ルートで選ぶ世界遺産2:ペルー北部周遊ルート
前回はリマを起点にペルー南部を周遊するルートを紹介した。
今回はリマから北へ向かう周遊ルートを紹介する。
まずはデータから。
<DATA>
■テーマ:ペルー北部周遊ルート
■ルート:リマ→バランカ→ワラス→トルヒーヨ→リマ
■世界遺産:5か所(遺産の種類:拠点)
- リマ歴史地区(文化遺産:リマ)
- 聖地カラル-スーぺ(文化遺産:リマ、バランカ)
- チャビン[古代遺跡](文化遺産:ワラス)
- ワスカラン国立公園(自然遺産:ワラス)
- チャンチャン考古地区(文化遺産:トルヒーヨ)
※ナスカとパルパの地上絵(文化遺産:リマ、イカ、ナスカ)
※リオ・アビセオ国立公園(複合遺産、非公開)
このルートはペルーを特徴づける3つの地形「ジャングル-高山-砂漠」のうち、高山と砂漠はカバーしているが、アマゾンのジャングルが含まれていない。
しかし、「ワスカラン国立公園」は登山家やトレッキング愛好家が憧れるアンデス随一の絶景。
アメリカや欧米のツーリストには絶大な人気があり、ここだけに1か月以上を費やす人も少なくない。
それを補って余りあるハイライトだろう。
5つの世界遺産は、ワスカランがアンデスの自然遺産、リマが植民都市、それ以外はプレ・インカ(インカ帝国以前)の遺跡だ。
ただ、プレ・インカといってもそれぞれ時代はまったく異なり、「聖地カラル-スーぺ」が紀元前3000~前1000年頃、「チャビン[古代遺跡]」が紀元前1500~前300年頃、「チャンチャン考古地区」が10~15世紀頃の遺跡。
いずれも歴史的に非常に重要で、見た目もまったく違う。
南部周遊ルートの場合、ナスカ以外の文化遺産はすべてインカ帝国絡み。
古代遺跡ファンにとって北部周遊ルートはとても魅力的に映るはずだ。
できればリマを起点に「ナスカとパルパの地上絵」も訪ねられるので、ナスカの地上絵はぜひとも見ておこう。
ここを訪れると、ペルーにあるプレ・インカの世界遺産はコンプリートだ。
実は、ペルー北部には「リオ・アビセオ国立公園」という世界遺産もあったりする。
アマゾンの低地から標高4,000mほどまでをカバーする世界遺産で、ここを訪れればアマゾンのジャングルも見ることができる。
ただ、残念ながら政府の許可が必要で、一般には公開されていない。
北部でどうしてもジャングルに行きたい人は、ワラスやリマからプカルパという街へ行くことをオススメする。
* * *
本ルートの内容を見てみよう。
まず、起点は首都リマ。
そのリマにある世界遺産が「リマ歴史地区」だ。
インカ帝国を滅ぼしたフランシスコ・ピサロが築いた植民都市で、ペルー副王領の首都。
見所は、華麗な祭壇や彫刻で知られるリマ大聖堂や、バロック様式とアンダルシア様式の融合が美しいサン・フランシスコ教会など。
コロニアル様式の街並みがなんともかわいらしい。
リマから北へ約150kmの位置にあるのが「聖地カラル-スーぺ」だ。
21世紀に入って、カラル遺跡にある高さ20mのピラミッドが紀元前2500年以前のものというデータが出たため大きな脚光を浴びた。
これはギザの三大ピラミッドが造られたのとほぼ同じ年代。
2013年2月にはリマ近郊のエル・パライソ遺跡で紀元前3000年の建造と見られる神殿が発見された。
ペルーの古代遺跡は今後、世界史の教科書を大きく書き換えるかもしれない。
カラル遺跡へはリマから日帰りツアーが出ているほか、バランカやワチョからタクシー等で訪れることができる。
バランカから北へ約150km、標高約3,000mの場所にワラスという街がある。
ここが「チャビン[古代遺跡]」と「ワスカラン国立公園」の起点となる。
ワラスからはさまざまなツアーが出ており、なかにはふたつの世界遺産を同時に訪れるものもある。
ワラス周辺には他にも古代遺跡や温泉があるので、街をのんびり楽しむのも悪くない。
そしてこのルートのハイライト、「ワスカラン国立公園」だ。
標高6,768mを誇るペルー最高峰ワスカランを中心とした一帯で、氷河や氷河湖・U字谷のような氷河地形はもちろん、珍しい高山植物やサボテンだらけの奇妙な景観等々、アンデス山脈の多彩な表情が楽しめる。
本格的な登山から気軽なトレッキング・コースまで、ルートは無数。
何か月いても飽きることはないだろう。
ワスカランの麓にある世界遺産が「チャビン[古代遺跡]」だ。
チャビン文化は紀元前1500年ほどまで遡る古代遺跡で、ジャガーやワシを象った神殿や動植物をデフォルメした装飾土器はプレ・インカ文明の礎となり、インカに至るアンデス諸文化に大きな影響を与えた。
ワラスの北西230kmほどにある街がトルヒーヨだ。
この街、とても見所が多くてオススメだ。
世界遺産「チャンチャン考古地区」の起点であるほか、フランシスコ・ピサロが築いた植民都市は「トルヒーヨ歴史地区」としてペルーの世界遺産暫定リストに記載されている。
郊外には紀元前5~後8世紀に繁栄したモチェ文化が築いた太陽のワカ、月のワカというピラミッドもあったりする。
また、砂漠と海が直接触れ合う景色も見物。
葦で造られたトトラ船にはぜひ乗ってみよう!
「チャンチャン考古地区」は10~15世紀に栄えたチムー王国の首都遺跡。
泥と藁と日干しレンガで造られた街並みは他の古代遺跡とずいぶん様子が違う。
特に泥に描かれたレリーフや網目状の壁が印象的だ。
ただ、近年の気候変動の影響を受けて、降水量とアンデスの雪解け水の増加で泥が溶け出しており、現在危機遺産リストに登録されている。
さらに足を伸ばせる人は、トルヒーヨの北約180kmにある温泉都市カハマルカをオススメしたい。
カハマルカはインカ帝国とスペインが、具体的には皇帝アタワルパとフランシスコ・ピサロがはじめて対面した街で、ここからスペインによる南米支配がはじまった。
インカ皇帝が愛したという温泉やクントゥル・ワシという古代遺跡で知られており、街並み自体も非常に美しい。
一帯は「カハマルカ歴史地区」として世界遺産暫定リストに記載されている。
* * *
ペルー南部周遊ルートとペルー北部周遊ルートを合わせると、ペルーの世界遺産11件のうち10件、「リオ・アビセオ国立公園」以外のすべてを訪ねることができる。
1か月は必要になると思われるが、間違いなく忘れられない旅になるだろう。