世界遺産NEWS 15/09/24:2017年「世界の記憶」日本の推薦物件決定
UNESCO(国際連合教育科学文化機関)の国内委員会は9月24日、2017年のIAC(国際諮問委員会)で「世界の記憶(世界記録遺産/ユネスコ記憶遺産/世界記憶遺産)」登録を目指す2件を選出したことを発表しました。
選ばれた2件は以下となっています。
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上野三碑
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杉原リスト -1940年、杉原千畝が避難民救済のため人道主義・博愛精神に基づき大量発給した日本通過ビザ発給の記録
世界の記憶は国際条約が存在せず、条約締結国もありません。
そのため従来は国からの推薦である必要はないとされていました。
ところが推薦される物件数が急増したため、2013年には推薦物件の処理が追いつかないという事態に陥りました。
そのため2年に一度開催されるIACに推薦できる物件数は各国2件までに制限され、それ以上が立候補した場合には国内委員会が希少性や完全性などを考慮して事前に選考を行うことになりました(複数国による共同推薦物件は含まない)。
2017年に登録を目指す物件については3月2日~6月19日のあいだで公募していましたが、下記16件の申請がありました(五十音順。括弧内は申請者)。
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伊能忠敬測量記録・地図(千葉県香取市)
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黄檗版大蔵経版木群(京都府宇治市、宗教法人萬福寺)
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菊陽町図書館少女雑誌村﨑コレクション(熊本県菊陽町図書館)
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上野三碑(上野三碑世界記憶遺産登録推進協議会)
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国宝 紙本著色北野天神縁起 八巻 附 紙本墨画同縁起下絵 一巻、梅樹蒔絵箱 一合(北野天満宮)
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重要文化財 徳川家康関係資料 洋時計[革箱付](宗教法人久能山東照宮)
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信長公記(建勲神社、織田裕美子)
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杉原リスト -1940年、杉原千畝が避難民救済のため人道主義・博愛精神に基づき大量発給した日本通過ビザ発給の記録(岐阜県八百津町)
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全国水平社創立宣言と関係資料(崇仁自治連合会、公益財団法人奈良人権文化財団)
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智証大師円珍と唐代の過所(宗教法人園城寺)
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知覧に残された戦争の記憶 -1945年沖縄戦に関する特攻関係資料群-(鹿児島県南九州市)
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東慶寺文書(宗教法人東慶寺)
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広島の被爆作家による原爆文学資料
-栗原貞子「あけくれの歌[創作ノート]」、原民喜「原爆被災時の手帖」、峠三吉「原爆詩集[最終稿]」-(広島文学資料保全の会、広島県広島市)
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普勧坐禅儀[付 普勧坐禅儀撰述由来](大本山永平寺)
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水戸徳川家旧蔵 キリシタン関係史料(公益財団法人徳川ミュージアム)
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水戸徳川家旧蔵『大日本史』編纂史料(公益財団法人徳川ミュージアム)
この中から2件で、しかも次の選考は2年後。
世界の記憶もずいぶんハードルが高くなりました。
推薦物件については簡単に概要と選定理由を記しておきましょう。
概要は文化庁の報道資料「選定物件概要」、選定理由は文部科学省の公式Webサイトからの抜粋です。
<上野三碑(こうずけさんぴ)>
■申請者
上野三碑世界記憶遺産登録推進協議会
■概要
古代から近世まで上野国(こうずけのくに)と呼ばれた群馬県地域の南西部に、近接して所在する山上(やまのうえ)碑(681年)・多胡(たご)碑(711年頃)・金井沢(かないざわ)碑(726年)の三つの古代石碑。昭和29年にそれぞれ特別史跡に指定。
■評価ポイント
- 短い碑文の中に、古代における家族、社会制度、宗教など、多くの情報が含まれているとともに、当時我が国に流入していた書体が用いられるなど、東アジアにおける文化の受容状況を示すものとして、世界的な重要性が説明されている。
- 直径3kmの狭い地域に集中する三つの石碑が、地域の人々によって大切に守られ、保存状態が極めて良好である。
- すでに公開が実施されているほか、ウェブ上で関連情報が掲載されるとともに、外国語による紹介等の作業が進められていることが示されている。
<杉原リスト-1940年、杉原千畝(ちうね)が避難民救済のため人道主義・博愛精神に基づき大量発給した日本通過ビザ発給の記録>
■申請者
岐阜県八百津町
■概要
リトアニア国在カウナス日本領事館の領事代理であった杉原千畝が、1940年7月から9月にかけて、主としてユダヤ系ポーランド避難民のために大量発給した日本通過ビザ発給の記録。外務省公電、パスポートなど。
■評価ポイント
- 当時の状況を示す外交公電や、避難民の数を示すビザ発給リスト、心情を綴った自筆手記など、記録媒体の多様性が評価できる。
- 記録媒体の多様性を踏まえ、多角的な観点から、杉原氏が果たした人道的な業績について、世界的な重要性が説明されている。
- 申請に際して、関係資料を所有する利害関係者と適切に調整がなされており、更なる関係資料の収集に向けた作業が進められていることが示されている。
- すでに常設展示による公開が実施されているほか、ウェブ上で一部公開していることが示されている。
今後ですが、2016年3月までに各申請者がUNESCOに申請書を提出し、2017年頃IACによる審査を受け、登録の可否が決まります。
なお、来月10月4~6日にはUAEのアブダビで第12回IACが開催されます。
ここで世界の記憶を目指す87件について審議が行われますが、日本からは以下2件の物件が推薦されています。
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東寺百合文書
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舞鶴への生還 -1945~1956シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録-
日本関連では中国が以下を申請しており、その結果も注目されています。
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大日本帝国軍の性奴隷「慰安婦」に関するアーカイブ
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南京虐殺のドキュメント
新登録物件が出揃ったらリストを紹介します。
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