世界遺産NEWS 16/07/09：ベツレヘムの聖誕教会でモザイク画を発見

聖母マリアが救世主イエスを処女のままに生んだと伝えられる場所に立つベツレヘムの聖誕教会。

2013年より続いている修復作業の過程で漆喰の下に隠されたモザイク画が発見され、このほど公開されました。

■Restoration Work Reveals Hidden Angel Mosaic in Bethlehem's Church of the Nativity

「イエス生誕の地：ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路」は2012年に世界遺産になりましたが、パレスチナとイスラエルの抗争や分離壁問題、キリスト教諸教派による合意形成の未達、これらを背景として進まない修復、梁の劣化や漏水などによる崩壊の危機などからパレスチナによって緊急的登録推薦※がなされ、世界遺産リストに登録されると同時に危機遺産リストに記載されました。

※緊急に保護が必要であることから、暫定リストへの記載や諮問機関による１年半にわたる調査といった正規の手続きを踏まない形で推薦を行うこと

そして2013年には聖誕教会史上最大規模の修復がスタートし、1,000万ドル以上を費やした修復作業がいまも続けられています。

今回の発見は、聖誕教会の内壁を赤外線サーモグラフィで調査していたところ、白く見えるだけの漆喰の内部に温度が異なる特殊な形を発見したことにはじまります。

そして漆喰を丁寧に取り除くと、黄金の翼と天使の輪を持つ高さ2.4mに達する天使像がほぼ完全な形で姿を現しました。

モザイクとは、石やガラス・貝殻・陶磁器の破片などを貼り付けて描く美術手法のこと。

今回のモザイク画にもこれらの素材が使われていたほか、ガラスの下に金や銀を敷き詰めて神々しい光輝を再現していました。

そして石やガラスといった素材の違いが温度差を生み出し、赤外線サーモフラフィで検出されたというわけです。

モザイク画は色彩の劣化がないことから「永遠の絵画」と呼ばれていますが、一方で石やガラスが剥落してしまうことがよくあります。

漆喰で塗り固めることによってこうしたこともなく良好に保たれていたようです。

聖誕教会は４世紀にローマ皇帝コンスタンティヌス１世が建設し、６世紀にビザンツ皇帝ユスティニアヌス１世が再建した教会堂をベースに、時代時代に修復されてきました。

今回のモザイク画は12世紀に十字軍がエルサレム周辺を征服した際に、ビザンツ皇帝マヌエル１世コムネノスが制作を命じたものと考えられています。

当時は全長2,000mにわたる壮大なモザイク画で埋め尽くされていたようですが、現在は150mほどが残されているのみとなっています。

世界遺産NEWSでもこれまでに下記のような発見情報を掲載しています。

赤外線サーモグラフィや衛星画像等々の最新技術によって、今後も新たな発見が期待できそうです。

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