グルメ16:マリアージュ・アルパージュ
ワインとチーズ。
お酒と肴の取り合わせで、これほど相性のいいカップルはなかなか思いつかない。
1の食べ物と1の食べ物が出会う。
1+1。
ところがその味は4にも5にもなってしまう。
1+1=5
これをフランス語で結婚=マリアージュという。
なるほど。
結婚というのはただふたりの人間が一緒に暮らすことではなくて、一緒にいることでお互いひとりでいるときよりもはるかに幸せにならなくてはいけない。
だから、単にお互いの味を邪魔しないというのではまったく足りない。
お互いがお互いを引き立てあわないとマリアージュとは言えない。
でも、それほど難しい話ではない。
料理の基本はマリアージュだ。
別々に食べても同じなのだったら別々に食べた方が楽しい。
素材の味、季節の香り、そんなものがソロの方がよくわかるからだ。
それをわざわざオーケストラにするのは、合わせた方がおいしくなるという必然性があるからだ。
組み合わせるのならマリアージュさせなければ意味がない。
だから料理の基本はマリアージュだ。
この辺りをとことん楽しませてくれるのがアルパージュだ。
たとえば。
店頭にたくさんのチーズが並んでいるので本当に迷う。
問いたげにしているとアルパージュの店員さんが「どんなものと合わせますか?」。
お酒と合わせるって顔に出ていたのかな?
そのときは夜、シングル・モルトを舐めながらと思っていて、まさか「シングル・モルトと」なんて言ってもわからないだろうなーなんて思ったのだけれど、機転も利かずにそのまま答えてしまった。
「シングル・モルトで」
「どんなシングル・モルトですか?」
「アイラの強いヤツ」
「それでしたら……」
オイオイ、マジかよ。
実際アイラ・モルトとたとえばブルー・チーズはとてもよくあったりする。
蒸留酒というのは糖分やらアミノ酸やらそういった有機物をいっさい含んでいないため、マリアージュというのはとても起こしにくいと思っていた。
まぁ実際ワインや日本酒なんかの醸造酒に比べれば起こしにくくはあるのだけれど、マリアージュしないなんてことはないんだね。
こうしてアルパージュはいつも世界を広げてくれる。
下記の公式サイトを見てほしい。
季節ごとにいつも旬のチーズをそろえてある。
しかも、チーズは1秒1秒熟成が進んでいるから、いまがベストという時がある。
店員さんはこれをよく知っているから、最近は「すぐに食べたいのですが、いちばん食べ頃の○○チーズを」と言うことにしている。
■チーズ専門店アルパージュ(「お知らせ」のページ)
そうすると、たとえばブロッチュなんかは毎年買っているのだけれど、「また今年も出会ったね」なんていう楽しい会話がはじまることになる。
こうして人と時がマリアージュを起こし、普通の時間がかけがえのない時間へと昇華する。
こうして人と人がマリアージュを起こし、ひとりきりでいるときよりもはるかに幸せな時間がすごせることになる。
料理の基本はマリアージュだ。
人生の基本もまたマリアージュなのだ。