世界遺産NEWS 19/06/21:2019年新登録のユネスコエコパーク
6月17~21日にかけて第31回MAB-ICCが開催され、今年も新たなユネスコエコパークが誕生しました。
新登録のユネスコエコパークは18件で、8件の範囲拡大が承認されています。
日本からは10件目のユネスコエコパークとして甲武信(こぶし)が登録されています。
今回は新登録物件の全リストを紹介します。
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毎年開催されているMAB-ICC(人間と生物圏-国際調整理事会)ですが、今年は6月17~21日にかけてフランスのパリで行われ、新たなユネスコエコパーク(生物圏保存地域/バイオスフィア・リザーブ)が登録されました。
新登録のユネスコエコパークは18件で、それ以外に8件の範囲拡大・名称変更が承認されています。
この結果、ユネスコエコパークの総数は124か国701件となっています(昨年7月時点では686件でしたが、今年6月までに3件のリストからの撤退がありました)。
エスワティニ(旧名スワジランド)にはじめてのユネスコエコパークが誕生しています。
また、ノルウェーにも唯一となるユネスコエコパークが登録されましたが、ノルウェーは過去1件を登録しており、のちに抹消されています。
日本からは10件目のユネスコエコパークとして甲武信(こぶし)が登録されています。
その概要を文部科学省の報道資料から抜粋しましょう。
○名称
甲武信ユネスコエコパーク/甲武信生物圏保存地域
Kobushi Biosphere Reserve
○構成地域
- 埼玉県(秩父市、小鹿野町)
- 東京都(奥多摩町)
- 山梨県(甲府市、山梨市、大月市、北杜市、甲斐市、甲州市、小菅村、丹波山村)
- 長野県(川上村)
○特徴
- 甲武信ヶ岳、金峰山、雲取山等の日本百名山に挙げられる山々が連なる奥秩父主稜を中心に、荒川、多摩川、笛吹川(富士川)、千曲川(信濃川)源流部及びその周辺地域をエリアとしている
- この地域は、山岳や森に加えて御岳昇仙峡等の渓谷が、四季折々に彩りを変える日本的で素朴な 美しい自然に恵まれており、首都圏近郊にありながら、連続性があり、生物多様性に富む、貴重な生態系が広く保全されている
- 古来人々を楽しませてきた民俗芸能が保全・伝承され、山岳・神社信仰にまつわる多様な文化が、今もなお息づいている地域でもある
- 山肌を覆う深い森は、首都圏や周辺地域の水源域として古くから守られてきており、現在でも上流域と下流域の水の繋がりを意識して、森づくりや自然保護等に取り組む団体や事業者、地域住民も多い
○ゾーニング
- 総面積 190,603ha
- 核心地域(13,364ha):主に秩父多摩甲斐国立公園の特別保護地区と第一種特別地域を設定
- 緩衝地域(70,858ha):主に秩父多摩甲斐国立公園の第二種、第三種特別地域、普通地域を設定
- 移行地域(106,381ha):主に秩父多摩甲斐国立公園区域外の居住区を設定
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それでは新登録、範囲・名称変更物件の全リストを紹介します。
公式サイトに従って名称のみ表記していますが、一般的には名前の後ろに "Biosphere Reserve"(バイオスフィア・リザーブ=生物圏保存地域)がつきます。
ただし、国境を越える "Transboundary Biosphere Reserve" については "TBR" の略号を加えています。
掲載はヨーロッパ州→アジア州→オセアニア州・大洋州→北アメリカ州→南アメリカ州→アフリカ州で、州の下は国別五十音順です。
いずれもぼくが適当に訳したものなので、勘違い等ありましてもご容赦ください。
<2019年新登録のユネスコエコパーク:18件>
○ワイト島
Isle of Wight
イギリス
○ジュリア・アルプス
Julian Alps
イタリア
○ポー・グランデ
Po Grande
イタリア
○ムール渓谷下部
Lower Mura Valley
オーストリア
○ヴィンデルラルヴェン=ユフタットダフカ
Vindelälven-Juhtatdahka
スウェーデン
○ヴォックスナダーレン
Voxnadalen
スウェーデン
○アルト・トゥーリア
Alto Turia
スペイン
○カブリエル渓谷
Valle del Cabriel
スペイン
○ラ・シベリア
La Siberia
スペイン
○ホルドホルダラン
Nordhordland
ノルウェー
○ロツトチカ/ロストチェTBR
Roztochya/Roztocze TBR
ウクライナ/ポーランド
※ポーランド側の新登録と、既登録のウクライナのロツトチカとの接続
○エリトン湖
Lake Elton
ロシア
○サレー=モヨ=タンボラ “サモタ”
Saleh-Moyo-Tambora “SAMOTA”
インドネシア
○トギアン・トジョ・ウナ=ウナ
Togean Tojo Una-Una
インドネシア
○江原エコ・ピース
Gangwon Eco-Peace
韓国
○漣川・臨津江
Yeoncheon Imjin River
韓国
○甲武信
Kobushi
日本
○ルボンボ
Lubombo
エスワティニ
<範囲拡大・名称変更されたユネスコエコパーク:8件>
○オマニャとルナの渓谷群
Los Valles de Omaña y Luna
スペイン
○メノルカ
Menorca
スペイン
○マンサナレス川上流域、ロソヤとグアダラマ
Cuencas Altas de los Ríos Manzanares, Lozoya y Guadarrama
旧名:マンサナレス川上流域 Cuenca Alta del Río Manzanares
スペイン
○済州島
Jeju Island
韓国
○ガラパゴス
Galapagos
旧名:コロン諸島 Archipiélago de Colón
エクアドル
○ファン・フェルナンデス諸島
Archipiélago Juan Fernández
旧名:ファン・フェルナンデス Juan Fernández
チリ
○ラグーナ・サン・ラファエルとエル・グアヤネコ
Laguna San Rafael y El Guayaneco
旧名:サン・ラファエル湖 Laguna San Rafael
チリ
○マリンディ・ワタム、アラブコ・ソコケ
Malindi Watamu Arabuko Sokoke
旧名:マリンディ=ワタム Malindi-Watamu
ケニア
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UNESCOの遺産事業は各公式サイトなどを参考に追跡しているのですが、毎回非常に苦労します。
先日のユネスコ世界ジオパークも今回のユネスコエコパークも新登録物件を調べるのは簡単なのですが、発表されている総数がどうしても「昨年の数+新登録物件の数」と合いません。
公式サイトにもWikipediaのようなサイトにも書かれていないのでさまざまな角度・言語で検索をかけて原因を追及するのですが、これがもうたいへん。
調べていくうちに、知らぬ間に名前が変わっていたり、ひそかにリストから消えている物件なんかも出てくるのでその裏を取るのにひと苦労です。
でもまぁどちらもなんとか原因を突き止めることができました。
いつまでできるかわかりませんが、とりあえずはもう少しがんばろうと思います。
ユネスコエコパークの概要やランキングなどは下にリンクした記事「UNESCO遺産事業リスト集5.ユネスコエコパーク・リスト」を参照してください。
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世界遺産NEWS 20/11/10:2020年新登録のユネスコエコパーク(翌年)
世界遺産NEWS 18/07/28:2018年新登録のユネスコエコパーク(前回)