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世界遺産NEWS 15/11/19：タージマハル近郊の火葬場に移転命令
世界でもっとも美しい人工建造物のひとつ、タージマハル。
均整のとれた純白の姿で知られていますが、あのすべてが白大理石なんです。
私は基壇に立ったときにとても驚きました。
タージマハルの内部は土足禁止なのですが、その日は日差しがとても強く、赤砂岩でできた靴脱ぎ場は熱せられてたいへんな高温になっていました。
足の裏が焼けるように熱くてつま先立ちでピョンピョン跳んで中に入ろうとしたのですが、白大理石製の基壇に入ると日に照らされているのにヒンヤリ。
透けるような白が陽光を反射しているのでしょう。
タージマハルはその全体がそれほど純度の高い宝石なのです。
その白大理石なのですが、主成分は炭酸カルシウムで酸にとても弱いことで知られています。
工場の排出ガスや車の排気ガスなどで酸性雨が降ると溶かされてしまうということで、世界中の都市部で問題になっています。
タージマハルも例外ではありません。
この遺跡は赤砂岩を大理石で覆っているのですが、一部は溶けて赤砂岩が露出してしまった部分もあるということです。
そしてまた、大気汚染によって白大理石の黄化が目立つようになりました。
原因は大気中の浮遊粒子で、一時は政府の大気汚染基準の３倍に達したということです。
2008年、2014年にはインドの伝統医療アーユル・ヴェーダの泥パック「ムルタニ・ミッティ」をタージマハルに施し、黄ばみの除去を行っています。
BBCによると17日、インド最高裁はウッタル・プラデーシュ州に対し、タージマハル近郊にある火葬場の移転を命じたということです。
火葬場ではヒンドゥー教の伝統にのっとって薪をくべて火葬を行っていましたが、このとき排出されるガスによって大気が汚染され、タージマハルの白大理石を傷める原因のひとつになっていました。
もしかしたらなんらかの燃料も使われていたのかもしれませんね。
これに対して最高裁は火葬場の移転と同時に、現在の場所に薪や石油燃料をほとんど使わない電気炉を備えた火葬場の建設を促しています。
こうすることで、ヒンドゥー教の伝統にこだわる人は移転先で火葬を行い、そうでない人は電気炉を使用するという使い分けが可能になります。
インドやネパールでは火葬で使う大量の薪によって森林伐採が進んでいるので、電気炉の導入はそうした意味からも推進すべきなのでしょう。
実は今年はじめ州政府はタージマハル周辺で、インドで広く使用されている牛糞燃料の使用を禁止しています。
これまでには近郊の工場を閉鎖させたり、タージマハルに電気自動車を導入したりして大気汚染対策を進めています。
インドの町＝汚いというイメージができあがってしまっていますが、遺跡保存を通して環境意識が確実に高まっているようです。
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『朝日新聞 世界の扉』記事執筆。『Fine』自然遺産特集執筆。『地球の歩き方 MOOK 世界のビーチBEST100』『ノジュール』に旅のスペシャリスト・達人として参加。『PEN』でアフリカの世界遺産執筆。『MONOQLO』世界遺産特集取材協力。『女性セブン』で日本の世界遺産を解説。エクスナレッジ『聖地建築巡礼 世界遺産から現代建築まで、73の聖地を巡る旅』、洋泉社ムック『負の世界遺産』執筆。RKBラジオ、FM TOKYOで世界遺産特集出演。その他企業・大学広報誌等。
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