2022年5月6日、キューバの首都ハバナのホテル・サラトガでガス爆発が起こり、少なくとも46人の死者と81人の負傷者を出しました。
ホテル・サラトガは世界遺産「オールド・ハバナとその要塞群」の構成資産のひとつであるオールド・ハバナを象徴する建物のひとつであり、UNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)の世界遺産センターが懸念を表明しています。
■Explosion at Hotel Saratoga, Old Havana(UNESCO)
今回はこのニュースをお伝えします。
* * *
1519年頃、大帝国を築きつつあったスペイン、あるいはハプスブルク帝国は、キューバ島の北西岸のハバナ湾に新大陸における拠点として港湾都市ハバナを建設しました。
18世紀後半にイギリスの版図に入ると、奴隷貿易をはじめとする三角貿易で発展。
19世紀には周辺のプランテーション(奴隷など安価な労働力を背景とした大規模農場)で生産される砂糖の輸出で繁栄し、カリブ海随一の交易都市となりました。
もともとハバナは堅固な市壁に囲われた城郭都市でしたが、市壁の西に新市街が発展し、市壁内部の旧市街はオールド・ハバナと呼ばれるようになりました。
この市壁は19世紀後半に撤去されています。
世界遺産「オールド・ハバナとその要塞群」は11件の構成資産を有しますが、そのひとつであるオールド・ハバナはおおよそ旧市壁の内部となっています。
5月6日の現地時間午前10時50分頃、オールド・ハバナ西端を走るマルティ通りのホテル・サラトガで大きな爆発が起こりました。
町には轟音が鳴り響き、下層階の壁は吹き飛んで、化学物質のような悪臭が広がりました。
ホテル・サラトガは1880年に倉庫として建設され、1933年にホテルとして開業したキューバでもっとも格式の高いホテルのひとつです。
外国人の要人の利用も多いことなどから当初はテロが疑われました。
しかし、当時ホテルは新型コロナウイルスの影響で営業を停止しており、改装工事中だったことが明らかになりました。
まもなくミゲル・ディアス=カネル大統領はテロとの報道を否定し、事故であると発表しました。
その後の調査でタンクローリーから液化ガスをホテルに充填する作業中に起きた事故であるとされています。
96もの客室に宿泊客がいなかったことは幸いでしたが、それでも工事の作業員やホテル付近にいた歩行者、隣の建物の住人などを中心に46人もの死者と81人の負傷者が確認されています。
UNESCO世界遺産センターのラザレ・エルンドゥ・アソモ局長は犠牲者と負傷者、すべてのキューバの人々に哀悼の意を表しました。
そしてオールド・ハバナの象徴のひとつであるホテルの建物診断や修復・保全の支援を表明しています。
[関連記事]
世界遺産NEWS 16/02/18:ローマ教皇&モスクワ総主教、ハバナで会見