Study 2:理想の時間
子供の頃。
明日のドッジボール大会が楽しみで楽しみで、ゲームがおもしろくておもしろくて、ラジコンをプレゼントしてもらったことがうれしくてうれしくて眠れなかった夜。
眠るのがもったいなくて、いつまでだって起きていたくて、それでも力尽きて眠りに引き込まれた。
ある日突然、あの時間を取り戻すことにした。
あの時間を取り戻すことにしたんだけれど、実際やりはじめるとクソ忙しいことに気がついた。
あれもしたい。
これもしたい。
あれもしなきゃ。
これもしなきゃ。
考えてみると、子供の頃だってずっと忙しかった。
7時までに家に帰らないと母親が鬼のように怒るから、それまで何をしようか?
氷鬼しなきゃ。
ダム作らなきゃ。
クヌギの木に蜜塗らなきゃ。
小松屋でチョコバット買わなきゃ。
あれもしなきゃ。
これもしなきゃ。
クソ忙しいなんて大嫌いだ。
がんばるなんて大嫌いだ。
一所懸命なんてヘドが出る。
でも、がんばるを捨て、一所懸命を捨て、やりたいことだけやり続けようと思うと誰よりも忙しくなってしまう。
だって、
あれもしたい。
これもしたい。
あれもしなきゃ。
これもしなきゃ。
というわけで、とにもかくにも忙しいわけだ。
ボケーっと流れる愛すべき時間もない。
誰よりも無駄、無意味、非効率が好きなのに。
そこで考えた。
子供の頃のように、力尽きるまでやり続けて、力尽きたところで眠ったらいいんじゃないか。
で、やり続けたら朝になってしまって翌日超辛かった。
で、いきなり力尽きたから仮眠をとるとしっかり朝で何もできなかった。
世の中なかなかややこしくできているらしい。
がんばるや一所懸命と、やりたいからやるのと、決定的に違う点がひとつある。
つまんなくなったら全部捨ててしまえばいい。
おもちゃは飽きていずれ捨てられるけれども、そのおもちゃで遊んでいた事実は永久に変わらない。
つまり、瞬間は永遠。
お、ニーチェだね。
だから彼は死ぬほど瞬間を愛したのだろう。
世界にはすてきなおもちゃがたくさんあってどうやら遊び切れるものではないようだ。
ちょっとおもちゃ整理をしなくてはならないのかもしれない。