世界遺産NEWS 16/09/22:国立代々木競技場の世界遺産推進団体発足

9月21日、東京渋谷にある国立代々木競技場を世界遺産リストに登録するための推進団体が発足しました。

運動を主導するのは槇文彦氏や藤森照信氏ら世界的な建築家を中心とする35名。

1964年の東京オリンピックのために建設された競技場ですが、ふたたび会場となる2020年の東京オリンピックまでに世界遺産登録を目指すということです。

 

まずはそのユニークな構造をCGでご覧ください。

設計は、巨匠・丹下健三。

「建築界のノーベル賞」と言われるプリツカー賞の受賞者で、日本国内だけでも東京都庁舎や新宿パークタワー、東京ドームホテル、東京カテドラル聖マリア大聖堂 、横浜美術館、WHO神戸センター、香川県庁舎、倉敷市立美術館等々、みなさんもきっと目にしたことのある建物が数多く挙げられます。

 

世界遺産に関係するところだと、インドの「仏陀の生誕地ルンビニ」の聖地公園、「日光の社寺」の日光東照宮客殿・新社務所、「広島平和記念碑[原爆ドーム]」周辺の広島平和記念資料館や原爆死没者慰霊碑などの設計を行っており、「ル・コルビュジエの建築作品 - 近代建築運動への顕著な貢献」のル・コルビュジエに大きく影響を受けたことでも知られています。

 

1964年竣工の国立代々木競技場は代表作のひとつで、特にユニークなことで知られています。

動画を見てわかるように、第一体育館には内部に柱が存在しません。

高さ40mの2本の主柱をワイヤーロープでつなぎ、そこから屋根を吊り下げる吊り橋のような構造をしています。

この吊り屋根によって曲線美溢れる滑らかな外観と広く開放的な内観を実現しているのです。

貝殻のような外観の第二体育館も1本の主柱かららせん状にパイプを組むことで、やはり柱のない空間を作り上げています。

国立代々木競技場はこれら第一体育館・第二体育館からなるわけですが、それ以外にも数々の美術作品で知られています。

 

特に有名なのが第一体育館ロビーの岡本太郎の作品群です。

オリンピックにちなんで人体をテーマとした「走る」「競う」「眼」「手」「足」といった壁画が信楽焼の陶片を用いて制作されています。

スペインの「アントニ・ガウディの作品群」に見られる破砕タイルのようですね。

他に水井康雄や志水晴児の作品群も展示されています。

 

また、隣接する「神宮の森」も特筆すべきものでしょう。

こちらは明治神宮の鎮守の杜ですが、20世紀はじめに完全なる人工林ながら永遠に続く持続可能な森を目指して造成されたものです。

科学的に土壌を分析して適する樹木と数を割り出し、動植物が生息しやすい環境を整え、宗教的にも「神の森」となりうるデザイン・空気が考慮されています。

 

そして1964年の東京オリンピックにおいて、第一体育館では競泳と飛び込み、第二体育館ではバスケットボールが競われました。

国立代々木競技場は関係者に高く評価され、丹下健三はIOC(国際オリンピック委員会)から特別功労者として表彰されています。

今回発足した推進団体は槇文彦氏や隈研吾氏、安藤忠雄氏、藤森照信氏、伊東豊雄氏といった名だたる建築家を中心とした35名で構成されています。

国立代々木競技場に足を踏み入れて建築家になることを志したという隈氏は、20世紀では他に例がないほどデザイン的・工学的にすぐれた作品であるとし、槇氏は海外の建築家からしばしば「なぜ丹下氏の作品を世界遺産に推薦しないのか?」と問われるのだそう。

その真価を知る建築家が中心となって世界遺産リストへの登録を目指すようです。

 

目標は、東京オリンピックが開催される2020年までの登録。

しかしながら、スケジュールはかなりタイトです。

 

2020年に登録されるためには2019年2月1日までに推薦書を提出する必要がありますが、文化遺産については原則各国年1件しか推薦できないので、前年の2018年7月に開催される文化庁の文化審議会や9月の世界遺産条約関係省庁連絡会議で国内の推薦枠を勝ち取らなければなりません。

さらに、推薦枠を勝ち取る前に日本の世界遺産「暫定リスト」に掲載されていなければならず、そのためには文化庁とUNESCO(ユネスコ=国際連合教育科学文化機関)世界遺産センターの承認が必要です。

また、国内法で守られている必要があるので重要文化財の指定も受けなければなりません。

 

うーん、厳しいですね。

 

今年の世界遺産委員会で「ル・コルビュジエの建築作品 - 近代建築運動への顕著な貢献」が登録されましたが3度目の推薦で、選んだ物件が適切なのか、近代建築運動はコルビュジエひとりの成果なのかといった指摘を受けるなど、顕著な普遍的価値の証明に苦労しました。

また、コルビュジエと並んで近代建築の四大巨匠のひとりに数えられるフランク・ロイド・ライトの「フランク・ロイド・ライトによる近代建築の主要作品」も今年推薦されていましたが登録に失敗しています。

 

ちなみに、四大巨匠のヴァルター・グロピウスは「ワイマールとデッサウのバウハウスとその関連遺産群」のバウハウス・デッサウ校や「アルフェルトのファグス工場」、ミース・ファンデル・ローエは「ブルノのトゥーゲントハート邸」が世界遺産に登録されています。

 

ただ、国立代々木競技場については推進団体にプリツカー賞受賞者も多く顔をそろえているということで、価値の証明をどのように行うのか非常に興味深いです。

また今回は触れられていないようですが、明治神宮や神宮の森の推薦の可能性なども気になるところです。

 

この物件も今後、要注目ですね!

 

 

[関連サイト]

代々木競技場 | JAPAN SPORT COUNCIL(公式サイト)

 


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