ルートで選ぶ世界遺産1:ペルー南部周遊ルート
世界遺産を見に行こう!
旅先を決めるとき、世界遺産をメインに据える人も多いのではないかと思う。
たとえば北京に行くなら「万里の長城」や「北京と瀋陽の明・清朝の皇宮群」の故宮(紫禁城)は外せないし、パリに行くなら「パリのセーヌ河岸」と「ヴェルサイユの宮殿と庭園」はなんとしても訪れたいところ。
でも、北京近郊にもパリ近郊にもそれぞれ6つの世界遺産があるのをご存じだろうか?
世界遺産旅行は「ルート」としての魅力で捉えるべきではないか?
こんなコンセプトのもと、本シリーズ「ルートで選ぶ世界遺産」では複数の世界遺産を結ぶ「ルート」としての世界遺産旅行を提案する。
第1回は、古代遺跡・植民都市・砂漠・高山・ジャングルというまったく異なる魅力をパッケージしたペルー南部周遊ルートを紹介しよう。
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■テーマ:ペルー南部周遊ルート
■ルート:リマ→ナスカ→アレキパ→クスコ→リマ
■世界遺産:8か所(遺産の種類:拠点)
- リマ歴史地区(文化遺産:リマ)
- ナスカとパルパの地上絵(文化遺産:リマ、イカ、ナスカ)
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聖地カラル-スーぺ(文化遺産:リマ、バランカ)
- アレキパ市歴史地区(文化遺産:アレキパ)
- クスコ市街(文化遺産:クスコ)
- マチュピチュの歴史保護区(複合遺産:クスコ)
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カパック・ニャン アンデスの道(文化遺産:クスコ)
- マヌー国立公園(自然遺産:クスコ)
まず、ペルーの地形に注目しよう。
ペルーは南アメリカ大陸の西部、南北のほぼ中央に位置する国だ。
国土の東半分はアマゾンのジャングルで、河口から3,000kmほども離れているのに標高300mほどという低地が広がっている。
赤道に近いこともあり、この地域はとても暑く湿潤で、多数の野生生物が生息している。
その西に走るのがアンデス山脈だ。
アマゾンから一気に4,000~6,000m級の山々が駆け上がっている。
ペルーの最高峰はワスカランで、標高は6,768mにもなる。
アンデス山脈の西は砂漠地帯で不毛の大地が縦に伸びている。
ナスカの地上絵が消えずに残っているのも、少ない降水量のおかげだ。
日本人は海岸には緑がつきものだと思いがちなので、灰色の荒野がそのまま海に落ち込む姿は少し異様に感じることだろう。
このように、ペルーは東から「ジャングル-高山-砂漠」が並ぶ特殊な地形。
景色はそれぞれまるで違うので、ペルーを旅するならぜひこの3つを楽しみたい。
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今回紹介する「ペルー南部周遊ルート」はこの3つの地形を存分に味わえるルートだ。
その詳細を紹介しよう
まず、飛行機でペルーに入る場合、起点は首都リマになる。
このリマにある世界遺産が「リマ歴史地区」だ。
インカ帝国を滅ぼしたスペイン人コンキスタドール(征服者)フランシスコ・ピサロが築いた植民都市で、ペルー副王領の首都として繁栄した。
バロック・コロニアル・アンダルシアといったさまざまな建築様式が混ざった美しい教会や大聖堂、官公庁が残されている。
リマの南400kmほどにある街がナスカだ。
ここにはAll About世界遺産ランキングで第5位の「ナスカとパルパの地上絵」がある。
この世界遺産を楽しむコツは、酔い止めと予備知識。
セスナ等に乗って地上絵を眺めるのだが、左右の窓から地上絵が見えるようにセスナは8の字旋回を繰り返す。
酔い止めは必須だ。
また、結構上空からの眺めになるので地上絵は思ったより小さくしか見えない。
ある程度形を知っていないと「何がなんだかわからなかった」なんてことになりかねないので、どんな絵があるのかくらいは調べておこう。
周囲には礫砂漠・岩石砂漠が広がっているので、リマからナスカにかけてバスで旅すれば、延々と続く砂漠の様子もよくわかるはずだ。
砂漠の景色はどこまで行っても変わらないので、ここからアンデス山脈を駆け上がろう。
荒野はいつしか草原となり、いくつもの渓谷を越えて森林になる。
そしてナスカから南西へ約450km、標高2,300mの位置にあるのがアレキパだ。
アレキパはインカ帝国の古都で、その後スペインによって整備された植民都市。
「白い街」と呼ばれる美しい街並みが世界遺産「アレキパ市歴史地区」に登録されているほか、コンドルの谷で知られるコルカ渓谷の壮大な景観や、民族衣装を着たさまざまな民族が集まる市場など、見所は尽きない。
次の目的地クスコが富士山並の高所なので、ここで高地順応しておこう。
アレキパから北へ300kmでインカ帝国の首都クスコに到達する。
標高はなんと3,400m、富士山の九合目にあたる。
世界遺産「クスコ市街」の見所はなんといっても「カミソリ1枚通さない」といわれる石組だ。
スペインはインカの神殿を破壊し、その石組の上に教会や大聖堂を建てた。
そうした建築物は巨大な地震が起こるたびに損傷したが、土台の石組はビクともしなかったという。
クスコから80kmほどの位置にあるのが「マチュピチュの歴史保護区」だ。
クスコから電車で訪れるのが一般的だが、日帰りだと時間が限られてしまうので、麓の街アグアスカリエンテスで一泊したいところ。
時間と体力がある人は、クスコからインカ道=カパック・ニャンを通り、数々の遺跡を見ながらトレッキングするのもいいだろう。
途中、通りかかるオリャンタイタンボなどの遺跡が「アンデス道路網、カパック・ニャン」に登録されている。
あまり知られていない世界遺産が「マヌー国立公園」だ。
クスコの北150kmほどの位置にあるアマゾンのジャングルで、特有の動植物と出会える秘境中の秘境。
一般的にはクスコから飛行機に乗り、数泊のツアーで訪れる。
アンデスの山岳風景がジャングルの景色に切り替わる瞬間は衝撃的だ。
おまけとして、リマから北へ約150kmの位置にある「聖地カラル-スーぺ」を訪ねるのもおもしろい。
カラル遺跡には紀元前2500年にまで遡るピラミッドがあり、メソポタミアのジッグラトやエジプトのピラミッドに匹敵する歴史を誇るということで話題になった。
リマから日帰りツアーが出ているほか、バランカやワチョという街からタクシーなどで訪れることができる。
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このルート。
ハイライトはもちろん世界遺産のマチュピチュ、ナスカの地上絵、クスコだ。
しかし、リマからナスカにかけての砂漠地帯、アレキパ周辺の森林や大渓谷、マヌーのジャングルと、その魅力は本当に多彩。
実はクスコから南に下るとチチカカ湖があり、こちらもまた魅力的な旅になる。
いずれチチカカ湖~ティワナク~ウユニ塩湖~アタカマ砂漠というルートも紹介しようと思う。
次回は、リマから北へ向かう「ペルー北部周遊ルート」を紹介する。
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