世界遺産NEWS 20/10/08：サッカーラのピラミッド地帯で古代の棺59基を発見

2020年９月、エジプトの世界遺産「メンフィスとその墓地遺跡－ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」に含まれているサッカーラで2,500年以上前のものと思われるきわめて状態のよい27基の棺が発見されました。

８月以降の２か月で発見された棺は計59基に及んでおり、同地ではこの100年で最大級の発見との声も挙がっています。

■Trove of 27 Sealed Sarcophagi Unearthed in Egypt（Smithsonian Magazine）

今回はこのニュースをお伝えします。

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世界遺産「メンフィスとその墓地遺跡－ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯」はその名の通りギザからダハシュールまで約25kmにわたって伸びるピラミッド地帯を登録した世界遺産です（メンフィスにもうひとつ構成資産がありますが）。

その中間付近に広がっているのがサッカーラ高原で、この地は古代エジプトを切り拓いた第１王朝の時代（紀元前31～前27世紀前後）からプトレマイオス朝やローマ帝国などギリシア・ローマ系が支配したグレコ＝ローマン期（紀元前４～後７世紀）まで3,600年以上にわたって死者の町＝ネクロポリスとしてありつづけました。

ピラミッド発祥の地でもあり、マスタバと呼ばれる直方体の墳墓を少しずつ小さくして重ねることでエジプト初のピラミッドであるジェゼル王の階段ピラミッドがデザインされたと考えられています。

サッカーラには少なくとも11のピラミッドが点在しており、数百の埋葬遺跡があることが知られています。

未知の遺跡も多いと推定されることから前回紹介したハイウェイの建設は問題があると考えられているわけです。

そのサッカーラで８月から古代エジプト末期の第26王朝時代、紀元前664～前525年頃のものと推定される墳墓群の発掘が進められています。

９月下旬の発表によると、ジェゼル王の階段ピラミッドの近くにある深さ約11mの竪穴式の墳墓で９月はじめに13基の木棺が発見され、中旬には別の墳墓で14基の石棺が見つかりました。

27基の棺はいずれも2,500年以上前のもので、埋葬以来開けられた形跡がなく、無傷で発掘されています。

盗掘されていない手つかずの墳墓は珍しく、しかもわずか１～２週間で27基もの棺が見つかったということで、サッカーラにおけるこの１世紀で最大級の発見との声も挙がっています。

そのうちのひとつは報道陣の目の前で開封され、大きな歓声を集めました。

一部の棺の表面には極彩色で神々の姿やヒエログリフ（古代エジプトの象形文字）が描かれていました。

一般的に、石棺は木棺より身分の高い司祭や貴族が用いるもので、布に包まれたミイラが金や銀のフェイス・マスクなどで飾られていることもあったりします。

木棺はより身分の低い人々の棺で、さらに身分が低い者は棺を用いず亜麻布でミイラを包んでそのまま埋葬していました。

今回は墳墓によって石棺と木棺が分かれていたようですが、同じ墳墓に入れる場合はもっとも身分の高い人の石棺を冥界に近い深部に置き、身分が低い人の棺は地表に近い部分に収めていたようです。

また、これらの棺とともに創造神プタハソカルや睡蓮の神ネフェルトゥムといった神々の彫像やライオンやワニ、ヘビ、ハヤブサなどの動物のミイラも出土しています。

ハリド・アナニ観光・考古相は周辺の墳墓でも数多くの棺が発見される可能性が高く、「これは発見の終わりではない。大発見のはじまりだと考えている」と述べています。

今回発見された棺は2021年にギザのピラミッド近くにオープンする大エジプト博物館で公開される予定です。

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