Study 5:タバコ&シガー考
タバコに恨みはない。
タバコが悪いとも思わない。
タバコを吸う人が嫌いなんてこともない。
ただ、クサいのでどこかで吸ってくれ、と思うことはある。
あるいはそんなにタバコがいいものならば、ぼくを説得するタバコの味わい方のひとつも提示してほしい。
シガーのようにね。
北欧やイギリスでタバコが1箱1,000円を超えるのは有名な話。
南アフリカでは公衆の面前でタバコを吸うことが禁止されたし、欧米もそれに似た政策を取り入れる国が出はじめている。
オランダは大麻を非犯罪化していることで有名だが、イギリスをはじめヨーロッパ各国もそれに追随しはじめている。
ところがやがてタバコが禁止されると、大麻もタバコの一種として禁止されることになるだろう。
実際WHO(世界保健機関)はタバコを禁止する方向に動いているし、世界的な流れを見るに、おそらくタバコは犯罪化されるだろう。
大麻解禁論というものがある。
「大麻は麻薬じゃない。害もほとんどない。だから解禁せよ」という主張だ。
たしかに医学的にその主張は正しいようだ。
しかし、法律というのはもともと国民の健康を考えてあるものじゃない。
医学的根拠などなくたって、その法律のおかげで社会が円満に動くのなら、その法律には意義がある。
タバコの議論も同じで、タバコが身体に悪いから、あるいはタバコがたとえ身体に悪くなくたって、それで社会がよくなるなら禁止することには論拠がある。
同じように、タバコがあることで社会がよく保たれているのなら、「タバコを禁止すべきではない」という主張は当然成立しうる。
ところがそんな議論はほとんどない。
本当のところ、タバコの何がイヤだって、主張がないところだ。
タバコのここがいいっていう明確な主張をほとんど聞いたことがない。
だからただただタバコをふかしているだけにしか見えないし、そこから文化が感じられない。
本当は違う。
だってタバコっておいしいんだろ?
だから吸ってるんだろ?
だったらもっと堂々とカッコよく吸ったらいかがなものか?
ぼくだって海外のビーチで数か月、毎日タバコをふかしていたことがある。
シーシャをはじめ、世界各国のタバコだってふかしてきた。
クセになるような吸い方をしなかっただけで、タバコのよさはそれなりにわかってるつもりだ。
タバコの歴史は相当に深く、立派な文化がある。
マヤ文明をはじめ、中米でタバコが嗜好品として、まじない品として、蚊などから身を守る医療品として使われていたのは有名な話。
同じような文化は世界各地にある。
だったらタバコのよさだってあるに決まってる。
「もし天国にシガーがなかったら、私は行かない」
マーク・トウェインの言葉だがカッコいいじゃないか。
吸ってみたくもなってくる。
葉巻タバコ、すなわちシガーには、素人がおいそれと入れないような文化がある。
スコッチのシングル・モルトが大好きだが、シングル・モルトはシガーとの相性が抜群にいいようで、一般的なモルト・バーなら普通にシガーが置いてあるし、シガー・バーという名前さえある。
どのシングル・モルトにどのシガーを合わせるか、そんな研究はいくらだってある。
どんなときにどんなタバコを吸うと気持ちいいのか?――タバコを吸う人には誰にでもそんな主張があるはずだ。
「主張」なんて肩をいからせなくたって、そんな気分があるはずだ。
吸うなら吸うべき場所で堂々とカッコよく吸ってくれ。
たとえば吸う格好、火のつけ方、料理やお酒との合わせ方、朝のタバコの楽しみ方、寝る前のタバコの種類、そんな「文化」を教えてくれ。
そんな魅力を誰かが伝えないのなら、タバコは本当に禁止されちゃうよ。
自分は吸わないし別にいいんだけどさ、なんかせっかくの文化がもったいないな~って思っちゃうんだよね。
でさ、同じように身体に悪いからって酒が禁止され、スポーツが禁止され、屋外での活動が禁止されってさ、ただただ長生きするためにいろんなことが禁止されてすべてを管理するような社会になったら恐ろしくつまんねーなって思うわけよ。
なんでもね、長生きしたいんならタバコも酒もやらず、刺激物は摂らず、食事量も限界まで減らし、運動もせず、日にも当たらず、涼しいくらいの場所でほとんど動かずに生活することだって。
そうやって代謝をおさえて生きるとさ、病気にでもかからない限り、とても長生きができるらしいよ。
って、クソくらえだ。
てな主張をね、タバコを吸う人がもっとしたらおもろいのになー。