世界遺産NEWS 18/03/26:ニュージーランドのアンティポデス島でネズミ根絶宣言
前回の記事では奄美大島と徳之島のノネコ対策をお伝えしました。
今回はそれにも関連するということで、3月下旬にネズミの根絶を宣言したニュージーランドの世界遺産「ニュージーランドの亜南極諸島」のアンティポデス島のニュースをお伝えします。
■Antipodes Islands finally declared mice-free(NZ Herald。英語)
ニュージーランドやオーストラリアでは現在、さまざまな島でネズミやネコのような外来捕食動物の根絶計画が進んでいます。
この辺りの活動も紹介します。
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「ニュージーランドの亜南極諸島」はキャンベル島、アンティポデス諸島、オークランド諸島、スネアーズ諸島、バウンティ諸島からなるニュージーランドの世界遺産です。
南極と亜熱帯地方を結ぶエリアに点在し、海鳥やペンギンなど固有種や絶滅危惧種を含む多彩な鳥類が生息することで知られています。
この世界遺産はそうした希有な生態系が評価されたわけですが、アンティポデス諸島の主島であるアンティポデス島では以前から生態系の破壊が懸念されていました。
主因はネズミです。
もともとこの島はニュージーランドの南島の南東760kmほどに位置する6.5×4.8km、2,100haほどの無人島なのですが、19~20世紀にかけて付近で何艘もの難破船が沈没し、遭難者がこの島で救援を待っていました。
その際、船に巣くっていたネズミも島に渡ってしまったようです。
島にはオットセイなど海洋性の哺乳動物は生息していましたが、天敵となりうるネコなどの陸生の哺乳動物は存在しませんでした。
そのためネズミは一気に繁殖し、アホウドリやウミツバメ、トキペンギンといった鳥類の卵や雛を襲い、その動物相に多大な影響を与えました。
2016年時点でその数は約20万匹と見積もられています。
実は、同様のネズミ被害はオーストラリアやニュージーランドの多くの島々で起きています。
もっともネズミの密度が高いと言われていたのが同じ世界遺産のキャンベル島です。
この島ではネズミだけでなく、ウシやヒツジといった家畜による動植物相の破壊が問題になっていましたが、1970年代から家畜の根絶計画が進められ、2001年からは殺鼠剤を島中にまいて駆除を行いました。
その結果、2005年に根絶を宣言しています。
この成功はネズミ根絶計画のモデルケースとなり、アルゼンチンのフォークランド諸島やアメリカのアラスカなどで同様の試みが行われ、世界遺産ではエクアドルの「ガラパゴス諸島」やオーストラリアの「マッコーリー島」「ロード・ハウ諸島」の島々でも実施されています。
ニュージーランドではこうした根絶システムが輸出産業に成長しています。
2014年、ニュージーランド政府はアンティポデス島のネズミ根絶を決定し、資金を募る "Million Dollar Mouse"(百万ドル・ネズミ)プロジェクトを始動させます。
そして2016年にヘリコプターを利用して約65tの殺鼠剤を島の全域に空中散布しました。
上の動画はその時の様子です。
散布後はイヌや罠を使ってネズミの捕獲を試みましたが、2018年2月の調査でも存在の痕跡が見つからなかったことから今回の根絶宣言となりました。
ニュージーランドでは同様の方法で2014年にグレートマーキュリー島からネコ、モツタプ諸島からネズミやネコなどを根絶しており、一部から「世界でもっとも洗練された害獣撲滅プロジェクトのひとつ」と評価されています。
しかしながら毒での根絶には抵抗も多く、将来的な生態系に対するダメージを懸念して反対する学者や住民も少なくないようです。
ただ、たとえばマッコーリー島では毒によってネズミ以外の動物が想像以上に死んでしまったようですが、ネズミの被害と比較すれば十分許容範囲内ということで、一般的には成功と評価されています。
ロード・ハウ島ではネズミが固有種である鳥類5種と昆虫13種を絶滅に追い込んだといいますから、ネズミの被害がそれほど大きいということなのでしょう。
ニュージーランド政府は "the Predator Free 2050 initiative"(捕食動物根絶2050イニシアチブ)というプロジェクトを進めており、21世紀半ばまでにネズミやネコのような捕食性の外来種をニュージーランドから一掃する計画です。
すでに主だった220の島のうち、100以上の島で害獣駆除に成功しているということです。
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日本人は「毒」と聞くとかなり抵抗が大きいようですね。
ある掲示板でこの記事が紹介されていましたが、将来的に毒が溶け出すことに対する懸念や、倫理的に受け付けないという人も少なくないようでした。
ネズミについては、ヨーロッパの人々は長い間、ペスト(黒死病)と戦ってきた歴史もあるのかもしれません。
人口の1/4~1/3を失うほどの被害をペストは何度ももたらしていますから(ペスト菌の宿主がネズミで、ノミを介して広がります)。
生物の生命にかかわる問題ですから、さまざまなことを考えさせられます。
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