たびロジー9:ロボットは痛みを感じるか?
人は全人類に共通するなんらかの基準を持っているようだ。
それは何かフィルターのようなものであり、サングラスのようなものらしい。
人はおいしいからおいしいものを食べる。
それを説明するために、科学はある。
人はおいしいからおいしいものを食べる。
チョコレートがおいしいからチョコレートを食べる。
梅干が好きで梅干を食べる。
思考実験1。
ここにひとりの外国人科学者がいる。
彼は宇宙の謎をすべて解いた。
宇宙のはじまりから今後宇宙が消滅するまで、すべてを知っている。
梅干の分子構造どころか素粒子構造まで知っている。
梅干を食べたとき、脳にどのような反応が起こるのか、すべてを知っている。
彼には謎がない。
彼はすべてを知っている。
ただ、彼は日本人じゃないから梅干を食べたことがない。
さて問題。
彼は梅干の味を知っているか?
思考実験2。
ここに1台のロボットがある。
ロボットの体も脳も、人間を完璧に模して造られている。
このロボットが転ぶ。
膝のセンサーが圧力を感じ、人間の膝に生まれるのとまったく同じ電気信号が、人間の神経線維とまったく同じ構造の線維を駆け抜ける。
電気信号はロボットの頭脳へと送られ、人間の脳内とまったく同じホルモン物質が出て、脳とまったく同じ化学反応が起こり、電気信号のやり取りが行われる。
さて問題。
ロボットは痛いか?