世界遺産検定攻略法5.世界遺産検定の受検戦略
前回の記事では、試験戦略の狙いや頭がいい人の思考法・学習法について解説しました。
攻略法第5回では、試験戦略を世界遺産検定1級に応用して、実際に受検戦略を練ってみたいと思います。
○本記事の章立て
- 世界遺産検定の受検戦略1:削れる学習量を算出する
- 世界遺産検定の受検戦略2:教材の配点比率を分析する
- 世界遺産検定の受検戦略3:学習プランを算出する
* * *
■世界遺産検定の受検戦略1:削れる学習量を算出する
第3回でも書きましたが、もう一度、世界遺産検定1級の得点プランを練っていきましょう。
○世界遺産検定1級の認定基準と配点率
- 認定基準:200点満点中140点以上(得点率で70%以上)
- 配点比率:基礎知識25%、日本の遺産20%、世界の遺産45%、その他10%
※140点以上の得点者が全体の20%に満たないときは認定基準を下げて20%以上に調整
※基礎知識は1級検定教材『すべてがわかる世界遺産1500』の「世界遺産の基礎知識」、日本の遺産は「日本の世界遺産」、世界の遺産は「アジア・アフリカ・アメリカ・ヨーロッパ・オセアニアの世界遺産」を示し、その他は教材に載っていない時事問題等を表す
まず、1級の問題の中には2級までの知識で解答できたり、TVや雑誌で見て知っている問題や、選択肢を2つや3つに絞れる問題もあるでしょう。
これらを総合して10問に1問、10%は正解できるものとしましょう。
さらに、配点の「その他10%」ですが、時事問題は比較的攻略が容易です。
これでさらに10%確保です(攻略法は「攻略法8.時事問題・世界史・検定講座の攻略」を参照)。
そして、問題はいずれも四者択一のマークシート方式ですから、デタラメで解答しても25%の正解が期待できます。
既存の知識で解ける問題と時事問題を除いた残り80%の問題のうち25%が正解できると考えて、80%×25%=20%が確保できました。
以上より、既存の知識+時事問題+デタラメで80点・40%が確保できました。
認定基準が140点・70%なので、残りはたった60点・30%分ということになります。
つまり、教材の70%はカットしてしまってよいことになります(正確にはもう少し計算は複雑ですが、目安としてはよいでしょう)。
2~4級のデータも出しておきましょう。
2~4級の認定基準はいずれも100点満点中60点以上、得点率で60%以上です。
2級の場合は、既存の知識10%+時事問題10%+デタラメ20%=40%で、残りは20%分です(2級から受検する人は時事問題10%+デタラメ90%×25%=22.5%となって残り27.5%分)。
3級は、既存の知識10%+時事問題5%+デタラメ21.25%となり、36.25%の確保で残りは23.75%分です(4級未認定者は残り31.25%分)。
4級は既知の知識と時事問題を0として、デタラメで確保できる25%のみとなり、残り35%分です。
まとめると、1~4級いずれも、あとたった20~35%分の勉強をすればよいことがわかります。
○必要な学習量
- 1級:残り30%分
- 2級:残り20%または27.5%分
- 3級:残り23.75%または31.25%分
- 4級:残り35%分
20~35%分を確保すればよいということは、教材の65~80%の内容は捨ててしまってもよいということになります。
したがって、「教材のどの部分を削り、学習をどこに絞るのか」が受検戦略のポイントになるわけです。
* * *
■世界遺産検定の受検戦略2:教材の配点比率を分析する
1級検定教材『すべてがわかる世界遺産1500』3巻は目次やコラム等も含めると約1,400ページというボリュームです。
この中で、特に力を入れて勉強すべき場所、あるいは削るべき場所はあるのでしょうか?
まずはその内容を確認してみましょう。
○各章のページ数とページ割合(コラムを除く)
- 世界遺産の基礎知識:95ページ、8%
- 日本の世界遺産:197ページ、16%
- アジアの世界遺産:223ページ、18%
- アフリカの世界遺産:101ページ、8%
- アメリカの世界遺産:140ページ、11%
- ヨーロッパの世界遺産:430ページ、35%
- オセアニアの世界遺産:36ページ、3%
そして配点比率は、「基礎知識25%、日本の遺産20%、世界の遺産45%、その他10%」となっています。
それぞれの配点比率、配点、ページ数、1点あたりのページ数、1ページあたりの配点を並べてみましょう。
○各章の配点比率、配点、ページ数、1点あたりのページ数、1ページあたりの配点
- 世界遺産の基礎知識:25%、50点、95ページ、1.9ページ/点、0.53点/ページ
- 日本の世界遺産:20%、40点、197ページ、4.9ページ/点、0.20点/ページ
- アジア~オセアニアの世界遺産:45%、90点、930ページ、10.3ページ/点、0.10点/ページ
出題が大きく偏っていることがわかりますね。
「基礎知識」は95ページしかないのに50点もの配点があって、1ページあたり平均0.53点もの配点があります。
これに対して「世界の遺産」つまり「アジア~オセアニアの世界遺産」は930ページもあるのにたった90点の配点で、1ページあたり0.10点の配点しかありません。
「世界の遺産」を1とした場合、「日本の遺産」は2.10倍、「基礎知識」は5.44倍もの価値があることになります。
* * *
■世界遺産検定の受検戦略3:学習プランを算出する
これまでの結論をベースに、何をどれくらい勉強するのか1級の学習プランを立案していきましょう。
さまざまなプランが考えられますが、ここでは3つのパターンを示しておきます。
これらを参考に、各級の自分だけのオリジナル・プランを考えてみてください。
○戦略1:配点比率に従う学習プラン
学習量を配点比率に比例させる方法です。
配点比率は、「基礎知識25%、日本の遺産20%、世界の遺産45%、その他10%」なので、学習量もこれに比例させます。
ここでは「その他」は省略します。
世界遺産検定の場合、学習量は読書量で表すことができます。
配点比率はおおよそ「基礎知識:日本の遺産:世界の遺産=1:1:2」になるので、基礎知識を1日に4ページ読む場合、日本の遺産も4ページ、世界の遺産は倍の8ページ読むことになります。
こうして配点比率に学習量を比例させる方法は一般的にはもっとも合理的な戦略なのですが、世界遺産検定1級の場合、大きな欠点があります。
「世界の遺産」は930ページもあるので1日8ページだと117日、4か月弱もかかります。
一方、「基礎知識」は95ページしかないので、毎日4ページ読めば4か月で5回読むことができます。
後者はそれでいいかもしれませんが、前者は930ページを4か月かけて1回読んだところでほとんど忘れてしまって得点には結びつかないでしょう。
両者に差がありすぎるため、学習量が最適化できていないのです。
○戦略2:「世界の遺産」を切り捨てる学習プラン
極端な戦略です。
1級の認定基準である200点満点中140点(得点率70%)に対して、前回算出したように「既存の知識+時事問題+デタラメ」ですでに40%・80点分を確保しています。
残りはたった30%・60点分です。
それならページ数が少なく配点比率の高い「基礎知識」と「日本の遺産」に的を絞るのもひとつの戦略です。
なんせ「基礎知識」1ページの価値は「世界の遺産」の5.44倍、「日本の遺産」でも2.10倍もあるのですから。
「基礎知識」の配点比率は25%、「日本の遺産」は20%ですから、合計45%・90点。
残り30%・60点分を確保できればいいので、正解率66.7%で認定基準に到達します(本当はもう少し複雑な計算が必要です)。
つまり、「基礎知識」と「日本の遺産」の計292ページで正解率70%を確保することができれば、「世界の遺産」930ページをすべて捨ててしまっても構わないのです。
しかも、こうした戦略には内容的にも理があります。
「基礎知識」は世界遺産の理念や歴史を解説するもので、論理的に書かれています。
理屈で理解することができるので、比較的わかりやすく覚えやすい内容になっています。
実際に「世界の遺産」よりはるかに読みやすいはずです。
また、「基礎知識」と「日本の遺産」は2~4級までの学習とリンクする部分も少なくないので、ある程度段階的に学ぶこともできるわけです。
それに対して「世界の遺産」は固有名詞がとても多いのに、固有名詞の解説は少ないです。
特に文化遺産については歴史用語がしばしば出てくるのですが、高校世界史レベルの知識を持っている人でなければ理解するのは簡単ではありません。
しかも2~4級の学習で登場しない世界遺産が半数を占めていて、それらは初見の内容になるのです。
この学習プランの欠点は「基礎知識」と「日本の遺産」で高い正解率を目指す点でしょうか。
かなりの正解率ですから「30%分でいいや」という気楽さは捨てなければなりません。
といっても、ぼくは実際に全体で95%を超える正解率で解答できているわけですから、70%程度なら無理ということはありません。
それなら「世界の遺産」の一部地域だけを勉強して、他の地域を捨てるという戦略もありえます。
たとえば、中巻に掲載されているアジア、アフリカ、アメリカの世界遺産を勉強して、下巻のヨーロッパとオセアニアの世界遺産をカットするというような方法です。
ただ、ぼくは地域で分ける戦略はオススメしません。
その理由は今後解説していきますが、結論だけ書くと、「捨てる部分は範囲ではなく難易度で選ぶべき」であるからです。
「世界の遺産」の一部の地域・一部の世界遺産を捨てるのではなく、すべての世界遺産に目を通す代わりに、一つひとつの世界遺産の解説の簡単な部分を選び出し、難しい部分を捨てていく方が効率的だからです。
たとえば「シェーンブルン宮殿と庭園群」の中の重要で簡単な記述だけを学び、難しい固有名詞や不要な話をカットしていくのです。
すべての世界遺産の記述の中から本質だけを抜き取るのがもっとも効率のよい学習法であり、同時に、本質は理屈で学ぶことができるので理解が容易で覚えやすく、ますます効率化が進みます。
加えて、こうした学習法ならすべての世界遺産を学ぶことができるので、世界遺産の本質理解に近づけるというわけです。
この辺りは「攻略法7.世界遺産検定 最効率学習法」の「『世界の遺産』は地域によって捨てる・捨てないを決めるべきではない」で詳しく書いているので参照してみてください。
○戦略3:基礎知識と日本の遺産を中心に据える学習プラン
戦略1と戦略2を合わせた戦略です。
戦略1は1ページあたりの配点で学習量を配分し、全体で30%分を取りに行く戦略です。
戦略2は「基礎知識」と「日本の遺産」だけで30%分を確保し、「世界の遺産」を完全に捨てる戦略でした。
戦略1も戦略2も極端なので、その間を取ればいいでしょう。
「基礎知識」と「日本の遺産」を学習のベースとし、「世界の遺産」でもある程度の得点を目指すのです。
ぼくの場合、1日に読むページ数で学習量を割り当てました。
一例ですが、半年後に1級を受検するものとして計算します(1年かける場合、1日の負担は半分になります)。
まず「基礎知識」ですが、もっとも重要なので10回は読んでおきたいところです。
95ページ×10回=950ページ、これを180日で割って1日5.28ページ。
1日6ページ読めば159日で10回読み切れます。
続いて「日本の遺産」ですが、「基礎知識」ほどではありませんが重要です。
8回読むことにした場合、197ページ×8回=1,576ページ、これを180日で割って1日8.76ページ。
1日9ページ読めば176日で8回読み切れます。
ただ、「日本の遺産」は1遺産6~12ページの構成なので、この辺りを調節しながら読みたいところです。
最後に「世界の遺産」ですが、こちらは5回とします。
930ページ×5回=4,650ページ、1日26ページで179日で読み終わります。
イメージ的には、「基礎知識」と「日本の遺産」で50%、「世界の遺産」は20%の正解でOKといったところ。
それでも31.5%分が確保できるので、認定基準クリアです。
半年を目標にすると1日に読むページ数は41ページとかなり多いですが、「基礎知識」と「日本の遺産」は2問に1問、「世界の遺産」は5問に1問正解すればいい程度なので、どんどん読み飛ばせばいいのです。
それでも負担が多ければ、読む回数を減らすか、期間を1年(負担は1/2)に延ばして対応していきます。
「読み方」がとても重要になってくるのですが、これについては今後解説していきます。
* * *
さて、以上はぼくの受検戦略であり学習プランです。
みなさんも自分自身で受検戦略と学習プランを立案してみてください。
こうした試験戦略はすべての試験・検定に応用可能です。
世界遺産検定を通して「勉強の仕方」を学んでいただけましたら幸いです。
次回は試験勉強に焦点を当てて、学習の3要素である理解学習・インプット学習・アウトプット学習について解説します。
[関連サイト]
世界遺産検定(公式サイト)