常の海外旅行保険でも一般的には適用外となります。
したがってレンタカーなどを運転する際には、レンタカー会社が用意した保険プランを利用するか、海外旅行保険に特約を追加するか、自分で現地の保険に加入する必要があります。
* * *
■海外旅行保険の種類
海外旅行中のさまざまな危機に対応した保険が海外旅行保険です。
旅行ではなく長期滞在の場合は、留学生保険・ワーキングホリデー保険・駐在員保険等が別途用意されています。
海外旅行保険には以下のような種類があります。
○商品プランから見た区分
- パッケージ
さまざまな補償をセットにして販売するタイプ
- オーダーメイド
補償内容を自分で設定するタイプ
- オプション
追加で着脱可能な補償
○人数タイプから見た区分
- 個人プラン
- ファミリープラン
- カップルプラン
パッケージでも保険料を抑えるタイプから補償内容をグレードアップしたタイプまで、数種類用意されていることが多いです。
補償内容について、主に以下のような項目から構成されています。
○自分の身体に対する補償
- 傷害死亡:旅行中のケガによって亡くなった場合の補償
- 疾病死亡:旅行中の病気によって亡くなった場合の補償
- 傷害治療:旅行中のケガに対する治療費の補償
- 疾病治療:旅行中の病気に対する治療費の補償
- 後遺障害:旅行中のケガによる後遺症に対する補償
- 入院一時金:旅行中のケガや病気による入院に対する一時金
- 救援者費用:旅行中のケガや病気のため家族が駆けつけた際の経費補償
○他人の物品や身体に対する補償
- 賠償責任:人を傷つけたり物を壊した場合の損害賠償の補償
○携行品に対する補償
- 携行品損害:携行品が盗まれたり壊れたときの補償
- 航空機寄託手荷物遅延:預入手荷物が到着しなかった場合の身の回り品の購入費用に対する補償
○その他の補償
- 航空機遅延:搭乗予定や搭乗した飛行機の遅延・欠航・運休によって生じた宿泊費や食事代・交通費・通信費等の補償
- 緊急一時帰国費用補償:親族が危篤・死亡したときに一時帰国のための交通費・宿泊費等に対する補償。配偶者と2親等以内の親族までなどと適用範囲が定められている
どこをどれだけ手厚くするかは状況や行く場所・嗜好によって異なります。
高品質の生命保険に入っている人は死亡関係の補償を充実させる必要はないかもしれません。
治療費の高いアメリカなどに行くのであれば傷害治療・疾病治療を充実させる必要があるかもしれません。
PCやカメラなど高価な品物をたくさん持っていく人は携行品損害を手厚くしたいところです。
欠航や遅延・運休が多いLCCに乗る際は航空機遅延を付けるのもひとつの手です。
クレジットカードをお持ちの方は付帯の海外旅行保険をカバーする形でかけるのが賢いかもしれません。
こうした調整が必要な方はオーダーメイドやオプションを利用することになります。
海外旅行保険に関する知っておきたい知識を列挙しておきましょう。
保険会社や契約によって異なることあるので、保険に入る際に各自で確認してください。
○海外旅行保険のお役立ちTIPS
- 日本の保険会社の海外旅行保険は日本国内でしか買うことができない(海外に出てから買うことはできない。ただ、海外の保険会社の中には可能なものもある)
- 保険期間は自宅を出てから自宅に戻るまでで、その間であれば日本国内にいても補償が適用される
- 補償額は1回ごとのものなので、たとえば2度ケガをした場合はその都度補償される
- 疾病治療は出産や慢性疾患・歯科治療等には使えない
- 携行品損害は紛失や置き忘れには適用されず、置き引きについても適用されないことがある
- 自動車を運転している際の事故や犯罪・ケンカの当事者である場合の傷害については適用されない(巻き込まれた場合は可)
- 航空機遅延は6時間以上の遅延でなければ認められない
- 複数の保険会社に加入しても同時に複数の補償を受けられるわけではないが、上限については合算が可能(死亡や後遺障害等の例外あり)
最後の項目について少し説明しましょう。
たとえば200万円の治療費を請求する場合、A保険会社とB保険会社の海外旅行保険を同時にかけても200万円×2社=400万円が得られるわけではありません。
両社は200万円を折半して支払うことになります。
ただし、傷害治療の上限がA社100万円、B社100万円である場合、折半額の上限が100万円になるため、A社から100万円、B社から100万円で治療費の200万円を得ることは可能です。
したがって「上限については合算できる」ということになります。
ただし、死亡・後遺障害については合算できず、もっとも高額な保険会社の数値が適用されます。
これらについては次回、クレジットカード付帯の海外旅行保険の記事でも解説します。
海外旅行保険は代理店やネットで加入できるほか、空港にも保険会社のカウンターがあったりします。
出国した後で加入することはできないので、必ず国内にいる間に加入するようにしましょう。
■海外旅行保険の比較サイト、ネット加入できる海外旅行保険の例
- i保険(海外旅行保険比較サイト)
- 海外旅行保険 一括見積もり・比較サイト(価格.com)
- 新・海外旅行保険【off!(オフ)】( 損保ジャパン日本興亜)
* * *
■出発前にしておくこと
保険の適用を受けるためには保険会社への連絡が欠かせません。
契約書等を保管し、海外から連絡する際の電話番号等は必ず複数箇所に控えておきましょう。
バッグを盗難・紛失したときのためにコピーをそれぞれのバッグに入れておいたり、メールやクラウド上にデータ化しておくとよいでしょう。
事故にせよ盗難にせよ、保険を使いそうな状況になったらとりあえず保険会社に連絡するのが得策です。
病気やケガの場合は指定の病院でキャッシュレスで治療を受けたり、通訳を手配するサービスを行っている保険会社もあります。
病気の場合は領収書や診断書、盗難の場合は警察への届け出等が必要ですが、こちらも指示が受けられます。
* * *
次回はクレジットカード付帯の海外旅行保険について解説します。
通常の海外旅行保険と組み合わせるとお得なので、参照してみてください。
※以上の内容は国や会社・状況によって事情が異なることがあります
※内容を保証するものではありませんので、必ずご自分で確認してください