内閣官房は４日、今年の６月28日～７月８日にドイツのボンで開催される第39回世界遺産委員会で世界遺産登録の可否が決定する「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」について、事前調査を行っているICOMOS（イコモス＝国際記念物遺跡会議）が「登録」勧告を行ったことを発表しました。

世界遺産の登録を目指す物件は、その前年からUNESCO（ユネスコ＝国際連合教育科学文化機関）の諮問機関による専門的な調査を受けなければなりません。

文化遺産についてはICOMOS、自然遺産についてはIUCN（自然保護連合）、複合遺産については両者がその役割を担っています。

そして各諮問機関は下のような４段階の勧告とその理由からなる報告書を作成し、これを参考にして世界遺産委員会が最終決定を下します。

世界遺産委員会でも同じ４段階の評価を下すのですが、もし４の不登録が決定した場合、再推薦さえ認められなくなるということです。

1. 登録：世界遺産リストへの登録にふさわしい
2. 情報照会：不足情報を追加したのち再審査が可能
3. 登録延期：物件の構成やコンセプトを再考し推薦書の提出からやり直し
4. 不登録：登録には不適で再推薦も不可

諮問機関が専門家集団であるのに対して、世界遺産委員会は21の委員国の代表によって構成された外交的な集団にすぎません。

そのため諮問機関の勧告が世界遺産委員会の大きな判断材料となっています。

今回のICOMOSの勧告では、非西洋国家として世界初となる産業革命で、幕末からわずか50年で成し遂げた奇跡的な産業化が高く評価されたようです。

23もの構成資産のすべてがその価値を認められており、富士山のときの三保松原のように一部の除外勧告はありませんでした。

８県11市にまたがるシリアル・ノミネーション（広い地域の資産を同じテーマで一括登録するもの）なので、関係者は安堵したことでしょう。

おめでとうございます！

ただし、その名称については「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」への変更を求めています。

ただ、判定が覆ることもあって、たとえば2007年に世界遺産登録された「石見銀山遺跡とその文化的景観」は「情報照会」からの逆転で、2013年の「富士山－信仰の対象と芸術の源泉」では三保松原（みほのまつばら）が構成資産からの削除を求められていましたが、こちらも逆転登録に成功しました。

いずれも現地でのロビー活動が奏功したと伝えられています。

もっとも、下のレベルの勧告からの逆転は多々ありますが、登録勧告からの落選はほとんど例がありません。

そのため世界遺産登録に向けて大きく前進したということができるでしょう。

登録に成功した場合、日本の19番目の世界遺産（15番目の世界文化遺産）となります。

ただし、今回懸念されているのはこの物件の登録に反対を表明している韓国の存在です。

韓国の報道によると、構成資産となっている軍艦島や長崎造船所をはじめとする７つの施設は朝鮮人５万7,900人が強制動員された悲しみの場所であり、世界遺産条約の基本精神に反すると主張しています。

世界遺産登録を阻止するためロビー活動を強化すると宣言しており、同じ４日には外交統一委員会が「侵略の歴史を美化する日本の方針を糾弾する」とした内容の決議案を採択しています。

これに対して日本政府は、強制動員は第二次世界大戦時の話であり、明治維新とは関係がないとしています。

個人的に、この見解はどうだろうと疑問を持っています。

今回の世界遺産候補には稼働中の工場が含まれていますが、当然第二次大戦時も稼働していました。

その大戦中にどうだったか、が問題であるはずです。

朝鮮の方々が働いていたのは物証等から間違いのない事実です。

この辺りを詰める必要があるのではないでしょうか？

韓国は世界遺産委員会の委員国でもあったりします。

下に第39回世界遺産員会の21の委員国を列挙しておきましょう。

この2/3以上、つまり14か国以上の賛成をもって登録が可決されます。

ただし、棄権国が出た場合はその国を除いて2/3以上ということになります。

韓国は７票以上を獲得するか、棄権国を募ってそれ以外で三分の一を取りに行くことになりそうです。

■第39回世界遺産員会委員国

アルジェリア、コロンビア、クロアチア、フィンランド、ドイツ、インド、ジャマイカ、日本、カザフスタン、レバノン、マレーシア、ペルー、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、カタール、韓国、セネガル、セビリア、トルコ、ベトナム

今後、日本と韓国の間で票の綱引きが行われることになるのでしょう。

個人的にはそうしたロビー活動よりも、事前に話し合って事実関係の確認を行ってもらいたいのですが、韓国は昨年から同様の主張を続けており、少々難しいのかもしれません。

場合によっては今年の世界遺産委員会はかなり荒れるかもしれませんね。

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