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世界遺産NEWS 20/04/15：ハイチのミロ大聖堂のドームが火災で倒壊
４月13日午前２時頃、ハイチの世界遺産「国立歴史公園－シタデル、サン・スーシ、ラミエ」のサン・スーシ宮殿の麓にあるミロ大聖堂が燃え、直径30mの木造ドームが焼失・倒壊しました。
THE HAITIAN TIMESの記事に写真が掲載されていますが、ドームが完全に崩れ落ちています。
■The Fire In Historic Church Of Milot Is A Disaster For Haiti（THE HAITIAN TIMES）
■Concern after fire at Milot Church, Haiti（UNESCO）
これに対してUNESCO（ユネスコ＝国際連合教育科学文化機関）は即座に懸念を表明しています。
今回はこのニュースをお伝えします。
＊ ＊ ＊
1804年にジャン＝ジャック・デサリーヌらの指導の下でハイチ革命が起こり、中南米で初となる独立国家であり、黒人が主体となるはじめての共和国であるハイチ共和国が誕生します。
まもなくハイチ帝国となりますが、1806年に将軍アンリ・クリストフがクーデターを起こして政権を奪取し、エスパニョーラ島の北部を制圧。
1811年にハイチ王国を建て、アンリ１世として王位に就きます。
アンリ１世は強大な旧宗主国フランスに対抗するために強力なシタデル（城塞）を築き、フランス・パリ郊外のヴェルサイユ宮殿を模してサン・スーシ宮殿を建設しました。
このシタデルとサン・スーシ宮殿を登録したのがハイチの世界遺産「国立歴史公園－シタデル、サン・スーシ、ラミエ」です。
アンリ１世がサン・スーシ宮殿に隣接して王室礼拝堂として建設したのが聖母無原罪の御宿教会、通称・ミロ大聖堂です。
木造ではありましたが直径30mにもなる大ドームは中南米でもあまり見られないもので、人々を大いに驚かせました。
この教会は1842年の地震で倒壊しましたが、ハイチの歴史の記憶を再興することを目的に1934年に再建されています。
現地時間４月13日午前２時頃、ミロ大聖堂から出火し、石造である外壁部分を残してほぼ焼失しました。
２時少し前に連絡を受けたデリンス・エクサルス司祭が到着したときには屋根が燃えており、住民が必死に消火活動を行っていました。
消防隊が到着したのは１時間近く後の３時頃で、屋根は燃え落ちてしまったということです。
火災の原因は調査中ですが、新型コロナウイルスの影響で大聖堂は閉鎖されており、電気も止まっていたため漏電などの可能性も考えられないということで、いまのところまったく不明です。
ISPAN（ハイチ国立遺産保護研究所）のパトリック・デュランディス氏は、今後も多くの調査が必要であり、また世界遺産であることを考えると復元は建設当時のものと同一である必要があるが、資金面で問題を抱えているためこちらも多大な作業が必要になると思われる、と応えています。
UNESCOは翌日、懸念を表明し、ISPANと協力して被害状況を確認し、新型コロナウイルスの影響も加味しつつ世界遺産の顕著な普遍的価値を守るための解決策を共に検討したいとしています。
＊ ＊ ＊
新型コロナウイルスで疲弊している中で残念なニュースです。
しかしながらこの大聖堂はハイチ共和国が独立したあと築かれた最初の建造物群のひとつです。
宗主国フランスは奴隷制を復活させ、それに反発して独立運動が活発化したのですが、結果的に中南米のどこよりも早く独立を勝ち取った不屈の精神が宿る遺産です。
そんな遺産ですから、遠からずきっと再建されるものと信じています。
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『朝日新聞 世界の扉』記事執筆。『Fine』自然遺産特集執筆。『地球の歩き方 MOOK 世界のビーチBEST100』『ノジュール』に旅のスペシャリスト・達人として参加。『PEN』でアフリカの世界遺産執筆。『MONOQLO』世界遺産特集取材協力。『女性セブン』で日本の世界遺産を解説。エクスナレッジ『聖地建築巡礼 世界遺産から現代建築まで、73の聖地を巡る旅』、洋泉社ムック『負の世界遺産』執筆。RKBラジオ、FM TOKYOで世界遺産特集出演。その他企業・大学広報誌等。
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