1999年6月、ぼくは中国にいました。
現地の新聞が日本のノストラダムス騒動をおもしろおかしく報道していたのを思い出します。
「人類が滅亡する前に会社を辞めて世界を見にきました」なんていうバックパッカーにも会いました。
明日2012年12月21日、あるいは23日。
マヤ暦が終わり人類が滅亡する……
そんな話が出回っています。
そういえば数年前から『2012』なんていう映画や小説が公開されたりもしていました。
マヤ長期暦。
20進法で作られており、キン=1日、ウイナル=20キン、トゥン=18ウイナル、カトゥン=20トゥン、バクトゥン=20トゥン、そして13バクトゥンを1単位として大周期としているようです。
現在は5回目の大周期にあたり、紀元前3114年8月11日(推定)からスタートして2012年12月21日、あるいは23日に終わるということらしいのです。
でも。
どうやらこれって第5周期が終わり第6周期がはじまるというだけのようですね。
マヤ文明は大周期の終わりに何が起こるかなんてまったく予言していませんし、紀元前3114年に大事件が起こったなんていう事実も伝えられていません。
ぼくの持っているカレンダーは2012年12月31日で終わっています。
でも12月31日に何か起こるなんて思っていません。
たとえ世界中のカレンダーが同じ日に終わっていたとしても、です。
(ま、まさか、あなたのカレンダーも12/31に終わってるなんてことはないですよね……)
超常現象を特に否定したいとは思いませんが、肯定する気もまったくありません。
人間がものを考える限り、物事は科学的に見えるはずだからです。
考えた成果を集めたのが科学なのですから。
だから、科学はつねに正しい、と言えます。
ただし、時代時代で正しい科学は変わります。
仮に。
お化け病院で本当に「霊」が観察できたとしましょう。
科学は観察結果から霊の行動パターンを見出し、あらゆる分析を加え、科学の領域に取り込むか、科学の領域を広げて対応するでしょう。
こうして科学はつねに正しくあるのです。
1000年前の人には1000年前の科学が、現代の人には現代科学が、1000年後の人には1000年後の科学が正しく思えるもの。
真実かどうかは関係なく、その根底に「思える」という感情論があるわけです。
物がなぜ落ちるのか?
落ちるという現象に重力という名前をつけただけなのに、人は「重力のせいで落ちるのだ」と簡単に納得します。
天動説を何千年も信じていたのに、現代の人々は地動説を信じ切っています。
惑星の動き、フーコーの振り子、光行差、年周視差……
何を持ってきても完全な証明などできないのに、納得することができるのです。
でも。
それがこの世界の深遠さを示すとてもおもしろく、とてもとても偉大で愛しいところ。
これがなければぼくは生きてなんかいないでしょう。
明日21日、あるいは23日。
マヤ長期暦第5周期が終了します。
何はともあれ、年末に乾杯。
そして翌日、年始に乾杯。
そういうことなのではないでしょうか?