10月31日未明、世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の首里城跡で大規模な火災が発生し、正殿や北殿・南殿をはじめ７棟約4,800平方mが焼失しました。

今回はこのニュースをお伝えします。

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首里城は琉球王国（1429～1879年）の首都・首里の中心に立つ城です。

もともとは琉球王国成立以前の三山時代（南山、中山、北山）、中山の城で、15世紀、琉球統一後に初代国王・尚巴志（しょうはし）が王城として整備しました。

1879年に琉球王国は滅亡して沖縄県となり、首里城は明け渡されました。

1925年に特別保護建造物、1933年には国宝指定を受けています。

しかし太平洋戦争末期の1945年、沖縄戦で陸軍総司令部が置かれていたこともあって徹底した爆撃を受け、石垣や基礎を残してほとんど焼失してしまいました。

1950年より首里城近辺は琉球大学のキャンパスとして整備されます。

1972年に沖縄が日本に返還されると琉球大学は国立大学となり、1977年には新キャンパスへの移転がはじまりました。

この過程で首里城跡は国指定の史跡となり、整備・再建計画が進められ、1992年に正殿（百浦添御殿）が復元されて首里城公園が開園しました。

正殿の復元は琉球時代の建築様式や素材を特定するために徹底した調査が行われたといいます。

基礎や史資料の調査はもちろん、戦前の写真や米軍の空撮資料、戦前を知る人たちへの聞き取りまで綿密に行われ、柱一本一本の素材から塗料の種類まで特定していきました。

国王が政治・外交の場として使用していた１階の下庫理、儀式場だった２階の大庫理では内部の家具や調度品も往時の様子が再現されました。

もっともほぼ当時のまま復元されたのは正殿や書院・鎖之間（さすのま）くらいで、他の建物はコンクリートなどを用いて復元されています。

こうした首里城の復元にかかった費用は100億円を超えると言われています。

2000年、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の９つの構成資産のひとつとして世界遺産に登録されました。

正確には、首里城について世界遺産としての顕著な普遍的価値を構成しているのは「首里城跡 "Shuri-jô site"」で、復元部分を含まない史跡部分となっています。

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10月31日午前２時41分、首里城の警備会社から消防に119番通報があり、火災が確認されました。

警備員は温度センサーで異常に気づき、正殿ではすでに火が上がってたようです。

以後、消防車30台100人以上が出動して消火にあたり、正殿、北殿、南殿、書院・鎖之間、黄金御殿、二階殿、奉神門の７棟約4,800平方mが全焼しました。

正殿奥の二階殿や世誇殿などは今年２月にオープンしたばかりでした。

火の粉が飛んでいる状況から消防と警察は防災無線で注意を呼びかけ、交通規制を行い、避難所を開設して対応しました。

鎮火したのは午前11時前後で、ケガ人は報告されていません。

首里城では10月27日～11月３日の日程で首里城祭が開催されていました。

一般客の夜間立入りは禁止されていましたが、関係者は深夜まで準備に追われていたようです。

出火原因は不明ですが、消防は出火元について正殿の可能性が高いとしています。

火災を受けて首里城公園は10月31日朝から臨時休園・休場となっています。

なお、世界遺産としての価値についてですが、史跡部分についてはいまのところ被害が報告されていないので、危機遺産リストに搭載されることはないのではないかと思います。

※11/01追記

首里城の正殿や北殿等にスプリンクラーなどの消火設備が設置されていなかったことが明らかになりました。

文化庁はパリのノートル＝ダム大聖堂焼失を受け、９月に文化財保護法指定の物件に対して防火対策指針を策定して消火設備の点検や報告を要請していました。

しかし、先述したように首里城跡は国指定の史跡ですが、正殿や北殿といった復元された建造物群は指定を受けておらず、対象外となっていました。

これを受けて文化庁は31日、復元された建物の防火対策を点検するよう自治体に通達を出したということです。

世界遺産の資産内にある復元建造物は意外と多く、一例として鹿苑寺の舎利殿（金閣）、薬師寺の大講堂や西塔・金堂、興福寺の中金堂、平城宮跡の第一次大極殿や朱雀門、高野山金剛峯寺の金堂や根本大塔などが挙げられます。

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