世界遺産NEWS 21/11/05:中国でジャイアントパンダ国家公園が成立、個体数も大幅に回復中
この10月、中国の四川省林業草原局は四川省におけるジャイアントパンダの個体数を1,935頭と発表しました。
また、国家林業草原局は世界における個体数を2,537頭としています。
ジャイアントパンダの個体数は1970年代に約1,000頭とされていましたから、半世紀で2.5倍に増えたことになります。
これを受けて10月に発表された中国の生物多様性保護白書ではジャイアントパンダの絶滅危険度を絶滅危惧種から1段軽い危急種に変更しています。
また、10月12日には国家公園制度が正式に導入され、そのひとつとして四川省・陝西省・甘粛省の3省にまたがるジャイアントパンダ国家公園が成立しました。
これにより数十か所に分散されていた保護区の一部が統合されました。
■Latest data: Sichuan's giant pandas reached 1,935(iNEWS)
今回はこのニュースをお伝えします。
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UNESCO+NHKによる世界遺産「四川ジャイアントパンダ保護区群」の紹介映像
ジャイアントパンダは中国の象徴とされている動物ですが、象徴となったのは近年の話で、トラやツルのような動物と違って古い書物でそのように扱われた形跡はありません。
19世紀後半から欧米人が白と黒の珍しいクマの狩猟をはじめ、20世紀はじめには動物園などに輸出されたりその皮が高額で取引されるようになりました。
1970年代の調査では、ジャイアントパンダの個体数は約1,000頭とされています。
1980年代後半に中国はジャイアントパンダの商品価値に気づき、レンタル・ビジネスを開始します。
そして1990年までに30を超える保護区を設定し、生息域の60%が保護されるようになりました。
1983年には中国パンダ保護研究センターが創設されました。
そして成都や都江堰、卧龍、碧峰峡などにジャイアントパンダ繁殖研究基地を設立し、野生のジャイアントパンダを保護しながらその生態や個体数・繁殖方法の研究を進めました。
一例が1987年に開設された成都基地で、同年に6頭の野生のジャイアントパンダを保護したことをきっかけに人工繁殖を研究してこれまでに200頭近い子パンダの誕生を成功させています。
また、卧龍の核桃坪基地では野生復帰の研究が進められており、2020年までに11頭が野生に戻されています。
ジャイアントパンダは主に四川省・陝西省・甘粛省に生息していますが、この中で最大生息数を誇る四川省の自然保護区7か所と風景名勝区9か所を網羅する形で2006年に「四川ジャイアントパンダ保護区群」が世界遺産リストに搭載されました。
これ以外にも世界遺産「九寨溝の渓谷の景観と歴史地域」「黄龍の景観と歴史地域」「青城山と都江堰灌漑施設」でもジャイアントパンダが生息しており、保護が進められています。
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さて、今回のニュースです。
この10月、中国の四川省林業草原局は四川省におけるジャイアントパンダの個体数を1,935頭と発表しました。
このうち野生の個体が1,387頭、繁殖研究基地などの施設にいる個体が548頭ということです。
また、国家林業草原局は世界のジャイアントパンダの総数を2,537頭とし、野生の個体数を1,864頭、飼育されている個体数を673頭としています。
四川省には76.2%、野生の個体に限れば74.4%が集中していることになります。
そして10月に発表された中国の生物多様性保護白書ではジャイアントパンダの絶滅危険度を絶滅危惧種から危急種に変更しています。
世界ではIUCN(国際自然保護連合)がレッドリストを公開しており、ジャイアントパンダは2016年にすでに絶滅危惧種から危急種に分類しなおされています。
レッドリスト上では野生の成体の個体数を500~1,000頭と明記していますから、この推定をかなり上回っていることになります。
なお、IUCNでは危険度が高い順に「絶滅>野生絶滅>絶滅寸前種>絶滅危惧種>危急種>その他低リスク分類」に分けています。
また、10月12日には中国に国家公園制度が正式に導入され、そのひとつとして四川省・陝西省・甘粛省の3省にまたがるジャイアントパンダ国家公園が成立しました。
中国には60を超えるジャイアントパンダの保護区が存在しますが、この中で12の自然保護区、2つの森林公園、2つの風景名勝区、3つの省有林、16の国有林を統合した27,134平方kmが範囲となっており、面積的には74.1%が四川省に属しています(数字や名称は報道によって少し異なっています)。
保護区間あるいは省間の断絶や四川省外の生息地の保護が問題となっていましたが、これによってある程度解消されることが期待されています。
また、世界遺産の構成資産である臥龍自然保護区なども含まれていることから、構成資産の範囲や編成も変わることになるかもしれません。
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