前回は世界遺産検定のマイスター試験についてその概要を紹介しました。
今回はマイスター試験の得点プランと、対策が比較的容易な問1・問2の学習法を紹介します。
○本記事の章立て
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受検戦略を駆使して得点プランを立てていきましょう。
まずは前回紹介した試験概要より、認定基準を抜粋します。
○マイスター試験の認定基準と配点
「問1・問2で6点以上、問3で6点以上」とありますが、これ、とてもよい配点だと思います。
後述しますが、問1・問2は対策を練るのが比較的容易です。
ところが問3はいくら準備してもごまかしのできない問題で、知識と思考力を地道につけていく他ありません。
問1・問2の対策を通して世界遺産の学習を進展させ、問3でそうした知識をベースに自分の考え方を展開させる――
そんな出題者の意図が見えますね。
受検戦略の視点で見ると、問1・問2で高得点を取っても問3の得点のカバーはできず、その逆もできないことを意味しています。
つまり、問1+問2、問3のそれぞれで6点以上、おそらく60%以上を取るしかないということです。
したがって得点プランは以下のようになります。
○マイスター試験の得点プラン
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問1・問2の対策は比較的簡単です。
まず、前回も紹介した世界遺産検定公式サイトの「例題と対策:マイスター」の「○○年○月の試験の講評および学習方法はこちら」からリンクされているPDF「第○回世界遺産検定 マイスター試験講評および学習方法」をできるだけたくさん手に入れてください。
サイト上には直近2年4回分の講評しかリンクされていませんが、ぼくは検索して10回分ほどを手に入れました。
過去問を並べると出題傾向がよくわかると思います。
問1について、問題はこのようになっています。
1.○○○
2.○○○
3.○○○
そして1~3の語句をそれぞれ50字以内ほどで解答していきます。
解答用紙には線が引かれているだけなので、その上に書いていく形になります。
この問1に対して、ぼくは以下のような対策を立てました。
○マイスター試験、問1対策
実際にぼくが模範解答を作ったのは以下94の語句です。
新たに『すべてがわかる世界遺産1500』が出版されて必要語句が増えているので、ここに追加してみてください。
上にはありませんが、「アップストリーム・プロセス」「プレリミナリー・アセスメント」「記憶の場」など、世界遺産のトレンドにはつねにアンテナを延ばしておきましょう。
本サイトの以下の記事でも役に立ちそうな情報を解説しています。
模範解答を作成する際は特に以下に気をつけました。
たとえば2015年7月に「文化的景観」が出題されていますが、同じ問題がぼくが受検した2017年7月の問題に出ています。
そして2015年の講評には、「文化的景観では、文化的景観が取り入れられたことで文化遺産を柔軟に捉えることが可能となった点などを書いていた受検者はほとんどなく、表面的な説明に終始していた」とあります。
これを意識して解答を書いたか否かで得点は違うはずです。
ただ、ぼくは満点を目指してはいませんでした。
60%より多くの得点は無意味ですし(問2のカバーができるという意味では無意味ではないのですが)、満点を目指して大きな失点をしたくなかったからです。
問1の問題にはこうあります。
「次の語句を簡潔に説明しなさい」。
ですから、「簡潔に」答えなければ満点を取ることはできませんし、ぼくの得点を見るに簡潔でないことに対する減点は少なくないと思われます。
でも、ぼくの戦略は「簡潔」を捨てて、「確実に6点・60%以上を狙いに行くこと」でした。
与えられた50文字のギリギリまで、できるだけたくさんの情報を入れて、重要な情報を入れ忘れて大きな失点を犯すミスを防ごうと考えました。
というのは、先の「文化的景観」の解答にしても、ぼく個人としては「たった50文字の中に、柔軟に捉えられるようになったことを書く必要なんてあるのだろうか?」と疑問に思っていました。
文化的景観についていくつか模範解答を書いたのですが、そのことに触れない方がぼくにはベターに思えました。
こういうのって意外とあるんですよね。
たとえば、世界遺産検定の教科書にあるシリアル・ノミネーション・サイトやトランスバウンダリー・サイトの解説はある理由からあまりよろしくないと考えています。
世界遺産の用語というのはだいたい世界遺産条約とか世界遺産条約履行のための作業指針なんかの言葉を流用しているわけですが、いずれでも「シリアル・ノミネーション・サイト」という言葉は使われていませんし、「トランスバウンダリー・サイト」は少し違う意味で使われています(シリアル・ノミネーション・サイトはその後、シリアル・サイトに修正されています)。
本サイトでは世界遺産条約や作業指針の使い方に合わせています。
しかし、試験では当然、出題者の基準に合わせて解答しなくてはなりません。
ですからぼくはなるべく多くの情報を盛り込んで、小さな失点を許容する代わりに大失敗を避ける戦略を選びました。
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次に問2です。
こちらも過去の講評をなるべくたくさん手に入れて、過去問から傾向をつかんでください。
問題は以下のようになっています。
○○○ ○○○ ○○○ ○○○
400字以内という文字制限の中で4つの語句をうまく配置して全体で世界遺産条約を説明する問題です。
問1のようにそれぞれの語句を説明するだけでなく、全体を結びつけて1つの解答に仕上げなければなりません。
4語句の組み合わせは毎回違いますが、その多くは過去問に登場しています。
ですからぼくの問2対策は単純で、問1と同様、「過去問の模範解答を作る」というものでした。
○マイスター試験、問2対策
実際に出題される4語句は過去に例のない組み合わせになると思いますが、過去問をたくさん解いておけば、解答のその語句の部分を抜き出して並べ替えるだけで対応できます。
新しい語句が登場した場合でも、その語句は問1で作った模範解答に含まれている可能性が高いので、それを当てはめて再構成すれば問題ありません。
意外と「たまに『世界遺産の基礎知識』を読み返して解答をブラッシュアップする」ことが大切です。
問1の模範解答は50字以内で書かれていますが、問2ではその項目について50字以上の情報を入れる必要が出てくる可能性があります。
たとえば問1で「文化的景観」が出題された場合、50字以内の模範解答を書けば終わりです。
しかし、問2で4語句のひとつとして「文化的景観」が出てきた場合、50字以上の情報を入れる必要があるかもしれませんし、他の3語句との関係で別の解説を追加する必要があるかもしれません。
ですから問1に出てくる用語についても50字以上の知識を学んでおく必要があるのです。
そういう意味で検定資料を読み返すだけでなく、新たな知識を得るためにアンテナを伸ばしておくことが大切です。
問2でも、目標にしたのは満点ではなく6点・60%以上です。
ですから言い回しをなるべく短くし、漢字を多用して文字数を減らし、その分、情報を詰め込むようにしました。
なお、問2と問3については与えられた文字数の8割以上書かれていないと減点対象になるので、この点については注意が必要です。
また、問2では4語句の下に下線を引く必要があるので忘れないようにしましょう。
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以上がぼくの問1・問2対策です。
次回は世界遺産検定マイスター試験の山場である問3対策を紹介します。
[関連サイト]
世界遺産検定(公式サイト)
世界遺産NEWS 23/02/02:導入迫る世界遺産のプレリミナリー・アセスメントとアップストリーム・プロセスの概要