世界遺産NEWS 17/01/19:2018年世界遺産登録を目指し2件の推薦書提出へ
1月19日、外務省で世界遺産条約関係省庁連絡会議が開催され、2018年の第42回世界遺産委員会における世界遺産リストへの登録を目指して下記2件を推薦することを決定しました。
- 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(熊本県、長崎県)
- 奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(沖縄県、鹿児島県)
明日にも閣議了解されたのち、2月1日までに推薦書をUNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)の世界遺産センターに提出する予定です。
[追記]
1月20日、閣議了解されました。
* * *

両候補ともこれまで何度か記事にしてきましたが、少しだけ紹介しておきましょう。
まずは「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」です。
こちらは2015年に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の名前で推薦されていましたが、文化遺産候補地の調査・評価を行っているICOMOS(イコモス=国際記念物遺跡会議)の提言もあって2016年2月に推薦を取り下げた物件です。
昨年6月に文化庁が禁教・潜伏にテーマを絞って再度の推薦を決め、9月には暫定推薦書も提出しています。
そのため構成資産は14件から12件に減り、現状では下記となっています。
■「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」構成資産
- 原城跡(長崎県南島原市)
- 平戸の聖地と集落[春日集落と安満岳](長崎県平戸市)
- 平戸の聖地と集落[中江ノ島](長崎県平戸市)
- 天草の﨑津集落(熊本県天草市)
- 外海の出津集落(長崎県長崎市)
- 外海の大野集落(長崎県長崎市)
- 黒島の集落(長崎県佐世保市)
- 野崎島の集落跡(長崎県北松浦郡小値賀町)
- 頭ヶ島の集落(長崎県南松浦郡新上五島町)
- 久賀島の集落(長崎県五島市)
- 奈留島の江上集落[江上天主堂とその周辺](長崎県五島市)
- 大浦天主堂(長崎県長崎市)
昨年10月には構成資産の外海(そとめ)の出津(しつ)集落で潜伏キリシタンの埋葬遺体が発見されて話題になりました。
禁教・潜伏期の埋葬を知らせる貴重な遺産として、こちらもさっそく推薦書に反映されるということです。
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もう1件の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」。
こちらは昨年暫定リストに記載された物件で、それ以前は「奄美・琉球」の名前で世界遺産登録を目指していたものです。
環境省は自然遺産への登録を目指してこれらの地域の国立公園化を目指しており、2016年9月に沖縄本島の北部をやんばる国立公園に指定。
奄美大島と徳之島の国定公園については今春にも国立公園化が決まる見込みです。
西表島はすでに西表石垣国立公園が成立していますので、構成資産はこの3つの国立公園が中心になるものと思われます。
■「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」関係する国立公園
- 奄美大島:奄美群島国立公園(仮。鹿児島県奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町)
- 徳之島:奄美群島国立公園(仮。鹿児島県徳之島町、天城町、伊仙町)
- 沖縄島北部:やんばる国立公園(沖縄県国頭村、大宜味村、東村)
- 西表島:西表石垣国立公園(沖縄県竹富町)
さまざまな懸念を呼んでいたやんばる国立公園に近い米軍北部訓練場については昨年末に日本への返還が決定しました。
今後日本政府が不発弾の処理や土壌洗浄を行ったうえで地権者に返還されるようです。
菅官房長官はこの周辺についても資産に含める意向を示しています。
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今後の予定は以下のようになっています。
■今後のスケジュール
- 2017年
2月1日まで:推薦書をUNESCO世界遺産センターへ提出
夏:文化遺産をICOMOS、自然遺産をIUCNが現地調査
冬:ICOMOSと日本で意見交換
- 2018年
1~2月:ICOMOSが中間報告を伝達
4~5月:ICOMOS、IUCNが評価報告書を世界遺産センターへ提出(勧告等を発表)
6~7月:第42回世界遺産委員会で世界遺産リストへの登録可否が決定
それにしても今回は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の推薦が急ピッチで決まりましたね。
一般的には9月の世界遺産条約関係省庁連絡会議で翌年の推薦物件が決まるはずなので少々驚きでした。
2020年の世界遺産委員会から各国年1件の審議に限られます。
文化遺産の候補地は目白押しですから、それまでにということで急いだのでしょうか?
いずれにせよ2件同時推薦はこれが最後になるかもしれませんね。
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