世界遺産検定攻略法10.マイスター試験の問1・問2対策
前回は世界遺産検定のマイスター試験についてその概要を紹介しました。
今回はマイスター試験の得点プランと、対策が比較的容易な問1・問2の学習法を紹介します。
○本記事の章立て
- マイスター試験の得点プラン
- マイスター試験、問1対策
- マイスター試験、問2対策
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■マイスター試験の得点プラン
受検戦略を駆使して得点プランを立てていきましょう。
まずは前回紹介した試験概要より、認定基準を抜粋します。
○マイスター試験の認定基準と配点
- 認定基準:20点満点中12点以上、かつ問1・問2で6点以上、問3で6点以上
- 配点:非公開(推定で、問1+問2で計10点、問3が10点)
「問1・問2で6点以上、問3で6点以上」とありますが、これ、とてもよい配点だと思います。
後述しますが、問1・問2は対策を練るのが比較的容易です。
ところが問3はいくら準備してもごまかしのできない問題で、知識と思考力を地道につけていく他ありません。
問1・問2の対策を通して世界遺産の学習を進展させ、問3でそうした知識をベースに自分の考え方を展開させる――
そんな出題者の意図が見えますね。
受検戦略の視点で見ると、問1・問2で高得点を取っても問3の得点のカバーはできず、その逆もできないことを意味しています。
つまり、問1+問2、問3のそれぞれで6点以上、おそらく60%以上を取るしかないということです。
したがって得点プランは以下のようになります。
○マイスター試験の得点プラン
- 問1+問2で計6点以上、問3で6点以上を目指す(すべての問で60%以上の得点率を目指す)
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■マイスター試験、問1対策
問1・問2の対策は比較的簡単です。
まず、前回も紹介した世界遺産検定公式サイトの「例題と対策:マイスター」の「○○年○月の試験の講評および学習方法はこちら」からリンクされているPDF「第○回世界遺産検定 マイスター試験講評および学習方法」をできるだけたくさん手に入れてください。
- 【マイスター】概要と例題・対策(世界遺産検定公式サイト)
サイト上には直近2年4回分の講評しかリンクされていませんが、ぼくは検索して10回分ほどを手に入れました。
過去問を並べると出題傾向がよくわかると思います。
問1について、問題はこのようになっています。
- 問1:次の語句を簡潔に説明しなさい
1.○○○
2.○○○
3.○○○
そして1~3の語句をそれぞれ50字以内ほどで解答していきます。
解答用紙には線が引かれているだけなので、その上に書いていく形になります。
この問1に対して、ぼくは以下のような対策を立てました。
○マイスター試験、問1対策
- 『すべてがわかる世界遺産大事典』上巻(現在の『すべてがわかる世界遺産1500』上巻』)の「世界遺産の基礎知識」、コラム、一部その他の資料から重要語句を選出し、それぞれ50字以内で模範解答を作る
- 模範解答を何回も読み直し、随時修正する
- 検定の1か月前からは、実際に書いて解答してみる
実際にぼくが模範解答を作ったのは以下94の語句です。
新たに『すべてがわかる世界遺産1500』が出版されて必要語句が増えているので、ここに追加してみてください。
- 顕著な普遍的価値/Outstanding Universal Value
- 世界遺産リスト
- 世界遺産条約履行のための作業指針
- 世界遺産条約締約国会議
- 世界遺産委員会
- 4段階の決議
- 登録決議
- 情報照会決議
- 登録延期決議
- 不登録決議
- ビューロー会議/世界遺産ビューロー
- 世界遺産センター/世界遺産委員会事務局
- 世界遺産基金
- 世界遺産基金の援助の種類
- 世界遺産委員会諮問機関
- ICCROM/イクロム/文化財の保存及び修復の研究のための国際センター/ローマセンター
- ICOMOS/イコモス/国際記念物遺跡会議
- IUCN/国際自然保護連合
- UNESCO/ユネスコ/国際連合教育科学文化機関
- ユネスコ国内委員会
- 文化遺産
- 自然遺産
- 複合遺産
- 危機遺産
- 危機遺産リスト
- 緊急的登録推薦
- 負の遺産
- 登録基準
- 登録基準(i)
- 登録基準(ii)
- 登録基準(iii)
- 登録基準(iv)
- 登録基準(v)
- 登録基準(vi)
- 登録基準(vii)
- 登録基準(viii)
- 登録基準(ix)
- 登録基準(x)
- 真正性/真実性
- 真正性における奈良会議
- 奈良文書
- 完全性
- 代表性
- 文化的景観
- 文化的景観:意匠された景観
- 文化的景観:有機的に進化する景観
- 文化的景観:関連する景観
- グローバル・ストラテジー/世界遺産リストにおける不均衡の是正及び代表性、信用性確保のためのグローバル・ストラテジー
- シリアル・サイト/シリアル・ノミネーション・サイト
- トランスバウンダリー・サイト
- MAB計画/人間と生物圏計画
- 生物圏保存地域/ユネスコエコパーク
- 資産/プロパティ
- バッファー・ゾーン/緩衝地帯
- ユネスコエコパークの核心地域/コア・エリア
- ユネスコエコパークのバッファー・ゾーン/緩衝地帯
- ユネスコエコパークのトランジション・エリア/移行地帯
- ユネスコ世界ジオパーク
- 世界遺産に関するブダペスト宣言
- 5つのC
- アテネ憲章
- ヴェネツィア憲章
- 1954年ハーグ条約/武力紛争の際の文化財の保護に関する条約
- 公的又は私的の工事によって危機にさらされる文化財の保存に関する勧告
- 文化財の不法な輸入、輸出及び所有権譲渡の禁止並びに防止の手段に関する条約/文化財不法輸出入等禁止条約
- 国連人間環境会議
- 人間環境宣言/ストックホルム宣言
- ウィーン・メモランダム
- 歴史的都市景観の保護に関する宣言
- 京都ビジョン
- 世界遺産におけるボン宣言
- 世界遺産条約履行に関する戦略的行動計画(2012-2022)
- 登録推薦書
- 専門調査
- 評価報告書
- 定期報告
- リアクティブ・モニタリング
- 保存管理計画
- 暫定リスト
- 世界保全戦略
- アジェンダ21
- 産業遺産
- TICCIH/ティッキ/国際産業遺産保存委員会
- ニジニータギル憲章
- レッドリスト
- 絶滅危惧種
- 無形文化遺産
- 世界の記憶
- ラムサール条約/特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約
- 生物多様性条約/生物の多様性に関する条約
- 文化多様性条約/文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約
- 水中文化遺産保護条約
上にはありませんが、「アップストリーム・プロセス」「プレリミナリー・アセスメント」「記憶の場」など、世界遺産のトレンドにはつねにアンテナを延ばしておきましょう。
本サイトの以下の記事でも役に立ちそうな情報を解説しています。
- 世界遺産NEWS 23/11/03:世界遺産の「負の遺産」「記憶の場」とは何か?
- 世界遺産NEWS 23/02/02:導入迫る世界遺産のプレリミナリー・アセスメントとアップストリーム・プロセスの概要
- 世界遺産NEWS 16/08/07:公海・深海に広がる世界遺産条約の挑戦
- 世界遺産NEWS 24/04/01:オーバーツーリズムによるテーマパーク化に揺れる世界遺産
- 世界遺産NEWS 24/06/28:諮問機関は世界遺産候補地になぜ「不登録」を勧告するのか? ~不登録勧告と逆転登録の概要~
模範解答を作成する際は特に以下に気をつけました。
- 「講評」に書かれている総評・短評に沿った解答を心掛ける
- 過去に出題されている語句については講評の内容を反映させる
- 必要なら複数の模範解答を作る
- たまに「世界遺産の基礎知識」を読み返して解答をブラッシュアップする
- 満点は目指さない
たとえば2015年7月に「文化的景観」が出題されていますが、同じ問題がぼくが受検した2017年7月の問題に出ています。
そして2015年の講評には、「文化的景観では、文化的景観が取り入れられたことで文化遺産を柔軟に捉えることが可能となった点などを書いていた受検者はほとんどなく、表面的な説明に終始していた」とあります。
これを意識して解答を書いたか否かで得点は違うはずです。
ただ、ぼくは満点を目指してはいませんでした。
60%より多くの得点は無意味ですし(問2のカバーができるという意味では無意味ではないのですが)、満点を目指して大きな失点をしたくなかったからです。
問1の問題にはこうあります。
「次の語句を簡潔に説明しなさい」。
ですから、「簡潔に」答えなければ満点を取ることはできませんし、ぼくの得点を見るに簡潔でないことに対する減点は少なくないと思われます。
でも、ぼくの戦略は「簡潔」を捨てて、「確実に6点・60%以上を狙いに行くこと」でした。
与えられた50文字のギリギリまで、できるだけたくさんの情報を入れて、重要な情報を入れ忘れて大きな失点を犯すミスを防ごうと考えました。
というのは、先の「文化的景観」の解答にしても、ぼく個人としては「たった50文字の中に、柔軟に捉えられるようになったことを書く必要なんてあるのだろうか?」と疑問に思っていました。
文化的景観についていくつか模範解答を書いたのですが、そのことに触れない方がぼくにはベターに思えました。
こういうのって意外とあるんですよね。
たとえば、世界遺産検定の教科書にあるシリアル・ノミネーション・サイトやトランスバウンダリー・サイトの解説はある理由からあまりよろしくないと考えています。
世界遺産の用語というのはだいたい世界遺産条約とか世界遺産条約履行のための作業指針なんかの言葉を流用しているわけですが、いずれでも「シリアル・ノミネーション・サイト」という言葉は使われていませんし、「トランスバウンダリー・サイト」は少し違う意味で使われています(シリアル・ノミネーション・サイトはその後、シリアル・サイトに修正されています)。
本サイトでは世界遺産条約や作業指針の使い方に合わせています。
しかし、試験では当然、出題者の基準に合わせて解答しなくてはなりません。
ですからぼくはなるべく多くの情報を盛り込んで、小さな失点を許容する代わりに大失敗を避ける戦略を選びました。
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■マイスター試験、問2対策
次に問2です。
こちらも過去の講評をなるべくたくさん手に入れて、過去問から傾向をつかんでください。
問題は以下のようになっています。
- 問2:世界遺産条約について、次の語句をすべて使って、400字以内で説明しなさい。なお、解答中の次の語句の使用箇所には下線を引きなさい
○○○ ○○○ ○○○ ○○○
400字以内という文字制限の中で4つの語句をうまく配置して全体で世界遺産条約を説明する問題です。
問1のようにそれぞれの語句を説明するだけでなく、全体を結びつけて1つの解答に仕上げなければなりません。
4語句の組み合わせは毎回違いますが、その多くは過去問に登場しています。
ですからぼくの問2対策は単純で、問1と同様、「過去問の模範解答を作る」というものでした。
○マイスター試験、問2対策
- 過去問の模範解答を作る
- 模範解答を何度も読み直し、随時修正する
- たまに「世界遺産の基礎知識」を読み返して解答を再考する
- 検定の1か月前からは、実際に書いて解答してみる
実際に出題される4語句は過去に例のない組み合わせになると思いますが、過去問をたくさん解いておけば、解答のその語句の部分を抜き出して並べ替えるだけで対応できます。
新しい語句が登場した場合でも、その語句は問1で作った模範解答に含まれている可能性が高いので、それを当てはめて再構成すれば問題ありません。
意外と「たまに『世界遺産の基礎知識』を読み返して解答をブラッシュアップする」ことが大切です。
問1の模範解答は50字以内で書かれていますが、問2ではその項目について50字以上の情報を入れる必要が出てくる可能性があります。
たとえば問1で「文化的景観」が出題された場合、50字以内の模範解答を書けば終わりです。
しかし、問2で4語句のひとつとして「文化的景観」が出てきた場合、50字以上の情報を入れる必要があるかもしれませんし、他の3語句との関係で別の解説を追加する必要があるかもしれません。
ですから問1に出てくる用語についても50字以上の知識を学んでおく必要があるのです。
そういう意味で検定資料を読み返すだけでなく、新たな知識を得るためにアンテナを伸ばしておくことが大切です。
問2でも、目標にしたのは満点ではなく6点・60%以上です。
ですから言い回しをなるべく短くし、漢字を多用して文字数を減らし、その分、情報を詰め込むようにしました。
なお、問2と問3については与えられた文字数の8割以上書かれていないと減点対象になるので、この点については注意が必要です。
また、問2では4語句の下に下線を引く必要があるので忘れないようにしましょう。
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以上がぼくの問1・問2対策です。
次回は世界遺産検定マイスター試験の山場である問3対策を紹介します。
[関連サイト]
世界遺産検定(公式サイト)
世界遺産NEWS 23/02/02:導入迫る世界遺産のプレリミナリー・アセスメントとアップストリーム・プロセスの概要