グルメ3:反逆の古酒
シングル・モルトやバーボンのように樽の色が染み出たわけじゃない。
その琥珀色は日本酒自身が時間をかけて練り上げたもの。
瓶の中で成分が作用しあい、透明な液体が少しずつ少しずつ琥珀をつむぐ。
日本酒が変わるかもしれない。
最近流行っている日本酒に「冷おろし」がある。
日本酒は普通夏に仕込んで冬に出荷する。
春に飲めるしぼりたての酒を「初しぼり」、夏まで熟成させた酒を「生酒」という。
そして夏を越し、寒くなった頃出荷する酒を「冷おろし」、冬まで寝かせたものを「寒おろし」という。
こうして夏を乗り切った酒は総合して「古酒」と呼ばれる。
もともと室町・鎌倉の時代からあった伝統の酒。
杜氏たちはこれを喜んで飲んでいたという。
ところが、夏に腐敗してしまったり税制だのなんだので明治以降廃れていった。
近年の日本酒ブームのなか、「寝かしてみたらどうなるのだろう?」。
こう考える人間が現れた。
こういう人たちが集まって古酒を復興した。
いままでの日本酒は、言ってみればほぼすべてヌーボー。
新酒だ。
でも、寝かせ、熟成させた方がうまいのなら、寝かせておけばいい。
その技術も確立された。
ワインのように、日本酒も寝かせておくのが当たり前の時代がくるかもしれない。
それほどに、古酒はうまい。
いま、日本酒は焼酎ブームに押され、多くの酒造会社が倒産の危機にあるという。
ならばぜひ日本酒革命を。
それだけの力が古酒にはある。
もちろん、ガラス細工のような日本酒のすばらしさは新酒でしか味わえないけれど。
それはそれ。
これはこれ。
afs(あふす)30年を飲んでそう思った。
がんばれ、日本酒。
がんばれ、古酒。