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世界遺産NEWS 15/07/24：マリのトンブクトゥ修復完了
2012年５月に破壊された世界遺産「トンブクトゥ」の修復が完了し、７月19日にUNESCO（国際連合教育科学文化機関）のイリーナ・ボコバ事務局長が現地を訪れて祝辞を述べました。
トンブクトゥは北アフリカと西アフリカを結ぶ要衝に築かれたベルベル人の一派・トゥアレグ人の古都です。
金と塩を交換する塩金貿易で繁栄し、世界の過半数の金が集まる「黄金の都」と称えられました。
この町は西アフリカのイスラム教布教の拠点で、多くの巡礼者を集める聖地でもありました。
2012年４月、トゥアレグ人の独立を求めるアザワド解放民族運動MNLAとイスラム過激派組織アンサル・ディーンがマリ北部を制圧し、アザワド国の独立を宣言しました。
そして翌月、アンサル・ディーンは世界遺産「トンブクトゥ」や「アスキア墳墓」に侵入し、333聖人の墳墓などを「偶像崇拝の対象である」として破壊しました。
聖地を破壊することでマリ国民に精神的ダメージを与え、国際的な注目を集めることを目的としたものでした。
これに対してマリ政府は両世界遺産の危機遺産リストへの登録を求め、同年の第36回世界遺産委員会で認められました。
2013年１月にフランスが軍事介入を行ってマリ北部を制圧し、その多くを解放。
２月にはUNESCOが支援を発表し、修復がはじまりました。
これらの墳墓の修復は、数多くの写真を使って正確に測量され、破片を分析して材料を割り出し、現地に伝わる伝統の技法と素材を活用して行われました。
そして破壊から３年強を経たこの７月、修復が無事終了しました。
この努力に対してUNESCOのイリーナ・ボコバ事務局長は、文化遺産を守ろうという確固たる意志が「過激派への回答」であるとし、「寛容と対話と平和のレッスン」だったとして敬意を称しました。
また、「自分たちの歴史を守ろうとする努力は、マリの復興と協力・自信の証明である」と語っています。
一方、トンブクトゥの市長もUNESCOをはじめとする国際機関の協力に謝意を表明し、文化大臣も「もっとも重要なことは落ちることではなく、もう一度這い上がることであり、この再建はまさにそれを象徴している」と語りました。
こうした修復に対して事務局長はさらに、「ここに過激派に対する私たちの回答があります。これは平和的な文化協力の成功例であり、私たちはこの道を歩み続けます」とUNESCOの方針を力強く宣言しました。
ちなみに、下はモーリタニア出身のアブデラマン・シサコ監督の作品『トンブクトゥ』の予告編です。
小さな村で音楽と笑顔にあふれたつつましい生活を送っていたキダーン一家ですが、村はある日イスラム過激派に占拠されてしまいます。
音楽と笑顔は恐怖と叫び声に代わり、一家はトンブクトゥに避難しますが、そこではさらなる困難が待ち受けていました。
この作品は2015年のセザール賞最優秀作品賞・監督賞・脚本賞など７部門を受賞し、同年の第87回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされました。
まさにアンサル・ディーンの支配を描いた作品です。
私たちは報道などを通じて「イスラム過激派が占領しました」とか「イスラム過激派の攻撃を受けています」などという文章を読んだり聞いたりするわけですが、当然ながらその背景には数えきれないほどの生々しい悲劇が横たわっています。
この物語はその中のほんのひとつの出来事にすぎません。
その一方で、一時はマリ北部を制圧したトゥアレグ人も多くの悲劇を体験してきました。
砂漠やサヘルに勝手に国境を引いたのは西洋人で、定住民族に対してはある程度の便宜を図りましたが、トゥアレグ人をはじめとするの遊牧民族の権利は完全に無視されました。
毎日羊を放牧させていた土地がある日突然誰かの土地になり、立ち入りや居住が禁止されてしまうというようなことが繰り返し起こされたのです。
虐げられてきた彼らの言葉に誰も耳を貸さなかったのも事実なのです。
こうした問題を見聞きするにつけ、その難しさと悲しさに戸惑うばかりです。
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『朝日新聞 世界の扉』記事執筆。『Fine』自然遺産特集執筆。『地球の歩き方 MOOK 世界のビーチBEST100』『ノジュール』に旅のスペシャリスト・達人として参加。『PEN』でアフリカの世界遺産執筆。『MONOQLO』世界遺産特集取材協力。『女性セブン』で日本の世界遺産を解説。エクスナレッジ『聖地建築巡礼 世界遺産から現代建築まで、73の聖地を巡る旅』、洋泉社ムック『負の世界遺産』執筆。RKBラジオ、FM TOKYOで世界遺産特集出演。その他企業・大学広報誌等。
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