世界遺産写真館7.プレア・ヴィヒア寺院(カンボジア)
一般的にはまだあまり知られていませんが、でも強力にオススメしたい世界遺産というのがいくつかあります。
前回紹介したモンテネグロのコトルが一例ですが、今回の「プレア・ヴィヒア寺院」もそのひとつです。
プレア・ヴィヒア(プレア・ヴィヘアとかプリア・ヴィヒアなどとも表記されます)は11~12世紀のアンコール朝の寺院なのですが、四角い平面プランが一般的である他のヒンドゥー寺院と異なり、南から北に一直線に伸びているのが特徴です。
なぜ一直線なのでしょう?
それは実際に一直線に上っていくと明らかになります。
境内にはまっすぐ伸びる参道の途中に5つの塔門、4つの中庭が展開しているのですが、塔門は要所要所の高台に築かれていてその先が見えない仕掛けになっています。
ですから塔門をくぐるたびに新しい参道と塔門が見えてきて、少しずつステージが上がって神聖さが増していくのを感じ取ることができるのです。
そして参道の最奥部、第一塔門の回廊の内部はサンクチュアリと呼ばれる聖域で、その真ん中に中央祠堂が立っています。
以前はその中央にヒンドゥー教最高神シヴァを表すシヴァ・リンガが祀られていましたが、現在では釈迦如来やガネーシャをはじめとする仏教やヒンドゥー教のさまざまな神様・仏様が祀られています。
普通の寺院はここでおしまいなのですが、この寺院にはさらに先があります。
それが↓の絶景です。
もともとこの地はヒンドゥー教の寺院が建つずっと以前から聖地として崇められていたと言われます。
人々は古代からこの絶景に心打たれ、神を感じて祈りを捧げてきたのでしょう。
それが後の時代、宗教はヒンドゥー教や仏教に変わっても、一直線の平面プランでその絶景をドラマティックに描き出し、いまに伝わるプレア・ヴィヒアになったのではないかと思うのです。
時代や文化・宗教は変わっても、人が感じることは変わらない。
そんなことを感じさせてくれるすばらしい遺跡です。
この世界遺産、アンコール・ワットでおなじみの「アンコール」の拠点都市シェムリアップを起点に訪ねることができます。
少々遠いですが、アンコール・ワットよりも好き!という人も少なくありませんし、帰り道にこれまた強力にオススメしたいベンメリアやコーケーといった遺跡にも立ち寄ることができたりします(ベンメリアとコーケーは世界遺産暫定リスト記載物件で、世界遺産登録を待っています)。
アンコールと一緒に訪ねてほしい世界遺産のひとつなのです。
■世界遺産データ
プレア・ヴィヒア寺院
Temple of Preah Vihear
国名:カンボジア王国
登録年と登録基準:2008年、文化遺産(i)
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