「UNESCO遺産事業リスト集」ではUNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)の三大遺産事業(世界遺産、無形文化遺産、世界の記憶[ユネスコ記憶遺産/世界記録遺産])やユネスコエコパーク(生物圏保存地域)、ユネスコ世界ジオパーク、創造都市、ユネスコ世界危機言語アトラスをはじめ、さまざまなリストを出してみたいと思います。
まずは日本の遺産のリストから。
日本におけるUNESCO事業記載物件のリストを掲載していきます。
また、最後に2015年から選定がはじまった文化庁の「日本遺産」のリストも載せているのでご覧ください。
下のマップでは2025年1月時点の日本の世界遺産全26件の主要構成資産約350項目を表示しています。
文化遺産は建物レベルまで拡大してみてください。
なお、shopでは世界遺産全1,223件(2025年1月時点)の主要構成資産5,800項目超のおおよその位置をPCやスマホ・タブレットのGooleアースやMAPS.MEといった電子地図上に表示するデータも扱っております
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まずは「世界遺産」。
以下が日本の世界遺産です。
○日本の世界遺産リスト(26件=文化遺産21件+自然遺産5件)
※括弧内は登録年、遺産種別、都道府県名
次に暫定リスト記載の物件です。
暫定リストとは5~10年のうちに世界遺産登録を目指す物件を記載したリストで、政府がUNESCO世界遺産センターに推薦したのち掲載が決まります。
世界遺産リストに推薦するためには、まずこのリストに候補物件を掲載しておく必要があります(緊急的登録推薦の例外あり)。
文化遺産は主に文化庁、自然遺産は主に環境省や林野庁が管轄しており、暫定リスト記載物件の選定などを行っているのですが、世界遺産リストに推薦する物件はこれらに外務省などが加わった世界遺産関係省庁連絡会議で決定されています。
なお、世界遺産リストへの推薦は各国年1件のみで、年1度の世界遺産委員会の審議上限は35件となっており、これを超えた場合は世界遺産登録数が多い国の推薦が翌年に持ち越されます。
○日本の暫定リスト記載物件(4件、拡大1件含)
※括弧内は遺産種別、都道府県名
「飛鳥・藤原の宮都」については2025年に推薦されており、2026年の世界遺産委員会で登録の可否が決まる予定です。
「彦根城」についてはプレリミナリー・アセスメントと呼ばれる事前評価制度が活用されており、最短で2026年に推薦され、2027年の世界遺産委員会で審議される可能性があります。
世界遺産を保有する県と保有しない県に分けると以下のようになります。
○世界遺産を有する28都道府県
※数は保有する世界遺産数
※「*」は暫定リスト記載の物件があるもの
○世界遺産を有しない19府県
※「*」は暫定リスト記載の物件があるもの
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次に「無形文化遺産」のリストです。
無形文化遺産は代表リスト、緊急保護リスト、グッド・プラクティスの3つのリストが存在し、日本の物件はいまのところすべて代表リストへの記載となっています。
なお、無形文化遺産のリスト登録がはじまるのは2008年以降で、それ以前の表記は「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」のもの。
厳密にはこれらのリスト登録年は2008年になります。
無形文化遺産の詳細は「UNESCO遺産事業リスト集2.無形文化遺産リスト」を参照してください。
○日本の無形文化遺産(代表リスト23件)
無形文化遺産の推薦は各国年1件に限られており、また年間の審査件数の上限が60件で、これを超えた場合は多くの遺産を持つ国の物件の審査が翌年に回されることになっています。
このため日本については実質的に2年に1件の審査に限られています。
今後ですが、日本は2025年の拡大を目指して「山・鉾・屋台行事」を推薦しており、2026年の登録を目指して「書道」を推薦する予定です。
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続いて「世界の記憶」です。
世界の記憶については2021年まで政府の推薦である必要がありませんでした。
たとえば日本の物件としてはじめて登録された2011年の「山本作兵衛コレクション」は福岡県田川市と福岡県立大学による推薦でした。
ただ、2021年の制度改革で、推薦は政府が行うことになっています。
また、事務処理が追いつかないということで、推薦は一度のIAC(国際諮問委員会)に対して各国2件までに制限されており、それ以上の推薦があった場合は各国のUNESCO国内委員会に差し戻されて2件に絞られます。
ただし、複数国での共同推薦に関してはこの枠に入れる必要がありません。
世界の記憶の詳細は「UNESCO遺産事業リスト集3.世界の記憶リスト」を参照のこと。
○日本の世界の記憶(9件)
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さらに、3件のUNESCO事業の日本のリストを一気に紹介しましょう。
「ユネスコエコパーク(生物圏保存地域/バイオスフィア・リザーブ)」は生物多様性が認められる、あるいは絶滅危惧種が生息・生育しているような保存すべき重要な地域を登録しています。
「ユネスコ世界ジオパーク」は重要な地形・地質学的遺産、「創造都市」は未来の都市のモデルとなりうる特色ある都市、「ユネスコ世界危機言語アトラス」は消滅の危機に瀕する言語や方言を示します。
これらの詳細はUNESCO遺産事業リスト集の「5.ユネスコエコパーク・リスト」「6.ユネスコ世界ジオパーク・リスト」「7.創造都市リスト」「8.ユネスコ世界危機言語アトラス・リスト」を参照してください。
○日本のユネスコエコパーク(10件)
○日本のユネスコ世界ジオパーク(10件)
○日本の創造都市(11件)
○ユネスコ世界危機言語アトラス 第3版(8件)
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文化庁は日本の地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産」として認定することを決め、2015年から認定を開始し、現在104件が認定されています。
世界文化遺産のように価値付けや保護が目的ではなく、地域に点在する遺産を「面」として活用・発信することで、地域のブランド化とアイデンティティの確立に貢献し、地域活性化を図ることを目的としています。
日本遺産の概要を文化庁の報道資料から抜粋しましょう。
○目的
地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産(Japan Heritage)」に認定するとともに、ストーリーを語る上で不可欠な魅力ある有形・無形の文化財群を地域が主体となって総合的に整備・活用し、国内外に戦略的に発信することにより、地域の活性化を図る。
○認定対象
○ストーリーのタイプ
○ストーリーの構成文化財
○認定申請の手続き
(1)申請者
(2)認定申請を行うに当たっての条件
(3)認定の可否
(4)認定基準
※ストーリーについては,以下の観点から総合的に判断する。
・興味深さ(人々が関心を持ったり惹きつけられたりする内容となっているか)
・斬新さ(あまり知られていなかった点や隠れた魅力を打ち出しているか)
・訴求力(専門的な知識がなくても理解しやすい内容となっているか)
・希少性(他の地域ではあまり見られない稀有な点があるか)
・地域性(地域特有の文化が現れているか)
・日本遺産という資源を活かした地域づくりについての将来像(ビジョン)と、実現に向けた具体的な方策が適切に示されていること
・ストーリーの国内外への戦略的・効果的な発信など、日本遺産を通じた地域活性化の推進が可能となる体制が整備されていること
日本遺産は100件程度を目標に認定を進め、2020年に104件となりました。
そして2024年度から取り組みの点数評価がはじまり、不十分な地域の認定を取り消し、候補地域を入れる入れ替えが開始されました。
これによりリストはおおよそ100件が維持される予定です。
2015年4月、日本遺産審査委員会の審議の結果、83件の申請の中から以下18件が初の日本遺産に認定されました。
○2015年認定の日本遺産(18件)
2016年4月には67件の申請があり、以下19件が認定されています。
○2016年認定の日本遺産(19件、累計37件)
2017年4月には79件の申請があり、17件が認定されました。
○2017年認定の日本遺産(17件、累計54件)
2018年4月には76件の申請があり、13件が認定されました。
○2018年認定の日本遺産(13件、累計67件)
2019年5月には72件の申請があり、16件が認定されました。
○2019年認定の日本遺産(16件、累計83件)
2020年6月には69件の申請があり、21件が認定されました。
○2020年認定の日本遺産(21件、累計104件)
2025年2月、「古代日本の「西の都」 ~東アジアとの交流拠点~(福岡県:太宰府市)」が取り消しとなり、以下1件が認定されました。
1件が入れ替わったため総数に変化はありません。
○2025年認定の日本遺産(1件、総数104件)