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世界遺産NEWS 19/02/11：世界遺産シャーク湾で加速する生態系の変化
オーストラリアの世界遺産「グレートバリアリーフ」が水温上昇や海洋の酸性化など気候変動の影響を大きく受けているという記事は何度か紹介してきました。
オーストラリア大陸の反対側にある世界遺産「西オーストラリアのシャーク湾」でも気候変動が深刻な被害をもたらしているようです。
■Shark Bay: A World Heritage Site at catastrophic risk（The Conversation。英語）
グレートバリアリーフではサンゴ礁の白化（死滅）が問題になっていますが、シャーク湾ではコンブの森であるケルプ林がサンゴ礁に置き換わる変化が起きているそうです。
今回はこのニュースをお伝えします。
＊ ＊ ＊
気候変動は世界的な現象で、20世紀のはじめ頃から徐々に拡大しています。
その影響は世界各地で見られますが、シャーク湾では2011年に記録的な被害をもたらしました。
シャーク湾の特徴のひとつは海水面から水深30mほどまでに広がっている、コンブをはじめ大型の海藻類からなるケルプ林です。
確認されている海藻は12種類と世界最多を記録し、世界最大を誇るウーラメル・シーグラス・バンクを中心に数百kmにわたってケルプ林が展開しています。
この豊かな植生がジュゴンやウミガメをはじめとする数多くの動物たちを養っています。
2011年の夏、海水温が２度以上も上昇する海洋熱波がシャーク湾を襲い、10週以上にわたって継続しました。
この結果、南緯29度より低緯度地域（赤道に近い地域）ではほとんどのケルプ林が消滅し、2013年までに43%が失われてしまいました。
ケルプ林の代わりに繁茂をはじめたのが芝生状の海藻類で、南緯27度前後からはサンゴ礁も見られるようになりました。
同時に魚介類にも変化が起こり、亜熱帯性の魚類は減り、熱帯性の魚類が増えていきました。
こうした変化は海水温が平年並みに戻った2015年においても変わることはありませんでした。
下の図にあるように、芝生状海藻類やサンゴ礁に置き換わった地域の生態系はほとんどそのまま維持されています。
こうした結果を受けてIUCN（国際自然保護連合）は2018年に、シャーク湾を気候変動に対してもっとも脆弱な地域のひとつにカテゴライズしています。
グレートバリアリーフに対する注目度は非常に高く、2011年以降、オーストラリア政府は115のプロジェクトに資金提供を行っています。
これに対してシャーク湾はわずか９件にすぎません。
これまでにケルプ林の36%、900平方kmが消滅しており、不可逆的な変化が起こっている可能性も指摘されています。
その主因は気候変動にあり、気候変動の原因のひとつが二酸化炭素排出量の上昇にあると考えられています。
そしてケルプ林は二酸化炭素の吸収・固着に大きく貢献しており、消滅したケルプ林は約80万世帯の年間排出量に相当するということです。
つまり、ケルプ林の減少は生態系の変化をもたらすだけでなく、気候変動を加速度的に促進しかねないということであるようです。
［関連記事］
※いずれもさらに以前の関連記事へリンクあり
世界遺産NEWS 22/06/03：西オーストラリアのシャーク湾で世界最大の植物を発見
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