音楽&ダンス3:Happy Xmas (War Is Over)
“The only thing that stops a bad guy with a gun is a good guy with a gun.”
「銃を持った悪人を止められるのは銃を持った善人のみ」
NRA(全米ライフル協会)副会長の言葉だ。
「あらゆる聖墓を破壊する」
マリ北部を支配下に収めたイスラム過激派組織アンサル・ディーンはこう宣言した。
よくわからない価値観だ。
野蛮だと言うのは簡単だけど、でもNRAやアンサル・ディーンの人たちだって思っているかもしれない。
「クジラを食べるなんて、ブタを食べるなんて、なんて野蛮な民族なんだ」と。
おそらく多くの西欧人は日本の死刑制度や捕鯨活動を理解していないし、理解しようとしていない。
では我々は彼らを理解しているだろうか?
理解しようとしているだろうか?
* * *
悪を減らし、正義を増やす――
人類はずっとこうやって生きてきた。
そうすれば幸福な世界が実現できると信じてきた。
でも。
少しくらい悪は減ったのか?
戦争でもっとも多くの人が死んだのは20世紀だ。
これをどう考えればいいのだろう?
人種、民族、宗教、思想、国家……
理由は数あれど、結局人は自分の「正義」のために人を殺す。
虐殺なんていう誰もが悪だと思うようなことでさえ、正義さえ強く持っていれば、ぼくらにはできてしまうのだ。
そうやって一般人が一般人を殺してきた。
ぼくにも、あなたにも、人が殺せるのだ。
* * *
「どっちも、自分が正しいと思ってるよ。戦争なんてそんなもんだよ」(ドラえもん)
そう言う人もいる。
そろそろ「正義」なんてものから独立してもいいんじゃないか。
人種、民族、宗教、思想、国家とか、そういう大きな正義はもういらないんじゃないか。
こう主張する人も少なくない。
"Imagine there's no Heaven, it's easy if you try."
"Imagine there's no countries, it isn't hard to do."
"Imagine all the people, living for today."
"I hope someday you'll join us, and the world will be as one."
「天国なんてないんだった想像してごらん、やってみれば簡単なことさ」
「国なんてないんだって想像してごらん、そんなに難しいことじゃないはずさ」
「想像してごらん、皆が今日のために生きてるんだって」
「いつかあなたも仲間になって、世界はきっとひとつになるんだ」
(ジョン・レノン「イマジン」より)
善悪の基準は人種、民族、宗教、思想、国家によってまったく異なる。
でも、全人類が善悪という観念を持つ。
これには例外がない。
すべての個人に共通するものだってある。
ならば人種、民族、宗教、思想、国家なんて捨てて、共通のものを大切にすればいいんじゃないか?
人類共通の普遍な存在。
それを愛すればいいんじゃないか?
たとえば今日を生きているんだってことを。
たとえば歌うと楽しいってことを。
たとえばこの人と一緒にいたいんだっていうことを。
ジョン・レノンはそう歌う。
でもね。
それを「主張」してしまうと、必ず一つの「価値」を生み出してしまう。
その価値観が善と悪を生み、また争いを生産する。
「そうじゃなきゃダメなんだ」と、他の主張、他の思想、他の心を虐げる。
それならはじめから大きな正義を歌った方がいいのではないか?
やっぱりひとつの正義を主張して、その正義を育て、悪を減らすように努力した方が、幸福な世界が実現できるのではないか?
* * *
旅してる間にクリスマスを迎えるとね、現地の人とよく"Happy Xmas (War Is Over)"を歌ったし"Do They Know Its Christmas"を聞いたものだ。
いろんな戦場や虐殺場を見たこともあって、歌いながらそんなことを考えていた。
いま、ぼくはぼくに対してひとつの明確な答えを持つ。
でもみんなはこういう曲を聞いていったいどんなことを考えているんだろう?
とにもかくにもHappy Xmas!
そしてHappy new year!
人類なんてどうだっていい。
でも。
すべての個人が幸せでありますように。