世界遺産NEWS 24/07/28:速報! 2024年新登録の世界遺産!!
インドのニューデリーにて7月21~31日の日程で開催されている第46回世界遺産委員会ですが、新登録物件の審議が終わったようなので新しい世界遺産を速報でお伝えします。
新登録の世界遺産は計24件で、文化遺産19件、自然遺産4件、複合遺産1件となっています。
これで世界遺産の総数は1,223件となり、文化遺産952件、自然遺産231件、複合遺産40件となりました。
日本の物件としては新たに「佐渡島の金山」が登録されています。
速報なので、万一追加や間違い等が確認された場合は都度修正します。
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毎年恒例の世界遺産委員会ですが、今年は7月21~31日の日程でインドのニューデリーにて第36回が開催されています。
世界遺産委員会の21委員国は以下となっています。
○世界遺産委員会構成国
議長国:インド
書記国:ベルギー
副議長国:ギリシア、ブルガリア、カタール、セントビンセント及びグレナディーン諸島、ケニア
委員国:イタリア、ウクライナ、トルコ、カザフスタン、韓国、日本、ベトナム、レバノン、ジャマイカ、メキシコ、アルゼンチン、ザンビア、セネガル、ルワンダ
本年の新登録の世界遺産は計24件で、文化遺産19件、自然遺産4件、複合遺産1件となっています。
これで世界遺産の総数は1,223件となり、文化遺産952件、自然遺産231件、複合遺産40件となりました。
日本の26件目の世界遺産として「佐渡島の金山」が登録されています。
また、世界遺産登録と同等の手続きが必要となる「重大な変更」については2件が承認されています。
2015年に登録されたデンマークの世界遺産「モラヴィア教会の入植地クリスチャンスフェルド」は、イギリス、ドイツ、アメリカの構成資産を加えてトランスナショナル・サイト(複数国に資産を有する物件)、「モラヴィア教会の入植地群」となりました。
また、2019年に登録された中国の「中国湾部の黄海=渤海沿岸の渡り鳥保護区群[フェイズ1]」は範囲を拡大して[フェイズ2]となっています。
危機遺産リストについては1件がリスト入りし、1件がリストから解除されました。
これで危機遺産は計56件となっています。
新たに危機遺産となったのはパレスチナの「聖ヒラリオン修道院/テル・ウンム・アメル」です。
ビザンツ帝国からイスラム王朝であるウマイヤ朝・アッバース朝期に栄えた都市遺跡ですが、イスラエルの攻撃が続いているガザ地区に位置しています。
現状、遺跡は大きな被害を受けていないものの、周辺では戦闘が確認されていることから、緊急的登録推薦(顕著な普遍的価値が明白で価値喪失危機に直面した暫定リスト記載物件を手順を短縮して緊急的に推薦すること)が行われ、世界遺産リストと同時に危機遺産リストへの緊急登録が決まりました。
危機遺産リストから解除されたのはセネガルの「ニオコロ=コバ国立公園」です。
ジャイアントイランドやライオン、ゾウ、ヒョウなど多彩な野生動物の生息地として知られますが、域内における密猟や牧畜・鉱山開発、それらに伴う環境汚染、外来種の流入などによって個体数が大幅に減少したことから2007年に危機遺産リストに登載されました。
しかし、セネガルが環境評価や開発計画の修正・汚染除去・外来種の駆除等に取り組み、保全状況が改善したことから解除が決定しました。
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日本の新世界遺産「佐渡島の金山」について、文化庁の報道資料から登録内容の概要を抜粋しましょう。
<「佐渡島の金山」について>
○名称
佐渡島の金山(さどのきんざん)
Sado Island Gold Mines
○概要
17世紀における世界最大の金生産地。
16~19世紀にかけて世界中の鉱山で機械化が進む中、伝統的手工業による生産技術とそれに適した生産体制を深化させ、鉱山の特性に応じて採掘した金生産システムを示す遺構。
○構成資産
- 西三川砂金山
- 相川鶴子金銀山:相川金銀山
- 相川鶴子金銀山:鶴子銀山
○顕著な普遍的価値:登録基準(iv)
「佐渡島の金山」は、世界の他の地域において採鉱等の機械化が進んだ時代に、高度な手工業による採鉱と製錬技術を継続したアジアにおける他に類を見ない事例である。
○勧告
締約国が以下の事項について配慮することを勧告する。
- a) 「相川鶴子金銀山」の緩衝地帯全域を重要文化的景観に選定し、保護措置を強化すること
- b) 事業規模ではなく、提案されている顕著な普遍的価値に対する潜在的影響に基づいた遺産影響評価の仕組みを、景観計画に組み込むこと
- c) 将来にわたって、考古学的調査が一貫した学術的見地から行われるよう、長期的な調査戦略を構築すること
- d) 地下遺構への影響が最小限となるよう、森林管理のガイドラインを策定すること
- e) 鉱業採掘が行われていたすべての時期を通じた推薦資産に関する全体の歴史を現場レベルで包括的に扱う説明・展示戦略を策定し、施設・設備等を整えること
- f) 収容力調査の実施及び来訪者管理戦略の策定を行い、観光客の増加が推薦資産に負の影響を与えないようにすること
- g) 包括的保存管理計画より前から運用されていた計画を見直し、それぞれの内容が、提案されている顕著な普遍的価値の長期的な保全と一貫しているか確認すること
- h) かつて採掘が行われたことが明らかになった区域について、将来、国の史跡として指定することを配慮すること
○今後のアクション
- 締約国に対し、イコモスの勧告に沿って、準備が整い次第、修正された資産の境界線と緩衝地帯を記した地図を提出するよう要請する
- また、第48回世界遺産委員会での審議のため、締約国に対し、2025年12月1日までに、上記勧告の実施に関する報告書を世界遺産センターに提出するよう要請する
世界遺産リストに推薦された物件は、文化遺産は主にICOMOS(イコモス=国際記念物遺跡会議)、自然遺産はIUCN(国際自然保護連合)、文化遺産の文化的景観や複合遺産の場合は両諮問機関が現地調査を含む専門調査を行います。
そしてICOMOSとIUCNは世界遺産委員会の6週間前までに4段階の勧告(登録・情報照会・登録延期・不登録)と提言で構成される評価報告書を作成して世界遺産センターに提出します。
「佐渡島の金山」は「情報照会勧告」の判定で、3点の主たる勧告と、8点の追加的勧告を受けていました。
日本はこれに対し、相川鶴子金銀山の相川上町北沢地区(下山之神町・坂下町・北沢町・弥十郎町)を資産範囲から除くなど、勧告内容を満たす形で修正して対応しました。
これが逆転登録につながる形となりました。
反発も伝えられた韓国ですが、直前に開催された外務省レベルの協議で登録への同意が示されました。
これにより世界遺産委員会では21委員国の全会一致で世界遺産リストへの登録が決定しました。
ただ、勧告eに朝鮮半島出身の労働者に関する説明も含まれると見られることから、今後も調整が必要となりそうです。
事前の勧告内容については下にリンクを張った「世界遺産NEWS 24/06/12:2024年の世界遺産候補地と勧告結果」を参照ください。
[関連記事]
世界遺産NEWS 24/06/12:2024年の世界遺産候補地と勧告結果
世界遺産NEWS 21/12/29:文化審議会「佐渡島の金山」を世界遺産推薦候補に選定、韓国は抗議
世界遺産NEWS 22/08/01:「佐渡島の金山」23年登録を断念、推薦書再提出へ
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それでは新登録の世界遺産をすべて紹介します。
掲載の順番は、文化遺産→自然遺産→複合遺産で、それぞれトランスナショナル・サイト/トランスバウンダリー・サイト(複数国に資産を有する物件)→ヨーロッパ→アジア→オセアニア→北アメリカ→南アメリカ→アフリカ、さらに国別五十音順→世界遺産名五十音順です。
また、これらの後に「重大な変更」、危機遺産リストの変更点も記載しています。
「軽微な変更」と名称変更については世界遺産委員会終了後に随時追記します。
日本語名は私が適当に訳したもので、正式な名称は英語の表記になります。
世界遺産英名の下に記載したのは所属国と登録基準です。
なお、登録勧告以外からの逆転登録についてはその旨を表記しました。
何も書かれていなければ登録勧告からの登録決定です。
○2024年新登録の世界遺産一覧表
<文化遺産19件>
■アッピア街道:レジーナ・ヴィアルム(街道の女王)
Via Appia. Regina Viarum
イタリア、文化遺産(iii)(iv)(vi)
■シュヴェリーンの邸宅群
Schwerin Residence Ensemble
ドイツ、文化遺産(iv)
■トゥルグ・ジウのブランクーシ記念作品群
Brâncuși Monumental Ensemble of Târgu Jiu
ルーマニア、文化遺産(i)(ii)
■ローマ帝国の国境線-ダキア
Frontiers of the Roman Empire - Dacia
ルーマニア、文化遺産(ii)(iii)(iv)
■ケノゼロ湖の文化的景観
Cultural Landscape of Kenozero Lake
ロシア、文化遺産(iii)
■ハグマターナ
Hegmataneh
イラン、文化遺産(ii)(iii)
※登録延期勧告からの逆転
■モイダム-アーホーム朝の墳墓システム
Moidams – the Mound-Burial System of the Ahom Dynasty
インド、文化遺産(iii)(iv)
■アル=ファーウ考古地域の文化的景観
The Cultural Landscape of Al-Faw Archaeological Area
サウジアラビア、文化遺産(ii)(v)
■プー・プラバート、ドヴァーラヴァティー時代のセーマ石の伝統表現
Phu Phrabat, a testimony to the Sīma stone tradition of the Dvaravati period
タイ、文化遺産(iii)(v)
■北京の中心軸:中国首都の理想的秩序を示す建造物群
Beijing Central Axis: A Building Ensemble Exhibiting the Ideal Order of the Chinese Capital
中国、文化遺産(iii)(vi)
■佐渡島の金山
Sado Island Gold Mines
日本、文化遺産(iv)
※情報照会勧告からの逆転
■聖ヒラリオン修道院/テル・ウンム・アメル
Saint Hilarion Monastery/ Tell Umm Amer
パレスチナ、文化遺産(ii)(iii)(vi)
※緊急的登録推薦による登録で、世界遺産リストと同時に危機遺産リストへ登載
■ニア国立公園の洞窟群の考古遺産
The Archaeological Heritage of Niah National Park’s Caves Complex
マレーシア、文化遺産(iii)(v)
■ウンム・アル=ジマール
Umm Al-Jimāl
ヨルダン、文化遺産(iii)
■メルカ・クントゥレとバルチト:エチオピア高原地域の考古学的・古生物学的遺跡群
Melka Kunture and Balchit: Archaeological and Palaeontological Sites in the Highland Area of Ethiopia
エチオピア、文化遺産(iii)(iv)(v)
※複合遺産として推薦されていましたが文化遺産として登録
■ゲディの歴史地区と考古遺跡
The Historic Town and Archaeological Site of Gedi
ケニア、文化遺産(ii)(iii)(iv)
■ティエベレの王宮
Royal Court of Tiébélé
ブルキナファソ、文化遺産(iii)
■現生人類行動の出現:南アフリカの更新世居住遺跡群
The Emergence of Modern Human Behaviour: The Pleistocene Occupation Sites of South Africa
南アフリカ、文化遺産(iii)(iv)(v)
※情報照会勧告からの逆転
■人権、解放及び和解:ネルソン・マンデラの遺産群
Human Rights, Liberation and Reconciliation: Nelson Mandela Legacy Sites
南アフリカ、文化遺産(vi)
※情報照会勧告からの逆転
<自然遺産4件>
■フロー・カントリー
The Flow Country
イギリス、自然遺産(ix)
■ラヴノのヴィエトレニツァ洞窟
Vjetrenica Cave, Ravno
ボスニア・ヘルツェゴビナ、自然遺産(x)
※情報照会勧告からの逆転
■バダイン・ジャラン砂漠-砂峰群と湖群
Badain Jaran Desert - Towers of Sand and Lakes
中国、自然遺産(vii)(viii)
■レンソイス・マラニャンセス国立公園
Lençóis Maranhenses National Park
ブラジル、自然遺産(vii)(viii)
<複合遺産1件>
■テ・ヘヌア・エナタ-マルキーズ諸島
Te Henua Enata – The Marquesas Islands
フランス、複合遺産(iii)(vi)(vii)(ix)(x)
<重大な変更2件>
■モラヴィア教会の入植地群
Moravian Church Settlements
イギリス/デンマーク/ドイツ/アメリカ共通、文化遺産(iii)(iv)
※世界遺産「モラヴィア教会の入植地クリスチャンスフェルド(デンマーク、2015年、文化遺産(iii)(iv))」のイギリス、ドイツ、アメリカへの範囲拡大
■中国湾部の黄海=渤海沿岸の渡り鳥保護区群[フェイズ2]
Migratory Bird Sanctuaries along the Coast of Yellow Sea-Bohai Gulf of China (Phase II)
中国、自然遺産(x)
※世界遺産「中国湾部の黄海=渤海沿岸の渡り鳥保護区群[フェイズ1](中国、2019年、自然遺産(x))」の範囲拡大
<軽微な変更>
後日追記。
<名称変更>
後日追記。
<危機遺産リスト入り1件>
■聖ヒラリオン修道院/テル・ウンム・アメル
Saint Hilarion Monastery/ Tell Umm Amer
パレスチナ、文化遺産(ii)(iii)(vi)
※緊急的登録推薦による登録で、世界遺産リストと同時に危機遺産リストへ登載
<危機遺産リストからの解除1件>
■ニオコロ=コバ国立公園
Niokolo-Koba National Park
セネガル、1981年、自然遺産(x)、2007年危機遺産リスト登録→2024年解除
なお、来年2025年の世界遺産候補地については下にリンクを張った「世界遺産NEWS 24/06/13:2025年の世界遺産候補地」を参照ください。
[関連記事&サイト]
46th session of the World Heritage Committee(UNESCO)
世界遺産NEWS 24/06/13:2025年の世界遺産候補地(来年の世界遺産候補地)
世界遺産NEWS 24/06/12:2024年の世界遺産候補地と勧告結果(事前の勧告結果)
世界遺産NEWS 23/09/21:速報! 2023年新登録の世界遺産!!(前年)
※いずれもさらに以前の関連記事へリンクあり