世界遺産NEWS 23/05/28:2023年新登録の世界の記憶

UNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)執行委員会は5月24日、「世界の記憶(ユネスコ記憶遺産/世界記録遺産)」として新たに64件の登録を承認したことを発表しました。

これで世界の記憶の総数は493件※となりました。

 

ルーマニア、キルギス、トルクメニスタン、ブルキナファソ、モーリシャスにはじめての世界の記憶が誕生しています。

日本の物件としては8件目となる「智証大師円珍関係文書典籍-日本・中国の文化交流史-」が登録されています。

 

登録作業は1997~2017年まで隔年で行われていましたが、制度改革によりその後の登録は中止されていました。

このため6年ぶりの新登録となります。

 

今回は新登録物件の全リストを紹介します

 

※総数について

  • UNESCO公式サイトでは494件としていますが、2017年時点の総数から加算しても、公式サイトのリストを一つひとつ数えても、493件になります
  • UNESCO公式サイトではこうした数字のブレがしばしば見られることもあり、本サイトでは493件で表記し、間違いが確認できれば随時修正します

 

 * * *

世界の記憶 "Memory of the World" は文書や石碑・地図・製図・絵画・音楽・口承・放送・映画・テープ・写真といったものに刻まれた「記録」の保存・保全・公開・普及を目指すUNESCOの活動です。

1992年に活動が開始され、翌年から隔年でIAC(国際諮問委員会)が開催されており、1997年から物件の選定がはじまりました。

2017年までに429件が選定されています。

 

しかし、近年は政治的な物件が急増し、大きな議論を巻き起こしました。

 

特に大きかったのが中国が推薦した「南京虐殺のドキュメント」と「大日本帝国軍の性奴隷『慰安婦』に関するアーカイブ」で、日本はUNESCOに反論書簡を送り、中国に話し合いを呼び掛けました。

前者については2015年に登録されましたが、登録は非公開で、内容の詳細は登録後でさえ明らかにされませんでした。

 

翌2016年には中国・韓国・日本・イギリス・インドネシア・オランダ・台湾・東ティモール・フィリピンの9か国15の市民団と博物館が慰安婦関係の資料2,744点を集めた「慰安婦の声」を推薦しました。

これに対して日本はUNESCO分担金の拠出を一時凍結して制度改革を要求しました。

 

これ以外にも、ユダヤ人虐殺、アルメニア人虐殺、ルワンダ虐殺、中国の文化大革命・大躍進政策、通州事件、慰安婦問題(慰安婦を人道的に扱ったとする側の資料)といった政治色の強い負の遺産の推薦活動が世界中で活発化しました。

UNESCOのオードレ・アズレ事務局長もこれを問題視し、2018年から登録を中止して世界の記憶の制度改革に着手しました。

 

そして2021年4月のUNESCO執行委員会で改革案が承認され、2023年に登録が再開されることになりました。

主な修正点は以下となっています。

 

  • 推薦は各国政府が行う(これまでは個人や組織でも可能でした)
  • 事務局は推薦された物件を各国に提示する
  • 政府は他国の推薦物件に対して90日以内に異議を申し立てることができる
  • 異議申し立てがなければIACが審査・勧告を行う
  • 異議申し立てがあった場合、事務局の仲裁で当事国が期限を設けず合意形成を行い、合意があったものについてIACが審査・勧告を行う
  • 最終的にUNESCO執行委員会がIACの勧告を承認する(これまではUNESCO事務局長が承認していました)

 

世界の記憶の詳細については最後にリンクを張った「UNESCO遺産事業リスト集3.世界の記憶リスト」を参照ください。

 

* * * 

三井寺とも呼ばれる滋賀県大津市の園城寺の潅頂堂(左)と三重塔(右)
三井寺とも呼ばれる滋賀県大津市の園城寺の潅頂堂(左)と三重塔(右)。「智証大師円珍関係文書典籍-日本・中国の文化交流史-」の推薦は所有する園城寺と東京国立博物館が主導しました

それでは2023年新登録の世界の記憶の全リストを掲載します。

以下、掲載順です。

  • 国際組織による推薦→複数国による共同推薦→ヨーロッパ→アジア→オセアニア→北アメリカ→南アメリカ→アフリカ
  • 6大州の下は国別五十音順、国の下は物件の五十音順
  •  トルコ、ロシアはヨーロッパ、イスラエルを含む西アジアとコーカサス地方、中央アジアの国々はすべてアジアへ

  

<2023年新登録の世界の記憶 64件>

 

<国際組織>

 

■IASA(国際音声視聴覚アーカイブ協会)

○1897~1914年のEMIアーカイブ・トラストのグラモフォンのディスクとペーパー

 The Gramophone Discs and Papers of the EMI Archive Trust, 1897-1914

 

■WFD(世界ろう連盟)

○ろう者コミュニティの主要文書:1880年ミラノ会議

 Key documents for Deaf communities: the Milan Congress, 1880

 

 

<複数国による共同推薦>

 

■イギリス/オーストリア/ドイツ/フランス/ルーマニア共通

○カール大帝の宮廷学校の装飾写本

 The illuminated manuscripts of Charlemagne’s Court School

 

■エストニア/デンマーク/ドイツ/ベルギー/ポーランド/ラトビア共通

○ハンザの歴史に関する文書

 Documents on the history of the Hanse

 

■スペイン/ポルトガル共通

○世界初周航[1519~22年]

 First Voyage of Circumnavigation (1519-1522)

 

■ドイツ/フランス共通

○クロード・ランズマン監督『ショア』の復元された35mmネガフィルム:ショアの歴史を記録した200時間の音声アーカイブ

 “Shoah”, by Claude Lanzmann, restored 35 mm negative; Audio Archive Witnesses to the History of Shoah, 200 hours

 

■フランス/ベルギー共通

○物理学および化学に関する国際ソルベー会議のアーカイブ[1910~62年]

 Archives of the International Solvay Conferences on Physics and Chemistry (1910-1962)

 

■オランダ/インドネシア共通

○ヒカヤット・アチェ-15~17世紀インドネシアにおけるアチェの生活に関する3写本

 The Hikayat Aceh – Three manuscripts on life in Aceh, Indonesia, in the 15th-17th century

 

■オランダ(キュラソー、シント・マールテン)/スリナム共通

○オランダ領カリブの奴隷化された人々とその子孫の文書遺産[1816~1969年]

 Documentary heritage of the enslaved people of the Dutch Caribbean and their descendants (1816-1969)

 

■セルビア/インド/インドネシア/アルジェリア/エジプト共通

○非同盟運動の第1回首脳会議のアーカイブ

 First Summit Meeting of the Non-Aligned Movement Archives

 

■ドイツ/トルコ/ブルガリア/イラン/ウズベキスタン/タジキスタン共通

○マウラーナーのクリヤト[マウラーナー全集]

 Mawlana’s Kulliyat (The Complete Works of Mawlana)

 

■フランス/ハイチ共通

○旧フランス植民地における奴隷化された人々を識別するための登録簿[1666~1880年]

 Registers identifying enslaved persons in the former French colonies (1666-1880)

 

■フランス/ブルキナファソ共通

○1957~92年のフランスとブルキナファソにおけるATDフォース・ワールドの国際運動のアーカイブ

 Archives of the International Movement ATD Fourth World in France and Burkina Faso, from 1957 to 1992

 

 

<ヨーロッパ>

 

■イタリア

○ヴァイオント・ダム災害の刑事手続

 Criminal Proceedings of the Vajont dam disaster

 

■イタリア

○旧ナポリ公立銀行のアポディサリー基金[1573~1809年]

 Apodissary fund of the ancient Neapolitan public banks (1573-1809)

 

■ウクライナ

○バビ・ヤールの文書遺産

 Documentary Heritage of Babyn Yar

 

■オランダ

○エラスムス・コレクション・ロッテルダム

 Erasmus Collection Rotterdam

 

■オランダ

○DDS:デ・ディヒターレ・スタット/ザ・デジタル・シティ

 DDS: De Digitale Stad / The Digital City

 

■ギリシア

○ドードーナの神託の鉛板

 The lead tablets of the Dodona Oracle

 

■クロアチア

○ドゥブロヴニク共和国のアーカイブ[1022~1808年]

 Archives of the Republic of Dubrovnik (1022-1808)

 

■スイス

○ハイジとヨハンナ・シュピリのアーカイブ

 Heidi-and Johanna Spyri Archives

 

■スウェーデン

○1766年のスウェーデン報道自由法:情報の自由な伝達を保証する世界初の法律

 The Swedish Freedom of the Press Ordinance of 1766: The world’s first legislation guaranteeing free communication of information

 

■スペイン

○シモン・ルイス・アーカイブ[メディナ・デル・カンポ、スペイン]

 Simón Ruiz Archive (Medina del Campo, Spain)

 

■スペイン

○1800~20年の天然痘ワクチンの王立慈善遠征隊

 Royal Philanthropic Expedition of the Smallpox Vaccine, 1800-1820

 

■チェコ

○アントニン・ドヴォルザークのアーカイブ

 Archives of Antonín Dvořák

 

■チェコ

○モールのコレクション

 Moll’s collection

 

■ドイツ

○ベハイムの地球儀

 Behaim Globe

 

■ドイツ

○マネッセ写本[ハイデルベルク大学図書館 Cod. Pal. germ. 848]

 Codex Manesse (Heidelberg University Library, Cod. Pal. germ. 848)

 

■トルコ

○キャーティプ・チェレビーのコレクション:チハンヌマとカシュフ・アル-ズヌン

 The Collection of Kâtip Çelebi: Cihânnümâ and Kashf al-Zunun

 

■トルコ

○ユルドゥズ宮殿写真コレクション

 Yildiz Palace Photography Collection

 

■フィンランド(オーランド諸島)

○グスタフ・エリクソン海運会社がオーランド諸島に持つ1913~49年の国際貿易における最後の帆船時代のアーカイブ

 Gustaf Erikson Shipping Company archives in the Åland Islands from the era of the last Windjammers in global trade 1913-1949

 

■フランス

○アンジェの黙示録タペストリー

 Apocalypse Tapestry of Angers

 

■フランス

○ボルドー・コピー:著者の注釈が入ったモンテーニュのエッセイ[1588~92年]

 Bordeaux Copy: Montaigne’s Essays annotated (1588-1592) by the author)

 

■ロシア

○フョードル・ドストエフスキー:手稿とノート

 Fyodor Dostoevsky: Handwritings and Notes

 

 

<アジア>

 

■アゼルバイジャン

○フールシードバーヌー・ナータヴァーンの『花の書』-イラスト入り詩アルバム

 "Flower Book" of Khurshidbanu Natavan – album of illustrated verses

 

■アルメニア

○作曲家コミタス・ヴァルダペットの作品集

 Collection of Works of the Composer Komitas Vardapet

 

■イラン

○ガージャール朝統治下のイラン国際関係文書[1807~1925年]

 Documents on Iran’s International Relations Under the Qajar Rule (1807-1925)

 

■イラン

○シェイフ・サフィー・アッディーン・アルダビーリー廟の文書[西暦952~1926年]

 Documents of the Shaykh Safī-al-Dīn Ardabīlī Shrine (952 to 1926 CE)

 

■インド

○アビナヴァグプタ[西暦940~1015年]:著書の写本コレクション

 Abhinavagupta (940-1015 CE): Collection of Manuscripts of his works

 

■インドネシア

○スカルノの演説:「新しい世界を築くために」1960年9月30日

 Sukarno’s Speech: ‘To Build the World Anew’ September 30, 1960

 

■ウズベキスタン

○ブハラ・ハン国のクシュベギ官邸

 The Qushbegi Chancellery of the Bukhara Emirate

 

■韓国

○東学農民革命のアーカイブ

 Archives of the Donghak Peasant Revolution

 

■韓国

○四・一九革命のアーカイブ

 Archives of the April 19 Revolution

 

■北朝鮮

○渾天全圖[天文図の完全イラスト]

 Hon Chon Jon Do (Complete illustration of the Astronomical Chart)

 

■キルギス

○講談師サギンバイ・オロズバコフによるキルギス叙事詩『マナス』手稿

 Manuscript of the Kyrgyz epic "Manas" by the narrator Sagymbay Orozbakov

 

■サウジアラビア

○岩に刻まれたアラビア年代記:ジャバル・イクマ

 Arabian Chronicles in Stone: Jabal Ikmah

 

■スリランカ

○マハーワンサ、スリランカ大年代記[紀元前6世紀~後1815年を網羅]

 Mahavamsa, the Great Chronicle of Sri Lanka (covering the period 6th century BCE to 1815 CE)

 

■タイ

○プラ・タート・パノム年代記のヤシの葉写本の国立コレクション

 National Collection of Palm-Leaf Manuscripts of Phra That Phanom Chronicle

 

■中国

○チベット四部医典

 The four treatises of Tibetan Medicine

 

■中国(マカオ)

○澳門功德林寺のアーカイブと写本[1645~1980年]

 Archives and Manuscripts of Macau Kong Tac Lam Temple (1645–1980)

 

■トルクメニスタン

○マグトゥムグリ・フラーギの写本コレクション

 Collection of Manuscripts of Magtymguly Fragi

 

■日本

○智証大師円珍関係文書典籍-日本・中国の文化交流史-

 The Monk Enchin Archives: A History of Japan-China Cultural Exchange

 

■マレーシア

○ミサ・ムラユ MSS 6

 Misa Melayu MSS 6

 

■モンゴル

○ハルハ王子ツォグ・クン-タイジの石碑文

 Stone Inscriptions of Tsogtu Khung-Taiji, Prince of Khalkha

 

 

<北アメリカ>

 

■カナダ

○子供たちは語る:カナダ寄宿学校を通じた先住民の子供たちの強制同化

 The Children Speak: Forced Assimilation of Indigenous Children through Canadian Residential Schools

 

■カナダ

○新世界の看護:心と献身の女性たるカナダのアウグスチノ会のシスターたち

Providing care in the New World: The Augustinian sisters of Canada, women of heart and commitment

 

■キューバ

○キューバ映画ポスター

 Cuban Movie Posters

 

■キューバ

○ハバナ市議会法[植民地時代1550~1898年]

 Acts of the Havana City council (colonial period 1550-1898)

 

 

<南アメリカ>

 

■ウルグアイ

○新聞『エル・ポプラール』の写真アーカイブ

 Photographic Archive of the newspaper “El popular”

 

■ブラジル

○フェミニズム、科学、政治-ベルタ・ルッツの遺産

 Feminism, science and politics - Bertha Lutz’s legacy

 

■ペルー

○クーレ・コレクションの30,693枚のガラス乾板ネガ[1864~1933年]

 30.693 glass plate negatives (1864-1933) from the Courret Collection

 

 

<アフリカ>

 

■チュニジア

○ロドルフ・デルランジェ男爵のアーカイブの音楽所蔵品[1910~1932年]

 The Music holdings in Baron Rodolphe d’Erlanger’s archives (1910-1932)

 

■モーリシャス

○モーリシャスの伝道者=福者ジャックス・デジレ・ラヴァルのアーカイブ・コレクション

 The archival collections on the Bienheureux Père Jacques Désiré Laval – The Apostle of Mauritius

 

■モーリシャス

○モーリシャスの奴隷貿易と奴隷制度の記録[1721~1892年]

 The Slave Trade and Slavery Records in Mauritius (1721-1892)

 

 

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2.「正しい-間違い」とは何か?

3.証明とは何か?

4.わかる・理解するとは何か?

5.力とは何か? 波とは何か?

6.物質とは何か?

7.見る・感じるとは何か?

8.空間とは何か?

9.時間とは何か?

10.物質と時間を超えて

以下続く。

 

<哲学的考察:ウソだ!>

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.ことだま-はじめに言葉ありき

10.物質とは何か?

11.神とは何か?-一神教と多神教

 

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.王様のワイン トカイ

.命の水 テキーラ

.ポルトガルの宝石 ポート

.神の贈り物チョコレート

 

<世界遺産で学ぶ世界史>

01.宇宙と地球の誕生

02.大陸の形成

03.地形の形成

04.生命の誕生

05.生命の進化

06.人類の夜明け

07.文明の誕生

08.エジプト文明

09.インダス文明

10.中国文明

以下続く。

 

<世界遺産で学ぶ世界の建築>

01.建築の種類1:城と宮殿

02.建築の種類2:宗教建築

03.建築の種類3:メガリス

04.木造建築の基礎知識

05.石造建築の基礎知識

06.ギリシア建築

07.ローマ建築

08.ビザンツ/ビザンチン建築

09.ロマネスク建築

10.ゴシック建築

以下続く。

 

<世界遺産写真館>

1.文化交差路サマルカンド1

2.文化交差路サマルカンド2

3.アッパー・スヴァネティ

4.グラナダのアルハンブラ宮殿1

5.グラナダのアルハンブラ宮殿2

6.コトル

7.プレア・ヴィヒア寺院

8.福建の土楼1

9.福建の土楼2

10.フォンニャ=ケバン国立公園1

以下続く。

 

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4.試験戦略の理念

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