私的旅行術 準備編2:航空会社と航空便の種類
海外旅行の予約をするときに、最初に考えるのは以下のいずれかにするかという点です。
- ツアー
- セミツアー
- 個人旅行
完全パッケージのツアーや、航空券やホテルの手配だけ任せるセミツアーの場合はデスクに尋ねればよいので、本サイトではすべての予約を自分自身で行う個人旅行について解説したいと思います。
こうした個人旅行の場合、行き先を決めたら航空券を手配することになります。
今回準備編の第2回は航空券の話に入る前に、準備段階として航空会社と航空便の種類を紹介しましょう。
○本記事の章立て
- 航空会社=エアラインとは何か?
- 航空アライアンスとは何か?
- 航空便の種類
なお、準備編を最初からご覧なりたい方は前回を参照ください。
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■航空会社=エアラインとは何か?
航空機を使って旅客・貨物の輸送サービスを行っている会社を航空会社といいます。
以下のような分類例がありますが、厳密な区別があるわけではありません。
○航空会社の区分
- FSC:Full Service Carrier。一般的な航空会社
- LCC:Low Cost Carrier。格安航空会社
- MCC:Middle Cost Cattier。FSCとLCCの中間的な航空会社。ハイブリッド航空とも
- リージョナル航空/コミューター航空:Regional Airline / Commuter Airline。小型機で地方同士を結ぶ地方航空会社
- フラッグ・キャリア:National Flag Carrier。国が経営・支援する or していた国策航空会社
一般的な航空会社はFSCと呼ばれており、日本だとANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)が有名ですね。
そしてJALはフラッグ・キャリアでした。
地方にはリージョナル航空もあって、フジドリームエアラインや日本トランスオーシャン航空等が一例です。
近年話題になっているのがLCCで、サービスや利便性を削って格安な航空券を販売するシステムを売りにしています。
日本でもエア・アジアやピーチ・アビエーション、ジェットスター、スクート、ノックエア、ベトジェット、香港エクスプレス、春秋航空、四川航空、エアソウル、チェジュ航空等々、さまざまなLCCが就航するようになりました。
同じ路線を比べた場合、一般的にLCCの航空料金はFSCの半額程度といわれています。
利用者レベルでは以下のようなメリットやデメリットがあります。
ただし、すべてのLCCや便が該当するわけではありません。
○LCCのメリット
- 安い
- 片道航空券も手軽
○LCCのデメリット
- 座席指定、機内食、毛布をはじめ有料サービスが多い
- 預入手荷物(受託手荷物)や持込手荷物が有料、あるいは無料分が少ない
- 座席が小さく狭い
- 航空券は自社サイトのみの販売で店舗がない
- 航空券の変更・払い戻しができない、あるいは手数料が高い
- 遅延や欠航が多く、補償もないか少ない
- セカンダリー空港(都市の第二・第三の空港)の発着便が多い
- 深夜や早朝等、不便な時間の発着が多い
- ボーディング・ブリッジを使わないことが多い
- 航空アライアンスのマイレージが貯まらない
LCCが普及して大きく変わったと思うのが以下の3点です。
- 航空券が安くなり海外旅行が身近になった
- 各国の国内線航空券が安くなり、気軽に空路を取れるようになった
- 片道航空券が気軽に買えるようになり、旅のルート・日程が多彩になった
LCCの登場で海外行きの航空券だけでなく、各国の国内線の航空券料金が大幅に値下がりしました。
昔はバックパッカーといえば陸路移動(バスや電車等による移動)が主でしたが、いまでは簡単に空路を選べるようになりました。
キャンペーン等を利用すると寝台バスより国内線の方が安いなんてこともありますからね。
また、バックパックを担いで旅行をしないような層であっても、スーツケースで途上国の奥地に飛ぶなんてことも気軽にできるようになりました。
実際アジアの片田舎でもスーツケースを引いている外国人をよく見かけるようになりました。
また、片道航空券の普及は海外旅行を大きく変えています。
最近まで、FSCは片道航空券を販売していないか、販売するとしても非常に高価なものでした。
ところがLCCではむしろ片道航空券が基本で、往復する場合は往路・復路の2枚の航空券を購入する形になります。
このため往路と復路で航空会社やルートを変えたり、入国してから復路の航空券の手配をするなどということが可能になりました(出国チケットがなければ入国できない国も多いので要注意)。
これによって旅の自由度が大幅に増しています。
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■航空アライアンスとは何か?
FSCの多くは「アライアンス」と呼ばれる国際航空連合を形成し、さまざまな共通サービスを提供しています。
主な航空アライアンスには以下があります。
- スターアライアンス(26社)
ANA(日本)、TAP ポルトガル航空(ポルトガル)、ルフトハンザドイツ航空(ドイツ)、オーストリア航空(オーストリア)、スイス・インターナショナル・エアラインズ(スイス)、ブリュッセル航空(ベルギー)、エーゲ航空(ギリシア)、スカンジナビア航空(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー)、クロアチア航空(クロアチア)、LOTポーランド航空(ポーランド)、ターキッシュ・エアラインズ(トルコ)、エア・インディア(インド)、シンガポール航空(シンガポール)、タイ国際航空(タイ)、中国国際航空(中国)、深圳航空(中国)、エバー航空(台湾)、アシアナ航空(韓国)、ニュージーランド航空(ニュージーランド)、ユナイテッド航空(アメリカ)、エア・カナダ(カナダ)、コパ航空(パナマ)、アビアンカ航空(コロンビア)、エジプト航空(エジプト)、エチオピア航空(エチオピア)、南アフリカ航空(南アフリカ)
- ワンワールド(14社)
JAL(日本)、ブリティッシュ・エアウェイズ(イギリス)、イベリア航空(スペイン)、フィンエアー(フィンランド)、S7航空(ロシア)、ロイヤルヨルダン航空(ヨルダン)、カタール航空(カタール)、スリランカ航空(スリランカ)、キャセイパシフィック(香港)、マレーシア航空(マレーシア)、カンタス航空(オーストラリア)、アラスカ航空(アメリカ)、アメリカン航空(アメリカ)、ロイヤル・エア・モロッコ(モロッコ)
- スカイチーム(19社)
エール・フランス(フランス)、KLMオランダ航空(オランダ)、エア・ヨーロッパ(スペイン)、ITAエアウェイズ(イタリア)、チェコ航空(チェコ)、タロム航空(ルーマニア)、アエロフロート・ロシア航空(ロシア)、サウディア(サウジアラビア)、ミドル・イースト航空(レバノン)、ガルーダ・インドネシア航空(インドネシア)、ベトナム航空(ベトナム)、中国東方航空(中国)、厦門航空(中国)、大韓航空(韓国)、チャイナエアライン(台湾)、デルタ航空(アメリカ)、アエロメヒコ航空(メキシコ)、アルゼンチン航空(アルゼンチン)、ケニア航空(ケニア)
- バリューアライアンス(5社)
スクート(シンガポール)、ノックエア(タイ)、セブパシフィック航空(フィリピン)、セブゴー(フィリピン)、チェジュ航空(韓国)
航空アライアンスの主なサービスには以下のような例があります。
- コードシェア便(共同運航便)の運行
- マイレージ・サービスの相互乗り入れ
- ラウンジの共通化
利用者にとって特に影響が大きいのはマイレージ・サービスの相互乗り入れでしょう。
飛行機に乗ったりクレジットカードで買い物をしてマイルを貯めている人も多いと思いますが、航空アライアンス内の提携航空会社のフライトでもマイルが貯まるのです(マイルの積算率等の条件はさまざまです)。
そして貯まったマイルで特典航空券を手に入れる際にも、提携航空会社のフライトを利用することができたりします。
ぼくは主にANAのマイルを貯めているので、なるべくANAが所属しているスターアライアンス加盟の航空会社を使うようにしています。
たとえばヨーロッパに行くのにルフトハンザとブリティッシュ・エアウェイズを選べるのであれば、スターアライアンスに加盟しているルフトハンザを優先するといった形です。
この場合、ルフトハンザに乗ればANAでマイルが加算されます。
つまり、マイレージというのは航空アライアンスのプログラムに参加して貯めるわけではなくて、ANAやJALといった各航空会社のマイレージプログラムに参加して貯めるわけです。
成田をはじめ、航空アライアンスごとにターミナルを分けている空港もあるので、トランジットやストップオーバーの際にも便利です。
といっても、値段のメリットを上回るほどのサービスが提供されることはあまりないので、ぼくは航空券を買う際に航空アライアンスはそこまで気にしていません。
そのためスターアライアンスはANA、ワンワールドはJAL、スカイチームはデルタ航空と、それぞれの航空会社のマイレージプログラムに参加していずれの航空アライアンスのマイルも貯められるようにしています。
まだどこにも参加していない方、とりあえずこの3社のマイレージプログラムに参加してみてはいかがでしょうか?
LCCについては、2016年5月にLCC6か国8社がバリューアライアンスという世界初のLCCアライアンスを発足させました。
今後サービスを充実させていくものと思われます。
[関連サイト]
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■航空便の種類
それぞれのフライトには必ず便名が指定されています。
たとえば "NH10" といえば毎日就航しているANAの成田-JFK(ニューヨーク)便ということになります。
こうした航空便には以下のような種類があります。
○経由地や運行会社から見た区分
- 直行便:立ち寄りをせず、目的地に直行するフライト
- 経由便:最終目的地以外に経由地をに立ち寄るフライト
- 乗継便:経由地で便を変えるフライト
- コードシェア便:複数の航空会社が共同運行するフライト
- チャーター便:定期便と異なる臨時便
経由便と乗継便の違いは便名が変わるか否かですが、乗継便の場合は機体そのものが変わることが多いです。
どちらも多くの場合、いったん航空機を降りることになります(まれに降りないケースもあります)。
その際の降り方にふたつの種類があります。
○経由地での振る舞いによる区分
- トランジット:途中寄航。経由地に長時間滞在しない単なる経由
- ストップオーバー:途中降機。経由地に入国して滞在すること
トランジットとストップオーバーの違いはさまざまな定義がされていて厳密なものはありません。
単に24時間以上か以内かで分けられることもあれば、時間に関係なく入国して空港を出るとストップオーバーになることもあるようです。
ですからどちらの場合も入国審査の有無は一応確認しておきましょう。
一般的には、たとえば「東京→香港経由→バンコク」という航空券で、香港に入国しないならトランジット、入国審査を受けて空港を出るならストップオーバーということになります。
前者の場合は普通24時間以内に発ちますし、後者の場合は一泊はすることになるでしょう。
ですから「ストップオーバー可」という航空券の場合、香港に何日か滞在できることになります。
預入手荷物について、トランジット先で預入手荷物を受け取る必要がなく、出発地から最終目的地まで預けたままにできるシステムをバゲッジスルー(スルーバゲージ)と呼びます。
トランジット前と後が同一航空会社や同一アライアンス、あるいは提携先である場合は可能であることが多くなっています。
一応、この件も事前に航空会社に確認しておきましょう。
コードシェア便は複数の航空会社が共同で運行する航空便です。
航空会社の数だけ便名が付いています。
次回は航空券の種類と買い方について解説します。