たびロジー7:ユークリッド脳
「俺の頭脳はユークリッド的であり、地上的なんだ。だから、この世界以外のことはとうてい解決できないのさ。おまえにも忠告しておくけど、この問題はけっして考えない方がいいよ、アリョーシャ。何より特に神の問題、つまり神はあるか、ないかという問題はね。これはすべて、3次元についてしか概念を持たぬように創られた頭脳には、まるきし似つかわしくない問題なんだよ。というわけで、俺は神を認める」
(ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』新潮文庫)
人は、目で見、鼻で嗅ぎ、口で味わい、耳で聞き、肌で触れた感覚をもとに法則性を見出す。
たとえば空間概念。
人は物事を3次元空間で考えることしかできない。
2次元世界も4次元世界も考えることができない。
次元ってなんだろう?
1つの謎がある。
これを変数xで表す。
これが1次元だ。
幾何学で表現すれば1次元とはx軸、すなわち直線。
よくわからない2つの謎がある。
これを変数xとyで表す。
2次元だ。
x軸とy軸で表される空間、すなわち平面。
同様に3次元はx、y、zで表される3D空間だ。
では4次元は?
どうやったら軸をもう1つ増やせるだろう?
あと1つだけ人は軸を増やせる。
時間軸tだ。
こうしてx、y、z、tで表される4次元時空を人は感知する。
人は空間なら3次元、時空なら4次元しか考えることができない。
たとえば2次元空間、つまり平面に住んでいる自分が想像できるか?
たとえば4次元空間や5次元時空で暮らす自分が想像できるか?
人にはできない。
できる人も、できた人も、できるであろう人も、いない。
それができる人は理論を超越するからだ。
仮にいたとしても、彼が言う言葉が4次元空間や5次元時空の発想だと、我々には理解できない。
つまり、気が狂ったか、意味がないことをしゃべり続けている、としか我々にはとらえられない。
人は3次元空間+時間でしか、ものを理解することができない。
ではなぜ物理学では6次元空間や10次元宇宙なんてものが語られているのか?
数学上、たとえば変数x、y、z、tの他に6つの変数を加えて方程式を立てれば10次元が表現できたことになる。
10次元宇宙論は数学的な結論を引き出してきたもので、物理学者が10次元宇宙を実際に想像して発表しているわけではない。
ユークリッドは紀元前4~3世紀の数学者。
平面の数学を作り上げ、その数学は約2,500年間覆されることがなかった。
誰もが3次元空間や4次元時空を正しいと信じてきた。
しかし、19世紀にガウスやリーマンが現れて非ユークリッド幾何学が成立すると、人の空間概念や時間概念が非常に不確かなものであることが証明された。
しかし、実は古代ギリシアの時代から、そんなことは繰り返し言われてきた。
すべては人の思考が作り出したもの。
そして、人の考え方にはパターンがある。
そのパターンを通してしか、人は物事をとらえることができない。
もちろん、そのパターンで人の考え方をとらえることはできない。
パターンでパターンをとらえることはできない。
ごくごく当たり前の話。